電波兵器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/07 20:03 UTC 版)
電波兵器(でんぱへいき)とは、軍事用途に電波を用いた機器のこと。
概要
電波を通信以外の兵器用途としても利用する研究は、20世紀初頭より行われてきていたが、1940年には捜索・標定機器のレーダーとして、実用化した。レーダー及びそれを妨害する電子機器等は電子兵器とも呼ばれる。電波や電子機器を用いた捜索・標定及び通信とそれに対する妨害行動は、電子戦として現代の軍隊には不可欠な能力となっている。
電波のエネルギーそのものを指向性エネルギー兵器(DEW)として用いる構想も20世紀前半からあったが、出力等の技術的課題が大きく実用には至らなかった。また、核爆発に伴う電磁パルスの活用も考えられていたが、これには核兵器の使用という問題があった。このような状況にあったが、1990年代以降より高出力マイクロ波を用いた実用的なDEW電波兵器の開発が進められるようになった。人体に向け照射し、人体の発熱により、その行動力を低下させる非殺傷兵器としての開発や、電子機器へ照射し、過電圧・過負荷により電子チップを破壊する方式が検討されている。
兵器にまつわる遺構
日本海軍は第二次世界大戦中、静岡県島田市内に実験所(第二海軍技術廠牛尾実験所)を建設し、電波兵器の開発を進めていた。1945年、兵器は完成を見ぬまま終戦を迎え、コンクリート構造物だけが長らく現地に残されていたが、近隣の大井川の改修工事に伴い2015年初頭に取り壊しが決定した[1]。
近年の使用例
2020年11月、中国人民大国際関係学院の金燦栄副院長が講演で中国軍のマイクロ波攻撃について言及した。[2]その内容は「インド軍をマイクロ波で撃退した」というものであるが、インド軍は使用されたことを否定している。
また電磁波兵器であることは確定していないが、世界各国の大使館や拠点に在留していたアメリカの外交官が脳損傷を受ける被害を訴えた。[3]ラトビアを拠点とするインサイダーは、ロシア軍参謀本部情報総局傘下の「29155」と呼ばれる部隊が、米政府職員がハバナ症候群を発症した場所に配置されていたと指摘。同部隊の幹部が「非致死的音響兵器」の開発に関する任務遂行で表彰や昇進を受けていたと主張している。[4]
出典
- ^ “<電波兵器開発跡>年明けに消滅 地元で惜しむ声”. 毎日新聞社. (2014年12月5日) 2014年12月5日閲覧。
- ^ “中国外交専門家「インド軍をマイクロ波で撃退」 インド軍「フェイクニュース」と否定”. 毎日新聞. 2024年4月7日閲覧。
- ^ 「ハバナ症候群、「電磁波」が原因か 米専門家委が報告」『BBCニュース』。2024年4月7日閲覧。
- ^ ロイター編集「ハバナ症候群、ロシア軍情報部隊の兵器が原因か=調査報道サイト」『Reuters』、2024年4月1日。2024年4月7日閲覧。
参考文献
- DEW指向性エネルギー兵器の基礎知識(第5回)高出力マイクロ波兵器の開発と実用化 井上孝司 軍事研究 2012年7月号 P214-223 ジャパン・ミリタリー・レビュー ISSN 0533-6716
関連項目
電波兵器
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二三号電波探信儀 潜水艦用として開発された海軍の小型対空レーダー。 最大探知距離は55 - 75km(単機)。無指向性の空中線で使用されるため、目標までの大雑把な距離が分かる程度の精度しか無く、早期警戒にしか使えないが、小型であることから日本海防空戦時には大は改装空母から小は漁船を徴用した対空監視艇にまで広く搭載されている。史実における一三号電波探信儀と同等の性能を有するが、一三号電探は二三号電探とは異なり陸上設置型として開発されている(史実の二三号電探は艦載型の試作射撃管制用レーダー)。 東太平洋海戦時には、基本的な構造は同じながら、空中線の大型化により測定精度を向上させ、目標までの距離や高度の測定が可能になった二四号電波探信儀が実用化されている。 試製一四号電波探信儀 ラッパ型の空中線と、それまでの電探より波長の短いレーダー波を採用することで感度を向上させた海軍の陸上設置型試作対水上レーダー。史実の二二号電波探信儀の生産型と同等の性能を有すると思われる(史実の一四号電探は陸上設置型の試作対空用レーダー)。 小型で容易に分解できるため、人力での搬送が可能。昭和16年末に試作機が占守島監視哨に配備され、北千島へのソ連軍侵攻時にソ連軍砲艦への電探射撃に利用されている。 七一号電波探信儀 海軍技術研究所が開発した海軍及び海兵隊の航空機搭載用対空レーダー。 二三号電探を原型として開発されており、魚雷形の本体先端から八木式空中線が突出した外形をしている。構造は二三号電探を踏襲、レーダー波の波長も同じだが、指向性の高い空中線に変更することで目標までの距離の判定を可能にしており、最大探知距離は高度にもよるが200km前後(単機)。 単発機の九七式艦攻での運用が可能なほど小型・軽量である一方で、空中線が固定されているため探知範囲が狭く、広域捜索を行うためには搭載機が旋回する必要がある。表示方法もAスコープ方式であるため、敵味方機が入り乱れる中での敵味方識別は困難。 北太平洋航空戦から運用を始めた海軍と海兵隊だけでなく、陸軍も技研型キ一号電波警戒機として採用し、二式複戦「屠龍」に搭載して空中指揮に用いている。また東太平洋海戦時には探知範囲を広げた性能向上型の七三号電波探信儀や、九六式陸攻に搭載された大出力型(型式不明)が登場している。 電波反照機(レピータ) 陸軍第五技術研究所が開発した敵味方識別装置。 夜間迎撃時における味方戦闘機のレーダー誘導を目的に開発された。日本海防空戦時は大型で双発戦闘機にしか搭載できなかったが、沿海州航空戦時には小型化されて単発戦闘機にも搭載できるようになっている。 三式高射装置 秋月型駆逐艦に搭載されている新型高射装置。 本来は夜間砲撃用として開発されたもので、九四式高射装置の測距のみに電波探信儀を併用しているが、精度の面では光学測距儀に劣る。完成間もない荒島に一時的に搭載されたものの、不調のため撤去された対空電探連動型の高射装置(型式不明)との関連は不明。 陸軍でも第五技術研究所が射撃管制用電波標定機を開発しており、試作機が東太平洋海戦時のミッドウェイ防空戦で実戦投入されている。 電波妨害機 航空機搭載型のレーダージャミング装置。 インド洋航空戦以降、南山改や彗星改に搭載されて米英軍の艦艇や航空機に対する電波妨害に用いられている。逆探の機能も併せ持っているようで、敵のレーダー波を観測しつつ妨害電波を発信する様子が描写されている。電力供給の問題から連続使用時間は数十分間の模様。
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