計算機による計算の時代 —20世紀後半以後
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「円周率の歴史」の記事における「計算機による計算の時代 —20世紀後半以後」の解説
「任意精度演算」も参照 1947–1948年 [値] (808) ファーガソンは、卓上計算機を使用して808桁まで求めた。この計算は、レビ・スミスとジョン・レンチによっても検算され、シャンクスの計算が間違いであることが繰り返し確認された。 1949年 [値] (2037) ライトウィーズナーが ENIAC を用いてマチンの公式により 2037桁を 70時間かけて計算した。 1954年 [値] (3092) S・C・ニコルソンとJ・ジーネルが、IBM NORC を用いて3089桁を13分で計算した。 1958年 [値](1万)フランソワ・ジェニューイが、IBM 704 を用いて 1万桁まで計算した。 1961年 [値](10万)ジョン・レンチとダニエル・シャンクスが IBM 7090 を用いて 10万桁まで計算した。計算にはストーマーの公式 π 4 = 6 arctan 1 8 + 2 arctan 1 57 + arctan 1 239 {\displaystyle {\frac {\pi }{4}}=6\arctan {\frac {1}{8}}+2\arctan {\frac {1}{57}}+\arctan {\frac {1}{239}}} を使用した。検算にはガウスの公式 π 4 = 12 arctan 1 18 + 8 arctan 1 57 − 5 arctan 1 239 {\displaystyle {\frac {\pi }{4}}=12\arctan {\frac {1}{18}}+8\arctan {\frac {1}{57}}-5\arctan {\frac {1}{239}}} を使用した。 1966年 [値](25万)パリの原子力エネルギー委員会にある IBM 7030 を用いて25万桁まで計算した。 1967年 [値](50万)パリの原子力エネルギー委員会にある CDC 6600 を用いて50万桁まで計算した。 1973年 [値](100万)ジャン・ギューとマルティーヌ・ブイエが CDC 7600 を用いて 100万1250桁まで計算した。 [法] ユージン・サラミンとリチャード・ブレントが独立に、算術幾何平均を用いたアルゴリズムを発見する。 1982年 [値](209万)田村良明が MELCOM COSMO 900 Ⅱ を用いてサラミンとブレントのアルゴリズムにより209万7144桁まで計算。 [値](419万)田村良明と金田康正が HITAC M-280H を用いて419万4288桁、ついで838万8576桁まで計算。 1983年 [値](1677万)金田康正と吉野さやかが HITAC M-280H を用いて1677万7206桁まで計算。 [値](1001万)後保範と金田康正が HITAC S-810/20 を用いて1001万3395桁まで計算。アルゴリズムはガウスの公式による。 [値](7万)若松登志樹がシャープのパソコン MZ-80B を用いてガウスの公式 π 4 = 12 arctan 1 18 + 8 arctan 1 57 − 5 arctan 1 239 {\displaystyle {\frac {\pi }{4}}=12\arctan {\frac {1}{18}}+8\arctan {\frac {1}{57}}-5\arctan {\frac {1}{239}}} により7万1508桁まで計算。 1985年 [値](1752万)ウィリアム・ゴスパーがシュリニヴァーサ・ラマヌジャンの式を用いて、1752万6200桁まで計算した。 1989年 この年は、チュドノフスキー兄弟と金田康正・田村良明によって激しい計算競争が行われた。 [値](4.80億)5月にデビッド・チュドノフスキーとグレゴリー・チュドノフスキーによって4億8000万桁まで計算された。 [値](5.36億)7月に金田康正と田村良明によって5億3687万898桁まで計算された。 [値](10.1億)8月にデビッド・チュドノフスキーとグレゴリー・チュドノフスキーによって10億1119万6691桁まで計算された。 [値](10.7億)11月に金田康正と田村良明によって10億7374万1799桁まで計算された。 1990年 [値](100万)若松登志樹が富士通のパソコン FM-TOWNS を用いてシュテルマーの公式 π 4 = 6 arctan 1 8 + 2 arctan 1 57 + arctan 1 239 {\displaystyle {\frac {\pi }{4}}=6\arctan {\frac {1}{8}}+2\arctan {\frac {1}{57}}+\arctan {\frac {1}{239}}} により100万118桁まで計算。 1994年 [法] チュドノフスキー兄弟によって級数 1 π = 12 ∑ k = 0 ∞ ( − 1 ) k ( 6 k ) ! ( 13591409 + 545140134 k ) ( 3 k ) ! k ! 3 640320 3 k + 3 2 {\displaystyle {\frac {1}{\pi }}=12\sum _{k=0}^{\infty }{\frac {(-1)^{k}(6k)!(13591409+545140134k)}{(3k)!k!^{3}640320^{3k+{\tfrac {3}{2}}}}}} が発見された。 1995年9月19日午前0時29分 [法] カナダのサイモン・フレーザー大学で、デビット・H・ベイリー、ピーター・ボールウェイン、サイモン・プラウフの研究チームがBBP公式 π = ∑ k = 0 ∞ 1 16 k ( 4 8 k + 1 − 2 8 k + 4 − 1 8 k + 5 − 1 8 k + 6 ) {\displaystyle \pi =\sum _{k=0}^{\infty }{\frac {1}{16^{k}}}\left({\frac {4}{8k+1}}-{\frac {2}{8k+4}}-{\frac {1}{8k+5}}-{\frac {1}{8k+6}}\right)} を発見する。この式はπの値の二進法(及び十六進法など、二進法と直接変換可能な記法)による表現について、任意の n − 1 桁目までの計算を必要とせずに、直接 n 桁目およびそれ以降を計算できる。ベイリーのウェブサイトで様々なプログラミング言語用の実装例を見ることができる。 他の位取り記数法(たとえば十進法)で同様の級数が存在するかは判明していない。 1997年 [値](515億)金田康正と高橋大介が HITACHI SR2201 を用いて 4次のボールウェインのアルゴリズムにより 515億3960万桁まで計算した。 1999年 [値](2061億)金田康正と高橋大介(埼玉大学)が HITACHI SR8000 (1 TFLOPS) を用いてガウス=ルジャンドルのアルゴリズムと分割有理数化法 (DRM)により 2061億5843万桁まで計算し、4次のボールウェインのアルゴリズムで検証した。 ガウス=ルジャンドルのアルゴリズム(865GB、37.3時間) π 4 = 48 arctan 1 49 + 128 arctan 1 57 + 20 arctan 1 239 + 48 arctan 1 110443 {\displaystyle {\frac {\pi }{4}}=48\arctan {\frac {1}{49}}+128\arctan {\frac {1}{57}}+20\arctan {\frac {1}{239}}+48\arctan {\frac {1}{110443}}} 検証計算がボールウェインの4次収束アルゴリズム(817GB、46.1時間) π 4 = 176 arctan 1 57 + 28 arctan 1 239 − 48 arctan 1 682 + 96 arctan 1 12943 {\displaystyle {\frac {\pi }{4}}=176\arctan {\frac {1}{57}}+28\arctan {\frac {1}{239}}-48\arctan {\frac {1}{682}}+96\arctan {\frac {1}{12943}}} 2002年 [値](1.24兆) 金田康正が HITACHI SR8000(0.9TFOPS、約850GB使用、検証含め約84時間)を用いて高野喜久雄の公式(ガウス・ルジャンドル法) π 4 = 12 arctan 1 49 + 32 arctan 1 57 − 5 arctan 1 239 + 12 arctan 1 110443 {\displaystyle {\frac {\pi }{4}}=12\arctan {\frac {1}{49}}+32\arctan {\frac {1}{57}}-5\arctan {\frac {1}{239}}+12\arctan {\frac {1}{110443}}} と分割有理数化法により1兆2411億桁まで計算した。検証計算などを含めて約600時間かけた。 2009年8月 [値](2.57兆)筑波大学計算科学研究センターの高橋大介が、円周率を2兆5769億8037万桁まで計算する世界記録を樹立したと発表した。「T2K筑波システム」(毎秒95兆回)を使い、検証計算を含めて約73時間36分を要した。 2009年12月 [値](2.69兆)フランスのファブリス・ベラール(en:Fabrice Bellard、QEMU や FFmpeg などが知られる)が、Intel Core i7 を搭載したデスクトップPCでチュドノフスキーの級数を用いて2兆6999億9999万桁まで計算し、世界記録を樹立した。バイナリーでの計算に103日、検算に13日。データ量 1137GB。2.93GHz のクアッドコアプロセッサ、6GB のメモリ、7.5TB のストレージを搭載したデスクトップPCを使用し、検証計算を含めて131日を要した。 2010年 [値](5兆)長野県飯田市の会社員近藤茂と米国のアレクサンダー・J・イーが、3カ月かけてパソコンで小数点以下5兆桁まで計算した。 2011年 [値](10兆)近藤茂とアレクサンダー・J・イーが、1年1カ月かけてパソコンで小数点以下10兆桁まで計算したと発表。 2013年 [値](12.1兆)近藤茂とアレクサンダー・J・イーが、94日かけてパソコンで小数点以下12.1兆桁まで計算したと発表。 2014年 [値](13.3兆)Sandon Nash Van Ness が208日をかけてワークステーションで小数点以下13.3兆桁まで計算したと発表。この数カ月後にVan Nessは死去。 2016年 [値](22.4兆)ピーター・トリュープが、105日をかけてパソコンで小数点以下22兆4591億5771万8361桁まで計算したと発表。 2019年3月14日 [値](31.4兆)Googleの技術者、岩尾エマはるかが同社のクラウドコンピューティングサービス「Google Cloud」を用いて、111日かけて31兆4159億2653万5897桁まで計算したと発表。 2020年1月29日 [値](50兆)Timothy Mullican が、303日をかけてパソコンで50兆桁まで計算したと発表。 2021年8月16日 [値](62.8兆)スイスのグラウビュンデン応用科学大学は、108日と9時間かけてスーパーコンピューターで62兆8318億5307万1796桁まで計算したと発表。 2022年6月9日 [値](100兆)Googleの技術者、岩尾エマはるかがGoogle Cloudで、チュドノフスキー級数を用いて157日23時間31分7.651秒かけて100兆桁まで計算し、BBP公式で検証したと発表。
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