開発計画の変遷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 08:57 UTC 版)
「H-IIBロケット」の記事における「開発計画の変遷」の解説
日本は1994年の予備設計、1995年の概念設計を経て、1997年(平成9年)から国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給を行なう宇宙ステーション補給機(HTV、H-II Transfer Vehicle)の開発を進めてきた。HTVの質量は当初15トンと設定され、H-IIAロケット標準型では打ち上げることができないため、1996年(平成8年)から打ち上げ能力がLEOに17t、GTOに7.5tのH-IIAロケット増強型(H2A212)の開発が進められていた。 H-IIA増強型(H2A212)は、H-IIA標準型とほぼ同じ第1段にLE-7Aを2基装備した液体ロケットブースタ(LRB)を1基追加する計画であったが、1999年(平成11年)のH-IIロケット8号機の失敗を受けて、H-IIAの開発は標準型を最優先にするため、一部の構造系及び電気系の開発を完了した時点で開発が凍結された。 増強型の見直しは2002年(平成14年)から行われ、HTVの質量が当初の15tから16.5tへと予定よりも若干増加していること、世界の輸送系の費用が低下してきていることを踏まえて、増強型の以下のような要因を改善する検討が官民共同で実施された。 諸外国でも数例しかない非対称な(回転対称にならない)ロケットとなり、その制御に若干の困難が予想される。 当時台頭が予想された外国の新型ロケットは、複数衛星打上げにより衛星1機あたりの打上げ費用を大幅に低減する方向であり、H-IIAロケット民営化後の重要な課題となり得たこと。 H-IIロケット8号機打ち上げ失敗の原因となったLE-7を改良したLE-7Aを3基も使用することで、その信頼性確保に難点がある。 この結果、2003年8月に宇宙開発委員会において、従来の計画の代替として、H-IIA標準型の要素を流用しつつも以下のような新設計の第1段を採用する新たな能力向上案、H-IIAロケット能力向上型(H-IIA+)が決定された。 H-IIAの第1段機体を直径4 mから5 m級に拡張して主エンジンLE-7Aを2基装備する。 固体ロケットブースタ(SRB-A)を4本装着する。 こうしてH-IIAロケット能力向上型(H-IIA+)は2003年(平成15年)に「開発研究」が開始され、2005年(平成17年)にH-IIBロケットとなり「開発」フェーズへと移行した。これと同時にロケット開発における新たな官民の関係が確認され、H-IIBロケットは日本で初めて宇宙機関と民間企業が対等な形で開発を進めるロケットとなった。予定打ち上げ能力は低軌道(LEO)へ19,000 kg、HTV軌道(HTVが自力でISSへのランデブー飛行に移る前に、ロケットにより投入される低高度の楕円軌道)へ16,500 kg、静止トランスファ軌道(GTO)へ最大8,000 kgとされた。また、第1段機体を直径5m級に拡張するにあたって、5m案、5.2m案、5.4m案の3案が候補に上がり比較検討した結果、5.2m案が採用されている。 「H-IIAロケット#ラインナップの変遷」も参照 その後、打ち上げ能力の要求値であるHTV軌道16.5トンに対して余裕を持たせた16.7トンを目標値に開発が行われ、プロジェクト完了後の事後評価において、試験機の第2段推進薬の消費率が事前の予測通りであり、HTV軌道16.5トンを0.45トン上回る16.95トンの打ち上げ能力を持っていることが確認されている。 H-IIBロケットではH-IIAロケットと同じくSRB-Aが用いられているため、SRB-Aを4本使用したH-IIAロケット11号機の打ち上げをもって、SRB-A4本分の推力を受けるH-IIBロケット本体の強度の設計妥当性の確認が行われた。
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