誤審・審判買収問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 10:00 UTC 版)
「2002 FIFAワールドカップ」の記事における「誤審・審判買収問題」の解説
今大会では誤審が話題を集めた。 開催国であった韓国の試合において多数の疑惑の判定(1回戦の韓国対イタリア戦と準々決勝の対スペイン戦の2試合での主審の買収が報じられた。誤審続出の背景は韓国から買収された審判が起用されたことにあるとする。)やその他の試合での誤審(イタリア対クロアチア戦でのオフサイド判定やブラジル対ベルギー戦でのゴール無効判定にも疑問が呈された。)が発生した。 一連の騒動となった誤審は、FIFAの映像ライセンスを持つ会社が2006年3月24日に創立100周年を記念して発売したDVDビデオ『FIFA FEVER FIFA創立100周年記念DVD』に収録されている「世紀の10大誤審」の半数を占め(3位がブラジル対ベルギー戦、6・7位が韓国対イタリア戦、8・9位が韓国対スペイン戦)、これについて大韓サッカー協会は猛反発をした。また一連の誤審騒動以前にも、韓国チームがW杯前の親善試合でフランスと対戦した際に、フランスの司令塔ジネディーヌ・ジダンに危険なタックルをしてフランスのルメール監督から「わざとやったに近い」と批判 されたことを皮切りに、韓国対ポーランド戦前のポーランドの宿舎前での睡眠妨害 や、韓国対米国戦でのスケートパフォーマンス といったトラブルも発生している。 韓国対イタリア戦は、エクアドル人のバイロン・モレノが主審を務めたが、延長13分にトッティが倒れたプレーがシミュレーションと判定され、2枚目のイエローカードを受けて退場となった。一方で倒れこんでいたパオロ・マルディーニの後頭部に蹴りを入れる、スライディングしてスパイクがジャンルカ・ザンブロッタの尻に刺さる(このプレーでザンブロッタは全治3カ月の重傷を負った)、その他タックルや肘打ちなど韓国選手の半ば常軌を逸したラフプレーに対しては、カードはおろかファールを取ることもしなかった。さらに延長20分にはイタリアが決めた得点が不可解なオフサイド判定により取り消され、その後韓国の安貞恒がゴールデンゴールを決めてベスト8に進出した。この判定に対し、トッティは「審判を変えて最初からワールドカップをやり直すべきだ」と不満 をあらわにし、事態沈静化を図ったFIFAのブラッター会長が大会中に異例の声明を出すほどであった。イタリアサッカー協会のモレノ主審の誤審の調査要請を受け、FIFAは2002年9月13日から調査を開始したが、2003年1月にモレノ主審の誤審は買収などの規約違反によるものではなかったと結論付けて決着とした。その後、FIFAは理由の明示なしにモレノ主審を国際審判リストから除名した。モレノ主審はエクアドルリーグでも誤審により20試合の資格停止を受け、今大会の翌年に33歳というサッカー審判員としては若い年齢で審判を引退した。なお、さらに7年後にはヘロイン6kgの密輸により米国で逮捕されている。2015年になってからも、1回戦の韓国対イタリア戦と準々決勝の対スペイン戦の2試合での主審モレノの買収が報じられた。 続く韓国対スペイン戦はエジプト人のガマル・ガンドゥールが主審を務めたが、48分にスペインの得点がファウルの判定により取り消され、結局何のファウルがあったのかも明らかにされなかった。延長2分にはその直前のセンタリングがゴールラインを割っていたとの線審(現在は「副審」)の判定によりスペインの得点は取り消された。試合はスコアレスのままPK戦となり、韓国が勝利した。このように決勝トーナメントに入ってからの誤審疑惑は韓国戦に集中し、韓国代表の相手国はいずれも上位進出候補の強豪国であったことから、ホスト国の韓国代表チームに対し意図的に有利な判定が行われたとする疑惑が生じた。スペイン戦後、FIFAは中立の大陸から審判を起用するという慣例を放棄し、準決勝以降の試合を全て欧州出身の審判で固めた。その後韓国は準決勝でドイツに破れた。 ロイター通信は7月1日、「ロイター通信の記者が選んだ2002年ワールドカップの各部門ベスト、ワースト」を発表し、「ワースト判定」に韓国対スペイン、延長戦のフェルナンド・モリエンテスのゴールを無効としたガマル・ガンドゥール(エジプト)主審の判定を挙げるとともに、スペイン代表を「最も運の悪いチーム」に選出し、イタリア代表についても「最も悲運な敗者」に選出している。 2000年代のサッカーの出来事を扱ったスポーツイラストレイテッド誌の記事ではイタリア戦・スペイン戦で誤審疑惑が指摘されていると記された。 イギリスBBCにおいて元イングランド代表のゲーリー・リネカーは、韓国はポルトガル戦、イタリア戦、スペイン戦において、審判から数多くの有利な判定の恩恵を受けたと述べた。また、韓国という例をアジアサッカー全体を構築していくための基盤にすべきだとも述べた。スペインについては、彼らが審判から不運以上のものを受けたことは理解しているが、PK戦の前に勝ち切る事が出来た筈だ、と述べている。BBCは「最も驚くべき瞬間」にセネガルのフランスに対する勝利と共に、韓国のイタリア撃破を挙げた。韓国の成績は確かに審判の不可解な判定の恩恵によるものだが、韓国の業績が傷つけられるべきではないとも報じた。 2013年にはコッパ・イタリア決勝式典で韓国人歌手のPSYが出演し熱唱したが、それにイタリアの観客はブーイングや爆竹で邪魔をする行為をし、11年経ってもイタリアのサッカーファンが上記の件を忘れていない姿が報じられた。
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