でんちゃく‐とそう〔‐トサウ〕【電着塗装】
電着塗装
ビヒクル(塗料中で顔料を分散している液状成分)をイオン化して、希薄な水溶液または水分散体とした塗料中に被塗物と電極を浸して通電し、塗料を電気泳動により被塗物上に移動、析出させて塗膜を形成させるものをいう。吹付け塗装に比べ(1)塗着効率が高く防錆効果が大きい(2)電極の調整で膜厚のバラツキを少なくできる(3)電圧、通電時間の調整で膜厚を管理しやすい(4)析出生成した塗膜は不溶化しており、水洗するのみで焼付け工程に入ることができる、などの特徴をもち、自動車、電気をはじめとして広く使用されている。自動車では塗料をプラスにイオン化し、クルマを陰極として通電するカチオン電着塗装を使用している。単に電着ともいう。
電着塗装
電着塗装の原理は電気めっきと似た方法であり、水溶性塗料を満たした塗料浴中に金属製の被塗物を浸し、これを陽極又は陰極として直流電圧をかけると、塗膜形成成分が負又は陽に荷電し、被塗物表面に電着する。こうして塗膜を形成する方法である。被塗物を陽極とする場合をアニオン電着、陰極とする場合をカチオン電着と呼ぶ。
電着塗装は他の塗装法に比べ、複雑形状でも均一な膜厚が得られるので防食性が高い塗装が行え、膜厚の管理も用意である。また塗料ロスがなく、衛生的で公害対策面から利点が大きい。これらのことから自動車部品や家電製品、サッシなどの建材への塗装方法として工場ライン生産で使われている。
欠点としては、設備が大型化すること、被塗物は導電性に限られること、厚膜化が困難なことなどがある。
カチオン電着(cation electropainting)は被塗物を陰極とし、塗膜成分を負に荷電させて行うが、この場合塗料浴中へ金属イオンが溶け出さないため特に防食性に優れている。これを利して自動車ボディのプライマー塗装として利用されている。
適している分野・使用事例
アニオン電着塗装=自動車、自動車部品、家電製品、サッシなど建材。カチオン電着塗装=自動車ボディ(プライマー)など防食性塗装。
電着塗装
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/21 18:15 UTC 版)
電極と被塗物にそれぞれ違う極性の印加電圧を負荷して、その間に塗料を満たした状態で直流電流を流し塗装する方法。一般的にアニオン(陰イオン)電着塗料とカチオン(陽イオン)電着塗料の2種類がある。現在の防食を目的とした電着塗料のほとんどは、カチオン電着塗料に置き換わっているが、アルミサッシや家電製品にはアニオン電着塗料が使用されている。 電気分解の際に被塗物が陽極となるアニオン電着では界面が酸性雰囲気になるため防食に不利であると言う説が定説だが、必ずしもそうではないことは広く知られている。 塗料は極性溶媒中に分散された状態であり、一般に普及しているカチオン/アニオン電着の析出原理は、水を電気分解したときに発生する水酸化物イオンまたはヒドロキシルイオンを利用して中和反応で電気的な安定性を失った塗料粒子が凝着するというものである。特殊なものでは電解活性型カチオン電着があり、マイケル付加反応を利用した電析で絶縁塗料等に用いられている。 塗料粒子が顔料でサブミクロン(1ミクロンの十分の一)単位,エマルションで数十ナノメートル単位の粒子であるところから、限外濾過膜を利用してろ過し、ろ過水を洗浄水として利用して塗料を回収する回収水洗システムが一般的に普及している。 塗料のタイプは防食用にエポキシ樹脂,耐候性用にアクリル樹脂を用いたものが一般で、そのハイブリッドタイプも実用化している。 カチオンタイプは酸で中和して安定化させており、アニオンタイプはアミンで中和して安定化させているためそれぞれ特有の臭気がある。 焼付型の塗料であり、多くがブロックイソシアネートを硬化剤としている。触媒として有機スズが用いられてきたが、近年欧州環境規制に適合するため遷移金属等を用いた物に変わろうとしている。 塗膜の膜厚や塗装管理しやすいことから、人件費節約目的で電着塗装を採用するケースが増えてきている。
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