イエダニ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/09 05:53 UTC 版)
イエダニという語
上記のようにイエダニは従来はごく普通に見られ、『家の中で人に害をなすダニ』として真っ先に挙げられるものであった。例えば青木(1968)では本種に関する記事の冒頭が『あらゆるダニの中で一番なじみの深い』『だれもがよく知っている』と始めているほどである[17]。しかし現在ではそれほど身近なものとはなっていない。他方で家の中のダニといえばむしろ埃や畳、絨毯、布団などの中に棲んでいるものが重視されるようになっている。それらはホコリダニやヒョウヒダニといったものが中心で、ヒトへの直接の害は与えないものの、アレルギーの原因としては重要なものである。またそれらのダニの捕食者であるツメダニ類は、時にヒトを刺すことがある。そのために本種ではなく、これらのダニをさしてイエダニと呼ぶことが多くなっている。島野(1985)にはそのような誤用の例を想定問答の形で示してある[18]。
現実的に本種の害は重視されなくなっており、例えば嘉納、篠永(1997)には前半の図鑑部分に本種に関する記述は当然存在するのであるが、後半の解説部分のダニに関する事項は『室内埃のダニ』と『ツツガムシ』のみとなっており、前者で本種への言及はあるものの、ほんの一言だけとなっている。
参考文献
- 岡田要他、『新日本動物圖鑑 〔中〕』9刷、(1988)、北隆館
- 佐藤仁彦編、『生活害虫の事典』、(2003)、朝倉書店
- 加納六郎、篠永哲、『日本の有害節足動物 生態と環境変化に伴う変遷』、(1997)、東海大学出版会
- 江原昭三、『ダニのはなし I』、(1990)、技報堂出版
- 島野智之、高久元編、『ダニのはなし ―人間との関わり―』、(2016)、朝倉書店
- 島野智之、『ダニ・マニア』増補改訂版、(2015)、八坂書房
- 青木淳一、『ダニの話』、(1963)、北隆館
- ^ 江原(1990)p.198
- ^ 以下、佐藤編(2003),p.191
- ^ a b 佐藤編(2003),p.191
- ^ 江原(1990),p.198
- ^ 江原(1990),p.199
- ^ 嘉納、篠永(1997)p.185
- ^ 以下、主として佐藤編(2003),p.192
- ^ 岡田他(1988),p.397
- ^ 佐々学、私共のダニ類研究の回顧 日本ダニ学会誌 第1回日本ダニ学会大会講演要旨(補足) 1993年 2巻 2号 p.99-109, doi:10.2300/acari.2.99
- ^ a b 青木(1963),p.47
- ^ 以下、佐藤編(2003),p.194-197
- ^ 以下、主として佐藤編(2003),p.192-123
- ^ a b 島野、高久編(2016),p.5
- ^ a b 島野、高久編(2016),p.105
- ^ a b 江原(1990),p.200
- ^ これに関わって青木(1963),p.49-59ではこれら3種の見分け方が指南されているが、これがまた採集してプレパラートを作成し、顕微鏡観察で胸板と鋏角を見ろ、というもので、これを覚えておけば『専門家に尋ねなくったって』識別可能であり、『物知り顔をして』みんなに威張ることも出来るとのこと。しかしそれが出来るならもはや素人とは言えないのではないかという気もする。
- ^ 青木(1968),p.46
- ^ 島野(2015),p.198
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