2010年代以降の最低賃金の動向 州政府と企業の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 14:20 UTC 版)
「最低賃金 (アメリカ)」の記事における「2010年代以降の最低賃金の動向 州政府と企業の場合」の解説
この運動は全米レベルに拡大し各地域で進んでいる州別最低賃金引き上げの原動力となっている。そのため、州で最低賃金の引上げが特に2013年以降活発に行われており、多くの場合で複数年にわたり段階的な引上げが行われている。 2018年においてはデラウェア州とマサチューセッツ州で最低賃金を段階的に引き上げる法案が成立したほか、アーカンソー州及びミズーリ州では住民投票により最低賃金を段階的に引き上げることが決定された。更には、最低時給15ドルへ引き上げる自治体が出てきており、2020年1月1日時点で、17の市や郡において最低賃金が15ドルを超えている。そして、2021年1月時点で労働者の約4割を占める9州(カリフォルニア州、コネチカット州、フロリダ州、イリノイ州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、バージニア州)及びワシントンD.C.では、最低時給15ドルへの引き上げを目指している(ワシントンD.C.は2020年7月で15ドルへ引き上げ済み)。 カルフォルニア州:カリフォルニア州議会により、低失業率による逼迫した労働市場もあり、2022年までに15ドルへ引き上げる(従業員が25人以下の企業は2023年と1年の猶予)ことが合意された。 また市レベルで、カルフォルニア州内のサンフランシスコ市、エマリービル市は2018年7月1日(エマリービル市の場合は、従業員が56人以上の場合は時給15ドル60セント、55人以下は15ドルに引き上げられる。)に引き上げられ、バークリー市は同年10月1日に引き上げられた。 2019年7月には、パロアルト市やサンノゼ市なども、15ドルへ引き上げた。更に、ロサンゼルス郡とロサンゼルス市では、従業員数26人以上の企業については2020年7月1日までに15ドルへ、25人以下は2021年7月1日までに引き上げる予定である。 コネチカット州:2019年5月に2023年6月までに15ドルへ引き上げることが決まった。 イリノイ州:2019年2月に2025年1月までに時給15ドルへ引き上げることが決まった。対象は、18歳以上または年間労働時間650時間超の17歳未満の労働者。 メリーランド州:従業員数15人以上の企業は2025年1月までに、従業員数15人未満の企業は2026年7月までには、最低時給15.00ドルへ引き上げられる予定である。 州内のモンゴメリー郡は、従業員数50人超の企業は2021年7月までに、従業員数50人以下10人越の企業は2023年7月までに、従業員数10人以下の企業は2024年7月までに、最低時給15.00ドルへ引き上げられる予定である。 マサチューセッツ州:2023年1月には、15ドルへと引き上げる予定である。 ニュージャージー州:2019年2月に最低時給15ドルへ引き上げる方針を発表した。従業員数6人以上の企業は2024年1月まで引き上げる。従業員6人未満の企業及び季節雇用者は2026年1月までであり、農業雇用者は2027年1月までである。 ワシントン州シアトル市:2021年1月より、市内の全ての企業で働く労働者の最低時給は15ドル以上ある。また、15ドル以上になった年は企業規模と医療給付制度拠出有無で分けられており、以下の通りである。 1.従業員500人超の企業 (医療給付制度に拠出が無い):2017年初頭 2.従業員500人超の企業 (医療給付制度に拠出が有る):2018年初頭 3.従業員500人以下の企業 (医療給付制度に拠出が無い):2019年初頭 4.従業員500人以下の企業 (医療給付制度に拠出が有る):2021年初頭 また、2019年7月には、従業員500人超の企業は、医療給付制度に拠出の有無に関係なく最低時給が同じとなり、2021年1月から医療給付制度に拠出が有る従業員500人以下の企業以外、最低時給額が同じとなる(2021年時点で、16.69ドル)。 ニューヨーク市:従業員数11人以上の企業は2018年末に、従業員10人以下の企業は2019年末に、15ドル引き上げられた。 ニューヨーク州も2020年末に12.5ドルへ引き上げていき、それ以降は消費者物価指数を含む経済指標に基づいて、15ドルになるまで引き上げ続けていく予定である。 ワシントンD.C.:2020年7月に15ドルに引き上げた。 ミネソタ州ミネアポリス:従業員100人越えの企業は2022年7月に、15ドルになる予定である。従業員100人以下の企業は2024年7月に15ドルを超えている従業員100人越えの企業と同じ最低時給になる予定である。 フロリダ州:アメリカ大統領選挙(2020年11月3日)と同日に住民投票が行われ、賛成多数により2026年9月30日まで時給15ドルへ引き上げることとなった。 バージニア州:2021年5月1日に成立した最低賃金法により、2026年1月1日に15ドルへ引き上げる予定である 企業の方でも、時給を引き上げる動きがあった。その背景には、低失業率と2017年末に成立した税制改革法によって減税による収益増の背景もある。また小売業界では、新型コロナウイルス感染症の流行による影響による雇用への影響を抑えるため、最低賃金の引き上げを行う企業が出ている。 アマゾン:アマゾンが2018年11月1日より、初任給を11 - 12ドルから15ドルに引き上げた。 ただし、その代わり月次ボーナスと株式報酬を廃止した。また、賃上げの背景にはバーニー・サンダース上院議員を始め政治家などからの圧力と、12月の重要な年末商戦を控えており、低失業率の労働市場の中でも、臨時従業員採用で優位に立ちたいためである。 小売業界: ウォルマート・ストアーズ:2018年1月にアメリカ従業員の初任時給を11ドルに引き上げた。理由は、連邦最低賃金(時給7.25ドル)に対して、同社最高経営責任者(CEO)が「安過ぎる」と感じたことから。その後2020年1月24日、試験的に一部の従業員の最低時給を11ドルから12ドルに引き上げると表明した。また、前述の型コロナウイルス感染症の流行の影響によりオンラインでの買い物が急増したため、2020年3月23日~5月25日の間、ネット通販向け倉庫で働く従業員の最低賃金を時給2ドル引き上げた。また、それとは別に正社員とパートタイムに対して計5億5,000万ドルのボーナスを現金で支給した。しかしながら、時給に関しては、時給11ドルのまま据え置くことにしているが、「ラダー・システム(段階的に上がるシステム)」という昇給システムを導入したことで、2021年3月13日より、時給13~19ドルで働く労働者が現れている。 ターゲット:2018年9月に、初任時給を昨年時の11ドルから12ドルに引き上げ。更に2019年6月には13ドルまで引き上げた。そして2020年には、17ドルに引き上げた。 コストコ:2018年3月に15ドルに引き上げ 金融業界: JPモルガン・チェース:地域の物価水準によって15ドルまたは18ドル ウェルファーゴ:2017年の税制改革を受け、15ドルに引き上げ バンク・オブ・アメリカ:2021年までに20ドル引き上げ 米シティグループ:2019年6月に、政治家の圧力や他の大手銀行の決定を受けて最低賃金を時給15ドル引き上げ。更に、未定だが時給20ドルへ引き上げる予定 フェイスブック:2015年に時給15ドルへ引き上げた。2019年5月13日に、稼働する複数の場所での引き上げた最低時給が生活費に見合わないことがわかったため、食堂スタッフや管理人などアメリカの契約社員の最低賃金の引き上げを2020年の半ばまでに行うことを発表した。 発表は、フェイスブックが一部のコンテンツモデレーターによる精神的苦痛を伴う配信動画によって引き起こされた精神障害の責任についての批判に晒されている状況の中で行われた。 以下が、フェイスブックの最低時給額である。サンフランシスコ・ベイエリア、ニューヨーク、ワシントンDCの契約社員:20ドル(コンテンツをチェックするモデレーターの場合、22ドル) シアトルの契約社員:18ドル(コンテンツをチェックするモデレーターの場合、20ドル) 上記の2つ以外の他の大都市圏の契約社員:18ドル この引き上げに関して、アメリカだけでなく他の国でも同様の基準の策定に取り組むことも述べている。 電気自動車(EV)メーカー・テスラ 2020年7月22日に、テキサス州トラビス郡オースティン市近郊に、工場を建設することを発表した。同時に、この工場で雇用される従業員に対して、最低時給15ドルを保証することも約束した。>
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