航空総軍設立と終戦
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連合国との戦況が悪化した1944年6月、陸軍中央は航空関係の教育機関を戦力化し、錬成訓練を主眼とする5つの飛行学校(1分校を含む)が教導飛行師団に改編された。教導飛行師団は作戦参加と教育の任務を併せて与えられ、航空総監の隷下に置かれた。 1945年(昭和20年)には戦況はさらに逼迫し、本土防衛に関係する航空諸軍を統率する天皇直隷の航空総軍(司令官は河辺正三大将)が同年4月15日に設立された。同年4月18日、「陸軍航空総監部令ノ適用停止ニ関スル件」(軍令陸第10号)が施行された。これにより航空本部と二位一体であった陸軍航空総監部は閉鎖され、その人員は航空総軍司令部の編成に充当された。航空総軍と航空本部の職域には明確な区分があったが、航空においては兵器の生産、補給と運用は密接な関係があり、航空戦力をあげての本土決戦のため航空本部の各部長および部員の多くが航空総軍司令部要員を兼務し、航空本部は新たに航空総軍司令部との二位一体となったのである。 同時に陸軍航空本部令改正(勅令第228号)が施行された。航空本部の編制は総務部(庶務課、総務課、調査課)、教育部(第一教育課、第二教育課)、補給部(補給課、器材課、飛行機課、兵器課、装備課)、技術部(技術課)、経理部(経理課、施設課)、医務部、および監督官長以下となり、機構は従来と大差ないものの、人員は縮小された。航空本部の管掌する機関は航空技術研究所などの研究、生産に関する部門と、教育に関係する陸軍航空士官学校、各教導飛行師団などがあった。同年5月10日、陸軍大臣の隷下にあった電波兵器 を扱う多摩陸軍技術研究所が航空本部の管掌下となった。 陸軍航空本部は兵器の研究、考案、試作、および整備等に関する業務のため、あるいは航空機用木材および航空関係工場生産拡充用木材の取得等に関する業務のため、さらに一部では航空関係工場技術指導に関する業務のため、多数の出張所を日本国全土に置いた。1945年7月時点で確認できる各出張所名と所在地は次のとおりである。 太田出張所(群馬県新田郡太田町)、荻窪出張所(東京都杉並区宿町)、大森出張所(東京都大森区大森)、立川出張所(東京都立川市)、砂川出張所(東京都北多摩郡大和村)、調布出張所(東京都北多摩郡調布町)、日光出張所(栃木県日光町清滝)、安来出張所(島根県安来町)、知多出張所(愛知県知多郡大府町)、龍宮出張所(名古屋市港区星崎町)、大曽根出張所(名古屋市東区大幸町)、各務原出張所(岐阜県稲葉郡蘇原村)、大阪出張所(大阪市此花区島屋町)、神戸出張所(神戸市灘区日出町)、明石出張所(兵庫県明石郡林崎村)、下関出張所(山口県下関市)、平塚出張所(神奈川県平塚市馬入字天沼)、一宮出張所(愛知県一宮市川田町)、日立出張所(茨城県日立市助川)、川越出張所(埼玉県川越市脇田字前原)、狛江出張所(東京都北多摩郡狛江村)、京都出張所(京都市中京区西京桑原町)、溝口出張所(神奈川県川崎市久本鴛鴦町)、上連雀出張所(東京都北多摩郡三鷹町上連雀)、三田出張所(東京都芝区三田四国町)、柳町出張所(神奈川県川崎市堀川町)、西芝浦出張所(東京都芝区西芝浦)、亀戸出張所(東京都向島区吾嬬町)、三池出張所(福岡県大牟田市浅牟田町)、柏崎出張所(新潟県柏崎市大字枇杷島)、黒崎出張所(福岡県八幡市藤田五段新開)、宇都宮出張所(栃木県宇都宮市西原町)、熊本出張所(熊本県熊本市健軍町)、前橋出張所(群馬県前橋市天川原町)、松本出張所(長野県松本市大字筑摩)、勝田出張所(茨城県那珂郡勝田町)、蒲田出張所(東京都蒲田区東蒲田)、宮竹出張所(静岡県浜松市宮竹町)、静岡出張所(静岡県静岡市小鹿)、岡山出張所(岡山県岡山市福島)、都城出張所(宮崎県都城市川東町)、黒沢尻出張所(岩手県和賀郡黒沢尻町)、刈谷出張所(愛知県碧海郡刈谷町)、札幌出張所(北海道札幌市)、盛岡出張所(岩手県盛岡市)、広島出張所(広島県広島市祇園町)、平壌出張所(朝鮮平壌府美林町)、京城出張所(朝鮮京城府鍾路区鍾路) 同年8月、御前会議においてポツダム宣言の受諾が最終決定され、8月15日正午より太平洋戦争の終戦に関する玉音放送が行われた。同日、航空本部長寺本熊市中将は自決し、その後の本部長は河辺航空総軍司令官が兼務した。陸軍航空本部令は同年11月15日施行の臨時陸軍残務整理部令(勅令第631号)により廃止され、同時に陸軍航空本部は陸軍航空本部残務整理部(部長は寺田済一中将)を残し廃止となった。
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