隼次郎の魔球
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魔球はその誕生の経緯から、概ね、特訓によって培った魔球と、偶発的に完成された魔球とに分けられる。初期の主要な魔球であるパイルボール、Wハリケーン、オズマについてはそれぞれ投げた時の手の形がジャンケンと同じチョキ、パー、グーになっていることが、当時の掲載紙の1983年4月号読者コーナーで指摘されている。なお、本作では次郎以外に魔球投手はあまり登場しなかった。 パイルボール ボクシング部時代の得意技、「パイルアッパー」を元に開発した魔球。特訓によって培ったものである。アンダースローから繰り出される球は時速160km以上の球速を出し、防球ネットを突き破り木をなぎ倒すほどのパワーを誇る。そのため一文字竜以外の捕手はキャッチ出来てもそのままボールと一緒に弾き飛ばされてしまう。投球時にマウンドの土をえぐってしまうので柳生にイリーガルピッチとみなされ「試合では使えない」と指摘されたことからフォームを改良し、試合で使えるものにした。しかし後にプッシュバントに弱い・腕関節や太ももを痛めやすいという弱点が発覚する。当初は「ハヤブサパイルボール」と表記された。後述のようにWハリケーンもパイルボールからの発展技であり、Wハリケーン開発の過程で立った状態でも投げられる様になり、前述の、投球位置が低いため土を一緒に投げてしまうという欠点は解消されている。大仏高戦終了後に、柳生が指摘した二つの欠点について月下は、当初推測していた「凄まじい威力のため取れる捕手がいない(竜の加入で解決)」、前述の「一緒に土くれを投げてしまう(投球の際に足で飛んだ土をガードする事で解決)」ではなく、本当は、「体を痛めてしまう危険なボール」や、「ボール周辺に発生している空気の渦を上回るスピードやパワーを持ったスイングには効果がない」の二つだったと推測している。 クリスタルレインボー パイルボールが雨とナイター照明の効果で七色に光るもの。次郎が投げているのは本来のパイルボールなので、偶発的な要素もある。具体的には雨粒がボールに反射して光るものであり、雨の日しか投げられない。ただし、雨で土が飛ばないため、投球方法は以前のフォームが使え、足への負担が減るという利点がある。 Wハリケーン ボールが環状に回転し、分身しながら飛んでいく魔球。グローブを上空に放り投げ、両手で投げる。ボクシングのダブルフックを元に特訓によって開発された。雑誌掲載時(1982年10月号)の特集によれば、パイルボールの要領からさらに左手を擦り付けて横回転を与えることでWハリケーンになるという投球プロセスが説明されており(この特集の前に劇中で柳生が気付いて解説している)、実際に劇中ではWハリケーンの投球フォームからパイルボールを投げたこともある。一旦グローブを空中に放り投げて投球し、投げ終わった時にグローブをキャッチしなければならないため、ピッチャー返しに弱く、連投すると指に血豆ができてしまう欠点がある。投球の際、「バチィッ」という特有の音を生ずる。回転していたボールはミット直前では一つになるため、「青山アメリカンスクール」の主砲、ブラックサイクロンはそこを狙って打ち返す戦法を使ったが、それは柳生が既に「あの位置では当てることが出来ても絶対に飛ばせない」ことに気付いていたもので、金属バットさえ折ってしまう程重くなる。当初は「ハヤブサ・ダブルハリケーン」と表記された。次郎が投げている場面が描かれたのはプラモ学院との練習試合までである。 なお、次郎が投げても申丹が投げても球速は160kmジャストで、時計の様に正確で、常に一定、「バチィッ」という音を発するところまで同じであり、そこから対Wハリケーンの「V打法」が生まれた。 Wハリケーン・オズマ Wハリケーンが次郎の成長と共に進化し、試合中に編み出された魔球。次郎がダブルハリケーンを投げようとしたのが、筋肉が生まれ変わったことによって誕生した偶発的な魔球。ボールが渦状に回転しながら飛んでいく。実は最後まで渦状に見えるのは残像によるもので、実際のボールは途中から直球に変化して進んでいる。編み出した試合の終盤には早くも柳生に打たれてしまったが、その後もWハリケーンと共に主力魔球として活躍した。申丹も一回だけ投げることができた。次郎が投げている場面が描かれたのは春の選抜までである。 ミラクルZ 竜がイチョウの木を回し蹴りしたとき、イチョウの葉が落ちる速度が変わったことをヒントに、回し蹴りの特訓を基礎にして編み出された。時速60kmの超スローボールが、打者の手元で急激に変化し、時速160kmの剛速球としてミットに吸い込まれる。空手の後ろ回し蹴りを行なったあと空中に舞い、ほとんど逆立ちに近いアクロバティックな投球フォームから放たれる。この回し蹴りが変化の元となる真空空間を打者の手前に作る。しかし投球時の回し蹴りは脚に激しい痛みを伴う血行障害を生み出し、次第に次郎を苦しめることとなる。当初はパイルボールをベースに開発を試みたがうまく行かなかったため、結果的にパイルボールを応用せずに完成した初の魔球となった。投球の際の手の形はパー。次郎が投げている場面が描かれたのは、月下の中学時代の同級生・巌流蒼太に打たれた時までである。 ミラクルZ II 春の選抜で、右手人差し指を負傷した次郎が、柳生に投げたミラクルZから偶発的に誕生した。後に単に「Z II(ゼットツー)」と呼ばれるようになった。ボールが縦に2つに分裂して飛んでいく。分裂はボールが高速で上下に移動するため起こる。実際はストライクゾーンを通っているが、審判の肉眼ではそこまで見えないため、身長の低い打者だと「上下のボールともストライクゾーンを外れていた」と見なされてボールを宣告されることがあった。利き腕である右手の人差し指の突き指をかばうため、人差し指と親指のみを伸ばした状態でミラクルZを投げたことがきっかけで生まれた。偶然の産物だったため突き指が治ってからは上手く投げられなくなったが、投球前に体を激しく回転させて強くはじくことがコツと分かってからは常に投げられるようになった。手の形も小指を含めた3本の指を立てて投げるようになり、後にその力の加減で分裂の幅が変化することも判明した。二年夏の神奈川大会初戦で古瀬高の信長にミット手前で一つになったところを狙い撃たれ(この描写からその時にWハリケーンのような金属バットさえ折る威力はない事が分かる)、試合中に流星ボールを完成させた事、その後、医者から魔球禁止のドクターストップがかかったため、結局正式に完成してからは柳生には投げていない。 流星ボール ボールが星に包まれ、ハレー彗星のような輝きを放ちながら飛ぶ。打者の手元で星が消え、ボールも消える。ボールを包む輝く星は次郎の汗から生み出される。両手を広げ胡座を掻いたようなフォームから投げる。2年生時の神奈川県予選初戦の古瀬高校戦の最中に誕生したが、誕生のプロセスは不明である。その後の甲子園大会1回戦でも多投されたが、その後に上記のドクターストップがかかった。そのため、誰にも打ち崩されることがなかった。 最後の魔球(名称なし) ドクターストップで直球以外の投球を禁じられた次郎が、柳生との対決で投げた最後の渾身の直球が偶然魔球となったもの。打者柳生の手元でボールが見えなくなるほどの強烈な光を放ちながらミットに吸い込まれた。見送った柳生は「あいつ、最後の最後でまた新魔球を...」と呆然としていた。そしてこれが次郎の投手生命最後の1球となった。
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