耐食性
耐食性
腐食に耐える性能。防錆性も同義語。ボディシェルの場合、錆びを防ぎ美しさを保つため電着塗装、中塗り塗装、上塗り塗装をする。そのほか耐食性を上げるために犠牲腐食をさせて本体を守ったり酸化膜で覆ったりする方法がある。錆びると板厚減少や穴あきが起こる。板厚減少は耐久強度、大荷重強度、衝突安全、剛性、振動、騒音などの劣化を招く。穴あきは水、外気、排ガス、埃、砂、音などの浸入が起こる。
耐食性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/21 15:54 UTC 版)
「オーステナイト系ステンレス鋼」の記事における「耐食性」の解説
ステンレス鋼の組織別種類の中で、オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性は高い部類に位置付けられる。具体的な鋼種や製造過程によって異なるが、おしなべて言えば、オーステナイト系の耐食性はフェライト系とマルテンサイト系より高く優れる。オーステナイト系の標準鋼種である SUS304 は中位レベルの耐食性を持つ。ステンレス鋼の耐食性は材料表面に存在する不働態被膜によるものであるが、クロム・ニッケル・鉄合金の不働態被膜は、クロム・鉄合金よりも高い修復力を持つ。一般的に、不働態になるためには臨界不動態化電流密度と呼ばれる電流ピークを超える必要がある。ニッケルがクロム・鉄合金に添加されると、臨界不動態化電流密度が下がり、再不動態化しやすくなる。 ステンレス鋼は優れた耐食性を持つが、使用環境によってはステンレス鋼でも腐食は発生する。全面腐食については、SUS304 相当の材料であれば大気中、淡水中、中性塩環境中、アルカリ環境中で良好な耐食性を示す。硫酸中では、一部の硫酸濃度範囲に対してのみ耐えることができるが、ほとんどの濃度の硫酸に対して腐食が進む。モリブデンや銅を加えると、硫酸に対しても耐食性が増す。304系よりも耐食性に優れたオーステナイト系鋼種としては、18Cr-11Ni-2Mo の316系が広く利用されている。モリブデンを 2–3% 添加してニッケル含有量を高めた鋼種で、304系では厳しい環境で利用される。316系の組成の例を、以下の表に示す。 高耐食系オーステナイト系の組成例規格材料記号CMnPSSiCrNiNMoISO X5CrNiMo17-12-2 0.07以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 1.00以下 16.5–18.5 10.0–13.0 0.11以下 2.0–3.0 EN 1.4401 0.07以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 1.00以下 16.5–18.5 10.0–13.0 0.11以下 2.00–2.50 ASTM 316(S31600) 0.08以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 0.75以下 16.0–18.0 10.0–14.0 0.10以下 2.00–3.00 JIS SUS316 0.08以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 1.00以下 16.00–18.00 10.00–14.00 - 2.00–3.00 ステンレス鋼の腐食において特に問題になるのは、孔食や粒界腐食といった局部腐食である。孔食とは、材料の一部が小さな穴状に腐食が進む腐食形態である。孔食に対する耐性を材料ごとに比較する指標として耐孔食性指数(PREN)がある。耐孔食性指数の計算式の1つは PREN = Cr + 3.3 × Mo + n × N という形で与えられる。ここで、Cr, Mo, N は各元素の質量パーセント濃度で、n は鋼種や研究者によって異なる係数である。n の値が大きいほど窒素 (N) の含有量に比して耐孔食性が向上する。フェライト系が n = 0、二相系が n = 16 が適当とされるのに対して、オーステナイト系では n = 30 が適当とされ、オーステナイト系では窒素添加によって大きな耐孔食性向上が期待できる。また、オーステナイト組織はモリブデン (Mo) と窒素 (N) の固溶限が大きいため、耐孔食性指数を高くすることできる。 粒界腐食とは、組織中の結晶粒界が優先的に腐食する現象で、オーステナイト系では鋭敏化によって引き起こされる。鋭敏化とは、オーステナイト系が 450 ℃ から 850 ℃ の温度に晒された時に、基地中のクロムがクロム炭化物となって析出し、クロム欠乏層が生じて耐食性が低下する現象である。一般に、炭素はクロムと結合しやすい性質を持っている。常温のオーステナイトでは過飽和に固溶されている炭素が、加熱されることでクロムと結合し、クロム炭化物 (Cr23C6) が結晶粒界に析出する。組成的に鋭敏化を防ぐには、炭素量の極小化、あるいはチタンやニオブなどの合金元素添加が有効である。後者のような合金元素を添加することで、優先的にそれら添加合金元素と炭素の炭化物を形成させ、クロム炭化物の析出を防ぐことができる。このようなチタンやニオブを添加することで鋭敏化への対策を取った鋼種を、安定化オーステナイト系ステンレス鋼と呼ぶ。 また、オーステナイト系は応力腐食割れが起きやすい。応力腐食割れへの感受性に関していえば、オーステナイト系の応力腐食割れ感受性はフェライト系よりも劣り、塩化物イオン環境で発生する。オーステナイト系の湿食事故の原因として、応力腐食割れの割合が高いことが知られている。オーステナイト系を使用した熱交換器などで、高温高圧の塩化物水溶液によって応力腐食割れが発生する事例がある。また、鋭敏化したオーステナイト系は、粒界腐食だけでなく応力腐食割れも起こしやすくなる。
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耐食性
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「オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼」の記事における「耐食性」の解説
クロムを高濃度に含むため、二相系は高い耐食性を有する。孔食や隙間腐食に対して、オーステナイト系の316系などと比較しても高い耐食性を持つ。二相系の耐孔食指数(Pitting Resistance Equivalent Number, PERN)には、 PREN = Cr + 3.3 × (Mo + W) + 16 × N が用いられる。ここで Cr, Mo, W, N は、クロム、モリブデン、タングステン、窒素の質量パーセント濃度である。二相系のPRENは、汎用二相系で約 35 前後、スーパー二相系で 40 以上、ハイパー二相系で 50 近い値に設計されている。臨界孔食温度についても、オーステナイト系の304L系や316L系と比較して汎用二相系の方が高く、孔食形成開始に対する抵抗が大きい。 オーステナイト系は最も標準的に使われているステンレス鋼種だが、塩化物イオン環境下では応力腐食割れの懸念が強い欠点がある。一方、二相系の応力腐食割れに対する耐性は高く、この点が二相系の長所の一つである。耐孔食性が高いことが耐応力腐食割れ性につながっているという指摘もあるが、二相系の耐応力腐食割れ性が高い原理の詳細はまだ不明である。また、高温度下では耐応力腐食割れ性は低下する。
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耐食性
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「析出硬化系ステンレス鋼」の記事における「耐食性」の解説
析出硬化系ステンレス鋼の特色は高強度でありながら、耐食性を並存させている点にある。高強度のステンレス鋼としては、析出硬化系の他に、焼入れ・焼戻しで強化するマルテンサイト系ステンレス鋼がある。ただし、マルテンサイト系ステンレス鋼の耐食性は、ステンレス鋼の中で最も劣るという欠点があった。それと比較して、析出硬化系の耐食性は、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼である304系に近いレベルを実現できる。 析出硬化系の中では、オーステナイト系が耐食性に優れ、マルテンサイト系とセミオーステナイト系の耐食性はやや劣る。マルテンサイト系の 17-4PH の耐食性は、304系の耐食性と多くの環境下で同レベルである。セミオーステナイト系の耐食性は、304系と比較するとやや劣るといわれる。耐食性の向上には、クロム、モリブデン、銅などの添加が効く。しかし、マルテンサイト変態を利用するマルテンサイト系とセミオーステナイト系には添加元素の制約があるので、これらの耐食性向上元素を自由に添加しづらい。それと比較して、オーステナイト系には添加元素の制約が少なく、耐食性向上がしやすい。
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耐食性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 06:06 UTC 版)
「フェライト系ステンレス鋼」の記事における「耐食性」の解説
上記のとおり、ステンレス鋼の耐食性はクロムの含有によって現れる。クロムによって鋼表面に不働態被膜とよばれるクロム酸化物の緻密で安定な膜が形成され、表面を腐食から保護する。クロム含有量が増えるほど、耐食性および耐酸化性は向上する。付与される合金元素によるが、フェライト系ステンレス鋼の耐食性はオーステナイト系ステンレス鋼と大雑把には同等といえる。ただし、JISにおけるフェライト系の代表的鋼種であるSUS430とJISにおけるオーステナイト系ステンレス鋼の代表的鋼種であるSUS304を比較すると、孔食に対してはSUS430の方が耐食性に劣る。 ステンレス鋼の耐食性は、組織の結晶構造がオーステナイトであるかフェライトであるかよりも、含有される元素の影響が大きい。影響の大きな合金元素は主にクロムとモリブデンで、それらの添加量がフェライト系の耐食性を主に左右するといえる。同じ量のクロムとモリブデンが添加されたオーステナイト系とフェライト系であれば、それぞれの耐食性はおおむね同程度といえる。ただし、局部腐食の場合は、溶接、加工、熱処理などのあとの金属組織の状態も影響する。モリブデンの添加は、とくに孔食と隙間腐食に有効である。モリブデンを含有したフェライト系の鋼種には、SUS304を上回る耐孔食性を持つものもある。 一般に広く使われているオーステナイト系ステンレス鋼は、ハロゲン化物イオン(第17族元素の陰イオン)を含む水溶液中で引張りの力を受けるとき応力腐食割れの可能性がある。フェライト系ステンレス鋼はこのような塩化物応力腐食割れの可能性が小さいという長所を持つ。応力腐食割れに対する抵抗は、組織の結晶構造よりも添加元素の影響が大きいと考えられている。42%濃度塩化マグネシウム沸騰溶液中での鉄・クロム・ニッケル合金の実験結果によると、ニッケルの含有量が極小あるいは一定以上になると応力腐食割れが起こりにくくなる。フェライト系は基本的にはニッケルを含有しない。これがフェライト系の応力腐食割れ抵抗が優れている理由の1つと考えられている。
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耐食性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/20 23:42 UTC 版)
「オーステナイト系ステンレス鋼#耐食性」、「フェライト系ステンレス鋼#耐食性」、「マルテンサイト系ステンレス鋼#耐食性」、「オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼#耐食性」、および「析出硬化系ステンレス鋼#耐食性」も参照 ステンレス鋼の耐食性は、化学組成、組織の状態、熱履歴によって変動する。優れた耐食性を持ち、「さびない材料」のイメージを一般に持たれるステンレス鋼だが、実際の耐食性は鋼種によって幅広い。海水でも錆びない高耐食なものから、野外に放置すると数日で錆び出すものまで存在する。 特に、耐食性の度合いの決定には化学組成の影響が大きく、各々のステンレス鋼の実際の耐食性は主に化学組成によって決まるといえる。ステンレス鋼の耐食性を向上させるには、有効な合金元素の添加と不純物となる元素の減少が有効である。 主要組織別の分類でいえば、オーステナイト系の耐食性が優れ、マルテンサイト系の耐食性は悪いと、大まかに評される。ただし、このように主要組織別分類で耐食性を大まかに評価できるのは、主要組織が化学組成と熱履歴によって決まっているからである。マルテンサイト系の例でいえば、マルテンサイト系はマルテンサイト組織を得るために、耐食性に有効なクロムを増やすことと耐食性上は不純物となる炭素を減らすことが両立しない。結果的に、マルテンサイト系の耐食性は他のステンレス鋼よりも一般的に劣る。
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