【敵味方識別装置】(てきみかたしきべつそうち)
Identification Friend or Foe (IFF)
レーダーで捉えた目標が、友軍機であるかそうでないかを自動的に識別する装置。
暗号コードを送信し、受信した側はそれに返答をすることにより友軍、ないしは民間航空機であることを知らせる。
1940年代、第二次世界大戦時にアメリカとイギリスによりMK-Iとして初めて使用された。その後、民間用にも拡張された。
送信には1090MHz、応答には1030MHzの周波数帯を用い、パルスコードで送信するため、比較的低出力でも広範囲に送信することが出来る。
返答があった場合は間違いなく友軍であると判るが、返答が無かった場合は必ずしも敵であるとは限らないので、注意が必要。
過去、IFFを装備しているにも関わらず数度の誤射事故が発生している。
動作モード
IFFの動作には複数のモードが存在する。
以下にその概要を示す。
モード名 | 概要 |
Mode 1 | 軍用、航空管制(AWACS等)において使用。 返答できるパターンが64通りしかないため、対象の識別には使われない。 |
Mode 2 | 軍用、航空機を識別するために使用。 返答パターンが4096通りある。 |
Mode 3/A | 民間・軍事共用。ATCのコードと共通で航空管制用に用いられる。 空港管制側で計器飛行中の各機に4桁のユニークIDを割り当て、「Mode C」と共に使われる。 |
Mode C | 高度応答モード。このモードでの質問信号が送られると、受信側は自機の現在高度を返答する。 「Mode 3/A」とあわせて用いられる。 二次元レーダーしか備えていない空港・飛行場では、これが対象機の高度を知る唯一の術となる。 |
Mode 4 | 軍事用の暗号化されたモード。 本来の用途である「敵味方識別」にはこのモードを使う。 |
Mode S | 従来の各モードの欠点を改良したモード。 質問信号とは別途に識別信号を設定し、個別の航空機のみから応答を引き出すことが可能となっている。 「Mode 3/A」と互換性あり。 |
敵味方識別装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/08 07:12 UTC 版)
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敵味方識別装置(てきみかたしきべつそうち、英: identification friend or foe、略称:IFF)とは味方を攻撃すること(同士討ち)を防ぐため、電波などを用いて索敵範囲内の航空機・艦艇が味方であることを確認する装置。航空機や艦船に搭載されている[1][2]。
概要
敵味方識別装置は、電波を発射して対象に返信を要求する、または要求に対して返信する装置である。つまり名称は「敵味方識別」であるが、応答があった時に味方だと確認できるだけで、敵だとの確実な情報を得ることはできない。起源はイギリス空軍による防空レーダー網の建設が始まった1930年代まで遡る。
現代の敵味方識別装置は、識別信号を敵に偽装されることを防ぐため、高度に暗号化された方法で識別信号をやりとりするほか、暗号化鍵の漏洩や味方の離反に備え、暗号化鍵を変更してそれまで味方であったものを敵として識別することが可能である。
平時における訓練飛行や要人護衛、救難といった任務においては民間の航空管制用と同じ航空機識別信号を発しており、最高飛行高度と国籍コード、および軍用機であることを示すコードが発信される。軍事行動中はこれら管制用の信号は停波される。戦闘地域周辺を運行中の軍用機が航空機識別信号を発している場合は中立を意味する。
2015年時点でアメリカを中心とする北大西洋条約機構(NATO)加盟国、日本、韓国など旧西側諸国の軍の艦船や航空機は「モード4」機器を搭載している。
「モード4」のIFFは、目視可能距離を超える数百km先の対象を判別できる。
識別信号を電波で送受信した結果はレーダー画面上に味方機なら青、不明機なら赤の三角印などが表示される。
2020年には更に高度なデータ保護機能を持つ「モード5」機器に切り替える計画がある[1][2]。
歴史
IFFに先鞭をつけたのはイギリス空軍で、第二次世界大戦が始まる前から研究が開始された。1930年代当時のレーダー技術では、敵味方識別の可否が大きな課題であり、爆撃機軍団司令が公開の席上で、敵味方の識別が不可能であればレーダーの研究開発自体を全力で阻止すると発言したほどだった[3]。
初期のIFF マークIはチェーン・ホーム・レーダーのレーダー波自体を利用し、レーダー波を受けるとレーダーが受ける信号に介入してレーダースコープ上でブリップを歪ませる方法を模索したが、信号の強弱が手動調整であることからうまくいかなかった。そのため、航空機の無線機から1分あたり14秒間にわたって1kHzの信号を出し、これをHF/DFで測量してプロットする「ピップスキーク」というシステムで一旦、実用化をみた。これは人海戦術による力技であったが、CHの覆域外でも利用できた。IFF マークIの信号強度の調整の問題は、自動利得制御によって解決され、IFF マークIIは1939年10月に最初の1000セットがフェランティ社に発注された。
一方でイギリス空軍のレーダーの更新や海軍でのレーダーの導入、夜間戦闘機の実用化などによって応答すべきレーダー波の種類は増え、12のサブタイプが作られるに至った。加えてマグネトロンで動作するマイクロ波レーダーが実用化されると、この周波数に対応できなかった。そのため1940年には様々なレーダー波に対応するのではなく、単一の帯域での質問波と応答波で味方を識別する方法が提案され、IFF マークIIIではレーダー側で追加の発信機が必要となるものの、航空機に搭載する装置(トランスポンダ)は大幅に単純化、軽量化された。現代でも使われる二次レーダー(SSR:Secondary surveillance radar)という語が生まれたのがこの頃である。ただし、再輻射電波の映像をブラウン管の画面で識別することは困難を極め、英国の警戒監視網における大きな弱点だった[4]。
トランスポンダの応答波は時代が下るとともにより多くの情報を含められるようになり、この技術は1980年代には航法装置の位置情報を伝送することで地上の管制レーダーや管制官に頼ること無く相互の位置を確認する空中衝突防止装置(TCAS)にも応用されている。
CIP

1991年の湾岸戦争でアメリカ軍の地上部隊は、装備する暗視装置が中東の砂漠の砂塵で十分に機能せずに同士討ちが発生した[5]ことを省みて、戦闘識別パネル(英: Combat Identification Panel, CIP)と称する装備を導入した。これは輻射熱を低下させるテープを貼付したパネルを羽板状に組み、車体の上面や側面などに装備すると、サーモグラフィーの画像で周囲よりも相対的に低温となり暗い領域として表示されるため、敵味方の明確な識別を容易にしている。
2003年のイラク戦争で初めて実戦に用いられ、ほぼすべての多国籍軍の車両で後部や砲塔の側面に装備され、高機動多用途装輪車両などは運転席と助手席のドアを加工して装備した。
脚注
注釈
出典
- ^ a b INC, SANKEI DIGITAL (2015年10月28日). “【軍事ワールド】韓国軍が米軍の標的になる?主力戦闘機、敵味方識別装置の更新ならず…「韓国イズム」の悪しき弊害”. 産経WEST. 2019年1月8日閲覧。
- ^ a b 第2版, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,世界大百科事典. “敵味方識別装置(てきみかたしきべつそうち)とは”. コトバンク. 2019年1月8日閲覧。
- ^ デイトン 上 1998, p. 243.
- ^ デイトン 上 1998, p. 250.
- ^ “The M1 Abrams: The Army tank that could not be stopped - the 13th paragraph”. NBC NEWS. 2014年2月5日閲覧。
参考文献
- デイトン, レン 著、内藤一郎 訳『戦闘機:英独航空決戦』早川書房、1983年。ISBN 4152051728。
- デイトン, レン 著、内藤一郎 訳『戦闘機:英独航空決戦 上』早川書房〈ハヤカワ文庫〉、1998年8月1日。 ISBN 978-4150502263。
- デイトン, レン 著、内藤一郎 訳『戦闘機:英独航空決戦 下』早川書房〈ハヤカワ文庫〉、1998年8月1日。 ISBN 978-4150502270。
関連項目
外部リンク
敵味方識別装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 07:36 UTC 版)
敵味方識別装置(IFF)は戦場で敵と味方を識別し同士討ちを防ぐ目的で使用される。
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