開発計画の経緯
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JLTV計画は2005年にスタートし、2006年1月に概略要求仕様と共にその存在が公になった。2006年11月にJLTV計画は正式に承認された。 2008年2月5日にTDフェイズ(Technology Development phase, 基礎技術開発フェイズ)が開始された。提案の提示要求が国防総省より公開され、メーカーからの提案が募集された。この時点でのJLTV計画への参入表明は、 ボーイングとテキストロン(共同提案) ジェネラル・ダイナミクスとAMゼネラル("ジェネラル・タクティカル・ヴィークルズ"(General Tactical Vehicles)としての共同提案) フォース・プロテクション(英語版)とDRSテクノロジーズ(共同提案、2008年8月にJLTV計画から脱退) BAEシステムズとナビスター・インターナショナル(共同提案) ノースロップ・グラマン、オシュコシュ、プラサン(共同提案) ロッキード・マーティンとBAE システムズ・ランド・アンド・アーマメンツ(共同提案) ブラックウォーターとレイセオン(共同提案) といった、いずれも複数企業による共同提案であった。 2008年10月、国防総省はロッキード・マーティンとBAE システムズ・ランド・アンド・アーマメンツ、ジェネラル・ダイナミクスとAMゼネラル、BAEシステムズとナビスター・インターナショナルの3提案を承認し、選定の次ステップに進ませた。ノースロップ・グラマンとオシュコシュはこの決定に異議を申し立てたが、2009年2月に却下された。 2010年6月、提案の通った3社(3グループ)は7両のJLTV試作車を評価試験の為納品した。同じ月、アメリカ陸軍は軍用車両調達戦略の変更により、JLTV計画への協力の比重を減らす事にした。とはいえ、この時点でも陸軍は、JLTVをハンヴィーの後継および補完機種にする方針は変えていなかった。 3社の試作車両による評価試験、TDフェイズは2011年3月に終了した。しかし前月の時点で、次の評価ステップであるEMDフェイズ(Engineering and Manufacturing Development phase, 生産技術開発フェイズ)の開始は予定より遅れ、2012年の1月か2月になるだろうと発表されていた。理由は、アメリカ陸軍のJLTVに対する要求仕様が変更され、"M-ATVと同等レベルの車体底部の防御力"の要求が加わったためであった。 選定がEMDフェイズに移る前に、他の要求仕様の更新も行われた。これまでのJLTVの要求仕様書では、積載重量がカテゴリーA,B,Cの三段階に分けられていた。具体的には、 カテゴリーA 積載重量 1,600kg。 汎用の多用途車両、JLTV-A-GP。GPはGeneral Purpose(汎用)を表す。乗員4名。C-130に2両搭載可能。 カテゴリーB 積載重量 1,800~2,200kg 兵員輸送車型、JLTV-B-IC。ICはInfantry Carrier(兵員輸送車)を表す。乗員6名。 偵察戦闘車、騎兵戦闘車。陸軍向け、乗員6名。 指揮車両型、JLTV-B-C2OTM。C2OTMはCommand & Control On The Move(移動指揮車両)を表す。乗員4名。 ウェポンキャリア、救急車仕様、汎用車両 カテゴリーC 積載重量 2,300kg。 乗員2名のシェルタートラック、砲兵トラクター。JLTV-C-UTL。UTLはUtility(多用途)を表す。 大型救急車。乗員2名+患者4名。 のような要求仕様であったが、これらのカテゴリーが整理され、2段階の要求となった。変更後の積載重量カテゴリーは CTV (Combat Tactical Vehicle) 乗員4名、積載重量 1,600kg CSV (Combat Support Vehicle) 乗員2名、積載重量 2,300kg となった。この理由は、元の分類のカテゴリーBの車両重量が約7トンを超え、陸軍のCH-47Fおよび海兵隊のCH-53Kでの空輸が困難になる事が懸念されたためである。改定後の仕様ではこれら2種類の積載重量に対し、それぞれ異なるミッションパッケージの要求があり、計6種類の要求となっていた。 EMDフェイズの要求仕様書の暫定版は2011年10月に公開された。この仕様書でのJLTVの1台あたりのユニットコストは23万~27万USドルとされていた。走行パッケージのコストは6.5万USドル程度が求められていた。また、生産段階で装甲重量と機動性のどちらかに比重をおいた仕様変更が容易に出来る事も要求されていた。 この頃、JLTV計画は予算の増大や計画の遅れを問題視され、大幅な予算カットあるいは全面的なキャンセルあるいは休止の危機にあった。また、2011年8月に暫定仕様が策定されたハンヴィーの近代化改修・積載容量拡張プログラム(HMMWV Modernized Expanded Capacity Vehicle, ハンヴィーMECV)との競合も懸念されていた。 2012年1月26日、JLTVのEMDフェイズの提案募集要求が開示された。同日発表された2013年度の予算案によれば、JLTVへの資金的・技術的リソースを考慮し、ハンヴィーMECV計画は一旦休止される事となった。 2012年3月後半、EMDフェイズへの提案が締め切られ、入札業者は少なくとも6社は明らかになっていた。2012年9月には最後の7番目の入札者,"ハードワイヤ・アーマード・システムズ LCC"が明らかとなった。この7社(7提案)は、 ロッキード・マーティン - TDフェイズで提案していた車両の改良型(ロッキード・マーティン JLTV(英語版))を提案。 ジェネラル・タクティカル・ヴィークルズ - TDフェイズで提案していた車両の改良型(モワク イーグルの発展改良型)を提案。 AMゼネラル - ジェネラル・タクティカル・ヴィークルズとしての提案とは別に、AMゼネラル社単独で、BRV-O(英語版)(Blast-Resistant Vehicle - Off Road)を提案。ハンヴィーMECVでの検討技術が応用されたAMゼネラルの自社開発品。 BAEシステムズ - ナビスター・インターナショナルとの提携を解消し、TDフェイズで提案していた車両の改良型(ヴァランクス(英語版))を提案。 ナビスター・インターナショナル - BAEシステムズとの提携を解消し、新たに自社開発の"サラトガLTV"(Saratoga light tactical vehicle)を提案。サラトガLTVは一時期計画中止になりかけていたJLTVとハンヴィーの間を埋める物として、2011年10月に発表された新製品であった。 オシュコシュ・コーポレーション - 初期の提案を却下された後、ノースロップ・グラマンとの提携を解消し、2011年10月に発表したL-ATVを提案。L-ATVは2009年にアメリカ軍に採用されたM-ATVの設計技術を発展させ、より小型化・高機動化した車両。 ハードワイヤ・アーマード・システムズ LCC - 装甲技術の研究開発を行っているプライベートベンチャー企業。ハイブリッドシステムを提案。 であった。 BAEシステムズの提案したヴァランクス JLTV(英語版)。 ジェネラル・タクティカル・ヴィークルズの提案したJLTV。モワク イーグルの発展改良型。 ロッキード・マーティンの提案したJLTV。 AMゼネラルの提案したBRV-O(英語版)。 オシュコシュの提案したL-ATV(試作車両)。 2012年8月23日、陸軍および海兵隊はEMDフェイズでの審査により、ロッキード・マーティン JLTV(英語版)、AMゼネラルBRV-O(英語版))、オシュコシュL-ATVの3車種を合格とした。3社はそれぞれ22両ずつの試作車を製造し、国防総省に納品する事となった。 2013年6月には、ロッキード社が評価試験に必要な22両の製造を完了した。8月末にはオシュコシュ社のL-ATV、AMゼネラル社のRBV-Oも出来上がり、陸軍と海兵隊は合計66両のテスト用試作車が揃ったと声明を出した。3社はそれぞれ22両の試作車両をメリーランド州のアバディーン性能試験場、およびアリゾナ州のユマ性能試験場(英語版)に持ち込んだ。試験場では各車両に対し、爆発物の破片や爆風への耐久力試験、走行試験など種々の運用評価試験が約1年に渡って行われた。この後、2015年7月に勝ち残った1社が選ばれ、選ばれた車種は引き続き約3年の運用試験に向け約2,000両が発注される予定であった。 2013年10月の連邦政府閉鎖により一時的な停滞もあったが、その後は迅速に再開され、引き続き運用試験が進められた。
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