2010年代以降の最低賃金の動向 連邦政府の場合
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「最低賃金 (アメリカ)」の記事における「2010年代以降の最低賃金の動向 連邦政府の場合」の解説
一方、連邦政府の方では、2014年のオバマ政権の時、ホワイトハウスが連邦議会に対して最低賃金引上げを促す声明をうけた民主党議員による法案提出、2016年大統領選挙時の民主党予備選挙、バーニー・サンダース候補による15ドル賃金の政策提言があったが、前述したように連邦政府の定める最低賃金が2009年以降引き上げが行われてない。 しかしながら、2014年2月にオバマ前大統領により署名された大統領令13658号に基づき連邦政府契約事業者の制度が開始された。 連邦政府各機関が、2015年1月以降、対象となる契約事業者と新たな契約(更新を含む)を締結する場合、契約金額支払いの条件として、 労働者に対して連邦政府契約事業者に課せられる最低賃金額を支払うこと 契約事業者は下請事業者との契約に同旨を盛り込むこと とした契約条項が盛り込まれることとされた。しかし、デービス・ベーコン法(Davis-Bacon Act)の対象とならない2,000ドル未満の建設に関する契約や、サービス契約法(Service ContractAct)の対象とならない電気・ガス・水道等の供給等は対象外である。 また、2018年5月にトランプ大統領が署名した大統領令13838号により、国有地で提供される季節的娯楽サービス(seasonal recreation service)は対象外とされた。(ただし宿泊・飲食業は国有地で提供される季節的娯楽サービスであっても引き続き対象とされている。)なお、デービス・ベーコン法やサービス契約法など、一定の連邦政府契約事業者について、職種ごとに、労働長官が地域の相場賃金として定める額以上の賃金を支払うことを求める法律が存在する。また、毎年物価スライドにより最低賃金額の改定が行われている。 そして2019年1月19日、バージニア州選出下院議員であり、連邦下院議会、教育・賃金委員会委員長のボビー・スコットが賃金引上げ法案「the Raise Wage Act(H.R.582, S.150)」 を190人の民主党議員の署名をもって下院議会に提出した。法案は2024年までに段階的に最低賃金を現行の7.25ドルから15ドルに引き上げるとともに、7.25ドルよりも低く抑えられているチップを受け取るレストラン等の労働者の最低賃金を標準的な労働者の最低賃金とそろえることを提案している。2019年7月18日、下院で保守派民主党議員に配慮して、連邦の最低賃金を1年遅らせて2025年まで段階的に時給15ドル(約1600円)に倍増させる法案を民主党などの賛成多数で可決した。しかしながら、上院は、共和党が多数派であり、共和党は最低賃金引き上げに対して反対しているため、法案通過は困難となる。 また、全米レストラン協会は、家族経営のビジネスを損ない、チップを受けとっている従業員の賃金を実質的に下げることになると反対した。 そして、議会予算局(CBO)が2019年7月に公表した引き上げの影響に関するレポートでは、1,700万人の労働者の賃金が上昇する一方、130万人が失業する可能性があると試算している。 なお、マクドナルドは2019年3月、全米レストラン協会に対し、最低賃金引き上げに反対するロビー活動に協力しないことを告げ、全産業の賃金引き上げを支持する姿勢を示した。 その後、2021年1月20日に大統領になったジョー・バイデン大統領が新型コロナウイルスの流行に対処する為、就任直前に提案した「米国救済計画」に連邦最低賃金を15ドル引き上げることを含めた。しかしながら、法案成立反対の立場である共和党の阻止を防ぐために共和党の賛成ない状態でも可決できる「財政調整措置」の制度を利用した際、法案に最低賃金に関する条項を含むことに対して、上院の議事運営専門家が規則違反と判断したため、時給15ドル引き上げを削除した上で同年3月11日に成立することとなった。 また、この法案とは別に、2021年3月2日にホイヤー下院院内総務は近い将来、5年かけて時給15ドルに引き上げる法案の審議をする認識を示した。 2021年4月27日にバイデン大統領の大統領令により、2022年1月30日以降に募集する連邦政府と新規契約する事業者の労働者を対象に3月30日までに時給15ドル引き上げを必ず実施することとなり、身体障害労働者も対象となった。更に、2023年1月1日以降は労働統計局の都市部賃金労働者用の消費者物価指数の上昇率を基に毎年改定されることとなった。それだけでなく、トランプ政権時に対象外であった連邦政府所有地で一般人向けに狩猟、釣り、スキー、サマーキャンプなどのサービスを提供する季節労働者も対象となっている。そして2024年までにチップ労働者に別途設けている最低賃金も廃止することも目指している。
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