韓国の対馬領有権主張
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李承晩時代 1949年1月17日、大韓民国(韓国)初代大統領の李承晩は「対馬は韓国領」として日本に「返還」を要求した。また、第二次世界大戦後に日本を占領した連合国軍総司令部 (GHQ) に対し、韓国の李承晩政権は竹島だけでなく対馬についても「歴史的にこの島は韓国の領土であり、日本によって強制的、不法に占領された」と述べ、日本からの割譲を要求したが、GHQからは「根拠がない」として拒否された。 「対馬島の日」 2005年3月18日、韓国慶尚南道馬山市議会は、島根県議会の「竹島の日」に対抗すると称して、「対馬島の日(대마도의 날)」条例を可決した。条例は「対馬島が韓国領土であることを内外に知らしめ、領有権確立を目的とする」と規定している。これに対して韓国政府は馬山市に条例の撤回を要請した。また、対馬市議会の波田政和議長は2006年10月6日、馬山市議会に「対馬島の日」条例の廃止措置を要請したが、馬山市議会は「対応する価値がない」として条例を廃止しないことを明らかにした。2012年に馬山市が合併により昌原市となった後も、同市により同様の条例が再制定されている。 「対馬の領土を要求する韓国議員連盟」 現在の韓国政府は李承晩時代のように、公式に対馬の領有主張を行ってはいないが、2008年7月21日、韓国のハンナラ党のホ・テヨル、チョン・カビュン議員ら50人余の国会議員が「対馬は韓国の領土であり、日本は対馬を韓国政府に即時返還すること」を求める『対馬の大韓民国領土確認および返還要求決議案』を提出し、韓国国会の外交通商統一委員会に付託された。 同案に対して世論調査機関リアルミーターが2008年7月に実施した19歳以上の男女700人を対象にした世論調査によると「日本に対馬返還要求すべき」との主張に賛成する人は50.6%、反対意見は33.5%である。2010年9月、「対馬は歴史的、文化的、人種的に私たちの領土であることが明らかであるにも関わらず、対馬に対する私たちの関心は初代制憲国会での領有権主張とサンフランシスコ講和会議での返還要求以後、事実上一度もない状態で現在に至った」と主張する韓国議員37名が、日本が不法に強制占領している対馬を早く返還させるための議員連盟を結成した。 領有権主張の歴史的根拠 李氏朝鮮が応永の外寇の最中、朝鮮国王世宗が宗貞盛に宛てた書簡に「対馬の島たる、慶尚道の鶏林に隷す。本是れ我が国の地なり。載せて文籍に在り。昭然考うべし」と記し、2年後、対馬から朝鮮に派遣された使者は「本島(対馬)は本大国の牧馬の地なり」との返事を送った記録がある(『朝鮮世宗実録』元年7月庚申条及び3年4月己亥条)。この返答は偽使によるものと考えられ、15世紀の対馬の人びとに朝鮮への帰属意識があった証拠とはならないが、朝鮮側のこうした対馬観を当時の倭寇鎮圧にみられる強硬策の背景として考えることはできる。 その後、朝鮮の領議政(宰相)であった申叔舟が1471年に編纂した『海東諸国紀』は日本国対馬島の図を掲載し、本文では対馬島を「日本国西海道に属す」として島内の事情を詳述している。16世紀に刊行された朝鮮の地理書『新増東国輿地勝覧』の「八道総図」には対馬が明確に朝鮮領として記述はしていないものの、地図には朝鮮に隣接する領土外地域もともに描かれており、北方国境である鴨緑江・豆満江北側の明の領土が地図内に描かれているとともに対馬も描かれている。この「領土外地域」を、現代の韓国では「八道総図」で対馬が朝鮮領として描かれていると解釈して、これを根拠に対馬は韓国領だとする主張がある。 対馬市長の声明 2008年7月、これらの韓国側の主張に財部能成対馬市長は「主張は自由だが、対馬は先史時代以降ずっと日本。『魏志倭人伝』にも倭国の中に入っている。対馬が韓国領土というのはあり得ない」との声明を発表した。 2008年7月23日、韓国の退役軍人らで構成する抗議団21人が対馬市役所前で「独島は韓国領土、対馬も韓国領土」と主張する横断幕を掲げ抗議活動を展開、一部の市民と道路を挟んで対峙し、怒号が飛び交うなど騒然とした雰囲気に包まれた。2009年3月26日には、ソウルにある日本文化センターに火炎瓶のようなものをもった3人組の男が侵入し、「対馬は韓国領土」などと書いたビラを持って立てこもった。同年11月4日には、「対馬は韓国領」と記載された文書や刃物などを持ちこんで、在大韓民国日本国大使館に放火し、大使館員を人質にしようとした男が逮捕された。このほか市民団体の活貧団(ファルビンダン)なども「対馬は韓国領土」と継続して主張し、活動している。 歴史教科書への領有権記載運動 2010年4月1日、韓国の政府与党であるハンナラ党は韓国の歴史教科書(国定国史教科書)に、対馬の領有権についての記述を推進することを決定した。
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