l点とは? わかりやすく解説

エル‐てん【L点】

読み方:えるてん

ランディングエリア限界点スキージャンプ競技で、安全に着地できる目安となる地点。これを越えて飛ぶのは危険とされる従来K点よばれていたもの。→K点P点

ラグランジュポイント

[補説] 1で、踏み切り台の先端からL点までの距離を「ヒルサイズ」という。


ラグランジュ点

(l点 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/04 07:54 UTC 版)

本図は、大きな質量をもつ天体(黄色)と小さな質量をもつ天体(青色)の系について、その公転周期と同じ速度で回転する座標系を取っている。この回転座標系では、2つの天体は静止している。これら2つの天体よりずっと小さな質量をもつ第三の天体にとって、図中のL1からL5の5点がラグランジュ点である(このうちL1, L2, L3は直線解、L4とL5トロヤ点とそれぞれ呼ばれる)。

ラグランジュ点(ラグランジてん、英語: Lagrange point あるいは Lagrangian point(s)[1][2])は、天体力学における円制限三体問題の5つの平衡であり、二つの天体系から見て第三の天体が安定して滞在し得る位置座標点である。ラグランジュ点において第三の天体は、二つの天体から受ける重力慣性力遠心力)の釣り合いが取れており、外力による加速を受けない[3]。5つすべての平衡解(座標点)を解析的に発見したジョゼフ=ルイ・ラグランジュ[注 1]にちなんで命名されている[3]

ラグランジュ点は、巨大な質量をもつ二つの天体のにおいて、この二つの天体と比べてはるかに小さな質量の第三の天体についてもっぱら議論される。巨大な質量の二天体の例として、恒星-惑星の系(太陽-木星の系 (木星トロヤ群)、太陽-地球の系など)や惑星-衛星の系(土星-土星の衛星の系、地球-の系など)があげられる。

概要

ある天体Eの周りを何らかの天体Mが回り[注 2][注 3]、EとMのほかに天体がない場合、これらの天体の軌道を求めることは、力学における二体問題に相当する。この解は古典力学の最初期にアイザック・ニュートンによって見い出されており、天体Mの一般的な軌道楕円軌道である[注 4]。例えば、Eを地球、Mをとすると、地球と月が互いの引力に束縛された系の比較的簡単な問題として扱うことができる。

しかし、さらにここに第三の天体A[注 2]がある場合には、各天体の軌道を求めることは二体問題に比べて遥かに難しくなる。天体E、天体Mおよび天体Aの3つについて、互いの重力の影響を受ける状況下でのそれぞれの軌道を求めることは、三体問題と呼ばれる問題の特別な場合にあたる。たとえば、前述の地球と月の系に第三の天体を加えた系の軌道の解析も三体問題である。一般の三体問題では解析解を得られないことが知られている。

ラグランジュ点を求める問題は、この三体問題の解のうち、第三の天体Aが他の二つの天体に比べて質量が無視できるほど小さいと仮定したとき、それが恒常的にいかなる力も受けない位置を求めることに相当する。1760年頃に、レオンハルト・オイラーがトロヤ点以外の3つのラグランジュ点を解析的に発見した(オイラーの直線解)。その後の1772年に、ジョゼフ=ルイ・ラグランジュは論文『三体問題に関するエッセイ』[4]において、オイラーの直線解は一般の三体問題の場合にも成り立つことを説明し、加えて、トロヤ点を含む5つすべてのラグランジュ点を求めることに成功した。ラグランジュ点を求めるにあたっては、一般に次の仮定をおく。

  • 2つの天体EとMは、これらの重心を共通の中心とするを軌道として回転運動している。
  • 第三の天体Aの質量は、天体Eと天体Mの各質量に比べて、無視できるほど小さい[3]
  • 天体Aは、天体Eと天体Mの公転軌道を含む平面上でのみ運動する。
  • 天体Aの運動を考えるに際して、天体Eと天体Mが常に静止しているようにみえる回転座標系を採用する。すなわち、「天体Eと天体Mの重心を中心として、これらの公転周期に相当する角速度で回転する座標系」を採用する。
    • ここでもし、天体Eが天体Mより十分に大きな質量を有していれば、冒頭の図のように、回転座標系において天体Eが中心にあり、天体Mは公転軌道を示す円上の一点で静止している、とほぼ見做すことができる。

以上の仮定のもとで求めた、第三の天体Aが力を受けない座標位置がラグランジュ点である。天体Aはこの回転座標上のラグランジュ点において、安定に留まれる(すなわち、天体Eや天体Mに対する静止位置を保てる)可能性がある。天体Aはラグランジュ点において、天体Eによる重力、天体Mによる重力、および、天体Eと天体Mの公転速度で回る回転座標系に生じる遠心力、これらの3つの力が釣り合っている。

ラグランジュ点は全部で5つあることが知られており、上記の仮定の通り、いずれも天体Eと天体Mの軌道を含む平面内にある。それぞれ L1からL5までの番号がふられている。 L1, L2, L3の三点は天体Eと天体Mを結ぶ直線上にある(直線解)。L4とL5は天体Eと天体Mを結ぶ線分を一辺とする二つの正三角形の各頂点である(天体Eから天体Mをみたとき、L4とL5はそれぞれ60左右にある)。L4とL5の2つの点は特にトロヤ点 (trojan points) と呼ばれる[注 5]。トロヤ点に天体群が存在するとき、これをトロヤ群とも呼ぶ。上記の仮定に沿うかぎり、ラグランジュ点はあらゆる二天体系に存在し得る。

以上のオイラーとラグランジュの成果は運動方程式を解くことで理論的に得られたものであり、この業績に対してラグランジュとオイラーは1772年のフランス科学アカデミー賞を共同受賞した。後年の発見においては、実際に各種の天体系のラグランジュ点において、小さな天体(天体群)が留まっている実例が確認されている。

ラグランジュ点はスペースコロニー等を建設する際の候補位置でもある。たとえばジェラルド・オニールは、コロニーを地球と月のラグランジュ点に造ることでコロニーの軌道を安定させるアイデアを述べている。

力学的背景

天体Eと天体Mがそれぞれ大きな質量

2つの天体の重力ポテンシャルに対して、遠心力の寄与をポテンシャルエネルギーに見立てて加え合わせ、公転軌道平面上の位置エネルギーの高低を示した図。ラグランジュ点は、この位置エネルギー曲面が平坦になる場所である。

これまでの方程式では、それぞれの力

太陽-地球系のL2

L2 は天体Eと天体Mの2物体を結ぶ直線上にあり、天体Eと天体Mのうち質量の小さい天体の外側に位置するラグランジュ点である。太陽からみて地球より遠くにある物体は、通常は地球よりも長い公転周期を持つ。しかし、その物体が太陽から見て地球の裏側にある場合には、地球の重力の影響が加わり、これを考慮すると、その物体の公転周期は短くなる。もし太陽-地球系のL2にその物体があれば、この効果によって公転周期が地球と等しくなる。太陽-地球系のL2は地球から約150万km(1/100天文単位)の位置にある[5]

太陽-地球系のL2は、地球によって太陽からの放射物が遮られているために、宇宙空間での観測を行うのに適した場所である。L2付近にある物体には太陽光が遮光されており、得られた観測結果の較正を行いやすい[注 12]。到達は比較的困難であり、例としてジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は発射から到達まで30日を要した。有人探査機ではまだ到達していない。

地球-月系のL2は、月から61,500kmの位置[注 13]にあり、月の裏側をカバーする通信衛星の位置として都合が良いとされる。

天体Mの質量

ラグランジュ三角解点に働く重力のつりあい。bが共通重心。

L4L5 は、正三角形解またはトロヤ点などとも呼ばれるラグランジュ点である。天体Eと天体Mを結ぶ線分を一辺とする正三角形の3番目の各頂点の位置にある。天体Mが天体Eの周りを公転する軌道上で、天体Mに先行あるいは追従する相対位置にある。仮定の通り、公転の中心は天体Eと天体M系の重心にある。回転しない座標系からみると三角解点では、天体Eの重力と天体Mの重力の合力が、ちょうど両者の重心への向心力として働いている。三角解点の軌道長半径は天体Eと天体Mの間の距離よりわずかに短く、天体Mの軌道長半径よりわずかに長い。

仮に天体Eの質量が天体Mより大きいとすると、それらの質量比

ラグランジュ点の安定性。各点から少しずれた位置において物体は、内向きの力()と外向きの力()をそれぞれ受ける。

各ラグランジュ点について、まず狭義の安定性(平衡解の位置に静止した状態を継続し続けるかどうか)について述べる。オイラーの直線解(L1, L2, L3)において天体Aは、天体Eと天体Mを通る直線の垂直方向にはラグランジュ点に引き戻す力を受ける[注 19]。一方、同直線方向にはラグランジュ点から引き離す力を受ける。トロヤ点(L4, L5)では、各ラグランジュ点からどの方向にわずかに動いても、元の位置から遠ざかる方向に力を受ける。このように、静止位置から摂動を受けた際にラグランジュ点から遠ざかる方向へ力を受け得るという意味では、すべてのラグランジュ点(L1からL5)は狭義には安定ではない。

太陽-地球系のL2付近の軌道に人工衛星 WMAPが投入された際の例

以下では、同じく各ラグランジュ点について、より広義の安定性(すなわち、平衡解位置の付近で定常的な往復・振動運動(閉じた軌道運動)をすることで、平衡解の近くに長期間滞在できるかどうか)について述べる。

この意味での安定性について、L1, L2, L3 は少なくとも制限三体問題において、各点の近くに安定な周期軌道が存在することが分かっている。これらは完全な周期軌道であり、ハロー軌道と呼ばれる[9]

同じくこの意味での安定性についてL4とL5は、2天体(EとM)の質量比が

太陽-地球系の公転の回転座標系からみたクルースンの軌道

地球の同期軌道天体である小惑星クルースンは、見方によって異なる捉え方のできる小惑星である。太陽-地球系の回転座標系からクルースンをみると、トロヤ群天体のように、太陽-地球系のラグランジュ点L4の周囲の等ポテンシャル線上[注 20]を周回するインゲン豆型軌道に似た運動をしている。

静止座標系からみたクルースンの軌道

一方で、静止した座標系からクルースンをみると、別の解釈もできる。クルースンは太陽を周回する軌道上を運動しているが、クルースンは地球との相対位置によって地球の重力を受けて速度を変える。この結果として、クルースンは太陽との距離(軌道半径)を連続的に大小させる。このように、静止座標系での地球の影響をうけて軌道半径を変えるサイクルを繰り返している、と理解することも可能である。なお、地球とクルースンの運動エネルギーのやり取りにおいては、地球の公転周期(つまり1年の長さ)はほとんど影響を受けない。これは、クルースンの質量が地球の質量と比べて1/200億と十分に小さいためである。

土星の第10衛星ヤヌスと第11衛星エピメテウスも上記と似た関係にあるが、ヤヌスはエピメテウスよりやや質量が大きいのみ[注 23]なので、ヤヌスの側も無視できないほどの軌道の変化を受ける。ラグランジュ点を考えるに際して、第三の天体Aが天体Eや天体Mと比べて無視できるほど小さな質量をもつことを前提としたが、天体A(ここではエピメテウス)と天体M(ここではヤヌス)とではこの質量比の要請を満たしていないことが理由である。

また、類似の別の現象として軌道共鳴がある。軌道運動をしている天体同士がある共鳴条件(両者の公転周期が単純な整数比となる等)を満たすと、相互作用が強くはたらき、両天体の公転運動が相関性を示す(共鳴現象)。

宇宙地政学的重要性

地球の表面(リソスフェア水圏大気圏)において、地峡海峡などの地理的な特徴を有する重要地点の政治支配・軍事支配が地政学上の検討対象となっているが、これを拡張した同様の検討が地球周辺の宇宙空間の「支配」についてもなされている。エヴェレット・C・ドールマンの『宇宙時代の地政戦略---アストロポリティックスによる分析』では、ラグランジュ点について論及されている[12]。地球や宇宙の特定の場所の「支配」によって、効率性の面からかなり有利な立場を得ることができ、交易面でも軍事面でも重要と指摘されている[13]。2018年5月に中国が世界初のラグランジュ点を周回する通信衛星鵲橋を打ち上げ[14]、さらに、2019年1月3日に同国が嫦娥4号による人類史上初の月の裏への着陸に成功した際には、地政学的・軍事的な狙いを懸念する声もあがる[15]など、ラグランジュ点は宇宙地政学的な重要性が指摘されつつある。

脚注

注釈

  1. ^ ラグランジュは、18世紀後半にレオンハルト・オイラーと共にラグランジュ点の存在を確認した。
  2. ^ a b c 本記事の説明において、天体名やその物理量の添字に「E, M, A」を用いる。この説明は条件を満たすどのような天体系でも成り立ち、これらの記号「E, M, A」は実在の特定の天体(たとえば地球、月、人工衛星など)を指定するものではない。
  3. ^ 一般に、連星系を記述するときは、それぞれを主星伴星と表記することも多い。ただし、連星において主星とは観測された明るさでより明るい方の天体のことであり、伴星は暗い方の天体である。ラグランジュ点の理解においては、明るさではなく質量が主に問題となるので、特に必要のないかぎり「主星・伴星」という表記は本項では用いていない。
  4. ^ ただし、天体Aの速度等によっては天体間の引力を振り切り、周回軌道は描かず無限遠へと過ぎ去る軌道(双曲線放物線)となる。すなわち、一般に解は円錐曲線となる。なお、ここでいう「楕円」には、もちろん「真円」も含まれる。
  5. ^ この名について。太陽木星の系において、そのラグランジュ点L4とL5には数千個(以上)の小惑星群が存在する。この小惑星群を構成する小惑星の一部にトロイア戦争における英雄の名が付けられていることに由来する。⇒木星のトロヤ群
  6. ^ 以下の式では、座標変換後を意味する ' (プライム記号)は除いて、書き改めている。以降の方程式の扱いにおいては、回転座標系のみが問題になるので ' を省いても問題の一般性は失われない。
  7. ^ この
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