貨物新線建設の反対運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 18:01 UTC 版)
「東海道貨物線」の記事における「貨物新線建設の反対運動」の解説
「横須賀・総武快速線#難渋したSM分離および相互直通運転」も参照 (本節全体の出典…、なお、本節のみ羽沢線を貨物新線と表記) 鶴見駅 - 東戸塚駅間については、前述のように北方に迂回する貨物新線を建設することになったが、これは横浜駅付近の市街化が進み線増が困難なためであった。この貨物新線は、武蔵野貨物線・新鶴見方面からの線路と塩浜操車場経由東京貨物ターミナル駅方面からの線路とが合流する鶴見駅を起点とし、同駅構内において根岸線方面への高島線と分岐してトンネルに入り東海道旅客線などと交差、一度地上へ出て横浜線大口駅付近で高架で交差、長大トンネルで横浜市港北区や神奈川区の丘陵地帯を抜けると貨物専用の横浜羽沢駅へ至り、同駅から2本のトンネルを経て相鉄本線上星川駅付近で高架で同線と交差した先から、長大トンネルで保土ケ谷区の丘陵地帯を抜け東戸塚駅で旅客線と合流、その先の東戸塚駅 - 大船駅間は旅客線に沿って新たに貨物用の複線を敷設して東海道線列車用・横須賀線電車用と併せて三複線化、戸塚駅を貨物新線の終点とするものであった。しかし、この貨物新線は反対運動により、着工から開通まで実に13年の歳月を要することになった。 1966年(昭和41年)4月に東海道本線東京駅 - 小田原駅間線路増設工事を国鉄理事会で決定、同年5月に工事実施計画の認可が下りたことで、国鉄は用地買収着手のため、貨物新線建設の計画を発表した。ところが、突然発表された建設計画は、恩恵を直接受けない横浜市神奈川区や保土ケ谷区などの貨物新線沿線住民の一斉の反発を招き、各地で貨物線建設反対運動を引き起こした。この反対運動は、国鉄側が地元の意見を聞かずに一方的にルートを決めたことへの反発と、住宅の多い沿線の丘陵地帯を長大トンネルで通したとしても騒音や振動が発生するのではないかという警戒感から発生したもので、住民側では同年9月11日に「篠原菊名地区貨物線反対期成同盟」が、1967年(昭和42年)5月23日に保土ケ谷区上星川地区でも反対同盟が結成され、反対運動が各地に波及、同年6月10日に結成された「横浜新貨物線反対同盟連合協議会」によって各地の反対運動の連携を図ることになった。これら反対運動の影響で、国鉄は用地買収に着手できず、住民説明会や測量も行うことができなかった。しかし、住民側が国鉄との交渉を続けていくうちに、絶対反対から条件闘争へと転換する地区も現れて、1969年(昭和44年)6月に上星川地区が反対同盟連合から脱退、同年横浜市は貨物線建設は通勤輸送緩和のためやむを得ないとして、国鉄に十分な騒音・振動対策を求めたが、それでも納得のいかない一部住民は強硬に反対、測量を始めた工事関係者と衝突、測量を中止に追い込んだ。1970年(昭和45年)3月6日に横浜市議会が反対請願を不採用とする決議を採択、これにより住民側の反対運動の体勢は条件闘争へと向かうが、建設反対強硬派の一部住民とは数年間にわたり双方のにらみ合いが続いた。 国鉄は、依然として強硬に反対する一部住民について条件闘争派とは分けて強く対応することにし、1970年2月17日に土地収用法による事業認定を申請、それに対し反対同盟連合は事業認定の前提となる縦覧の阻止闘争などを続けた。しかし、1972年(昭和47年)3月になると建設反対強硬派が集まる鶴見区や神奈川区の一部住民が反対同盟連合から脱退、条件派の貨物線公害対策協議会を結成、事実上反対同盟連合は分裂した。これにより、同年には国鉄と条件付き賛成派が建設に合意、ほぼ全線で着工されたが、横浜線との交差付近の500mの区間の神奈川区松見町と同神之木町の住民は団結小屋まで作り最後まで強硬に反対していた。これに対し、1974年(昭和49年)7月17日に建設大臣による土地収用法に基づく事業認定の公示があり、絶対反対の地区に対しては土地収用法が適用され、1978年(昭和53年)6月3日には神奈川県収用委員会は収用の裁決を下し強制収用が実施され、同年9月14日に団結小屋は撤去された。 建設工事はこの区間を除き1976年(昭和51年)3月までに終了しており、最後まで残ったこの区間を突貫工事で約半年で完成させ、1979年(昭和54年)10月1日のダイヤ改正から貨物新線の使用を開始した。なお、この貨物新線はトンネルが多く、横浜線などの交差部分などで地上に出ても防音壁で覆われた構造となっているため、開業後はその存在を認識していない住民も多くなった。
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