2000年代~2010年代:LGBT政策の具体化とHIV感染拡大
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「日本における同性愛」の記事における「2000年代~2010年代:LGBT政策の具体化とHIV感染拡大」の解説
日本での男性同性間の性的接触を原因とするHIV感染によるエイズ発症者の増加が顕著で、異性間感染による発症者数が2001年以降は横ばいであるのに対し、男性同性間感染による発症者数は2004年に異性間感染の発症者数を超え、その後も増加が続いている。HIV感染の予防啓発の取り組み強化がNPOなどの協力を得て検討されると同時に、各自治体などではHIV陽性者の就業支援などのサポートも行われている。 人権擁護法案とゲイ襲撃事件 2000年には同性愛者を狙った「新木場殺人事件」が起き、一人が殺害され、被害届が出されたものだけでも数十件に及んだことからゲイ社会を震撼させた。そうした情勢の中で人権擁護法案が準備され、人権擁護推進審議会が2001年に出した答申において同性愛を含めた性的マイノリティについて言及。これを受けて提出された同法案は、日本で初めて性的マイノリティの人権救済が明記された。 同性愛者人権擁護条例とカミングアウト議員誕生 2003年には、宮崎県都城市が全国で初めて同性愛者の人権を明記した条例を施行する。同年、大阪府議会において日本で初めて同性愛者であることを公表した地方議会議員尾辻かな子が当選する。彼女はその後、性同一性障害である上川あやらとともに、「セクシャルマイノリティ議員連盟」を発足させる。連盟には、カミングアウトしていない議員も含めて複数の議員が参加している。同じく2003年のレインボーマーチ札幌では、札幌市長の上田文雄が参加したが、日本において地方自治体の首長がLGBTのイベントに参加したのは、これが初めてだった。2011年の地方統一選挙では、東京都豊島区議会で石川大我が、同中野区議会では石坂わたるが当選し、日本で最初のゲイを公表している議員の誕生となった。 政党が同性愛者対策の実施を公約化 政治面では、複数の政党も同性愛者政策に取り組みつつある。2000年には社会民主党、2007年には日本共産党、2009年には公明党、2012年にはみんなの党が国政選挙で性的少数者に関する公約を掲げた。また日本維新の会は公約では言及していないが、「レインボープライド愛媛」が2012年に行ったアンケートで、人権問題として性的少数者の問題に取り組んで行くことや同性結婚の制度導入に賛成した。 同性愛肯定論が50歳未満で8割近くへ 国民の同性愛に対する見方も年々肯定的になりつつあり、例えば電通総研の調査によれば同性愛を認める人は2005年で40%おり、十年ごとに10%ずつ上昇してきている。2013年6月4日に発表されたピュー・リサーチ・センターの調査では、日本で同性愛を認めるとの回答は全体で54%だった。但し世代別の差が大きく、18歳以上30歳未満では83%、30歳以上50歳未満では71%、50歳以上では39%となっており、50歳未満の世代では同性愛を肯定する意見が8割近くを占めた。 同性愛者の多様性への理解 2000年代は以前にもまして、女装・オネエのゲイであることをカミングアウトしたタレントが多くなり、地上波の娯楽番組にも多くの同性愛者が出演していた。著名人になるゲイもいた。2013年3月には、フジテレビ系バラエティ番組『笑っていいとも!』で「オネメン・コンテスト」が開催され、非女装・非オネエのゲイも次第に出演するようになっている。それによりこれまでは一面的だったが、多様なゲイの存在が徐々に認識されて支持されるようになりつつある。 LGBTコミュニティの変化 情報化社会を迎え、インターネットが普及したことで、新宿二丁目などのオフラインのLGBTコミュニティは衰退の危機に瀕している。顧客減少の煽りを受けたゲイ/レズビアンバーやゲイクラブ・イベントは異性にも門戸を開き生き残りを図ろうとする。また昨今の「オネエブーム」で新宿二丁目が観光地として取り上げられる機会が増えたことも、異性愛者の訪問者を激増させる要因になっている。しかしその結果同性愛者が新宿二丁目に足を踏み込みづらくなってしまい、彼らの居場所が奪われるという深刻な事態を招いている。また、2010年代後半には「G-men」と「Badi」が休刊し、紙媒体の月刊誌は「薔薇族」と「SAMSON」の二誌を残すのみになるなど、脱紙媒体の傾向が顕著となった。その一方で、インターネットとスマートフォンの普及によって、新しい出会いの場とメディアが登場した。2009年、アメリカ合衆国で、ゲイ・男性間性交渉者向けとしては初の位置情報を使った出会い系アプリGrindr(英語版)がサービスを開始する。2011年、日本で開発されたナインモンスターズがリリースされ、2019年には日本国内のアクティブユーザーが45万人を突破するなど、ゲイコミュニティの一角を成すようになった。また、2012年にはゲイ向けウェブマガジンのGENXYがスタート、2018年にはTwitter上でLGBTQやフェミニズムについて情報発信を行うパレットークがサービスを開始した。
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