給特法の影響
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「学校における働き方改革」の記事における「給特法の影響」の解説
教職員の長時間労働の根本的な原因には、昭和46年制定の「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)で時間外労働が「自主的な活動」とされている点が指摘されている。この法に基づき公立学校の教員には、時間外勤務手当及び休日給が支給されない代わりに、給料月額の4%に相当する教職調整額が支給されている。 義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置の教職調整額については、各自治体の条例で定める。東京都においては「義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例」で規定され、「給料月額の百分の四に相当する額の範囲内において人事委員会の承認を得て教育委員会規則で定める額」とする。仮に教職調整額を廃止し残業代を支給した場合、平成28年度調査時点で国庫負担金で3,000億円、地方負担分も含めると9,000億円が必要とされる。 戦後に労働法関連の諸法規が制定された際に教師も労働者の一員として基本的には労働基準法が適用されることになり、8時間労働制を定める労基法32条、時間外労働の手続や残業手当について定める36,37 条も適用され残業に対しては手当が支払われるべきものとされたことが影響している。当時国の指導にも関わらず現実には残業手当が支払われなかったことが起こり、残業手当請求訴訟が繰り返し提起され、判決は法律の規定に従って手当の支払いを命じた。これに対応し、文部省は教師の勤務状況を調査し残業の実態を把握し、平均的時間数(月間8時間程度)に見合うものとして「教職調整額」を基本給の4%とし、当時としては平均的な残業分の手当てが含まれた。この法令を研究した萬井隆令は、現代の状況を指し、教師に精神障害が多発しているが、長時間労働も一因と考えられるとの意見がある。 また、給特法とは関係なく労働基準法が適用となるはずの私立学校教員も、その多くで残業代が払われていないとの指摘もある。 ただし現状でも公立学校教員の勤務時間その他の勤務条件は、一部の規定を除き、労働基準法が適用される。具体的には勤務時間は給与負担者である各都道府県及び政令市の条例等によって定められる。使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならないと規定されており、教育公務員はその制約を受ける。 昭和46年制定の「給特法」では、公立学校の教育職員に時間外勤務を命じるには、次の超勤4項目に該当する場合のみ公務のために臨時の必要がある場合、健康及び福祉を害しないように考慮しなければならないとされており、それ以外は労働基準法36条協定を必要とする。「超勤4項目」とは次に該当するもので、「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令」で定められている。 イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務 ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務 ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務 ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務 2019年4月からの労基法改正により、時間外勤務をする場合には上限規制の前提となる36協定締結への対応が各事業所で求められることとなり、地方自治体でも協定が必要となる。なお、日本労働組合総連合会2019年調査では「会社が残業を命じるためには、36協定の締結が必要」の認知率は55%であり改正労基法の4月施行後も課題残り、「勤め先で 36 協定が締結されている」59%に留まるとしている。 一方で、昭和23年3月施行の政府職員の俸給等に関する法律に教員はその勤務の特殊性から、一応1週48時間以上勤務するものとして一般公務員より有利に切り替えられ、また同年5月には政府職員の新給与実施に関する法律制定され、ここでは調整号俸という形で一定の基礎号俸の上に1,2号俸を積み上げている。ここで超過勤務は支給されないこととなった。 なお、公立学校教員の給与は、市町村立学校職員給与負担法により都道府県が負担し、その半額は国庫が負担となっている。ただし兵庫県明石市では小学校1年生の教員国基準1クラス35人を、市独自基準で人件費を負担して30人学級にしているところもある。更に、昭和49年施行となっている学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法では、一般公務員より教員の給与を優遇する措置が取られてきた経緯がある。しかし現職の教員からは、人材確保法で25%引き上げられた優遇措置も不況による教員への風当たりによって経費削減が行われた結果、文部科学省資料では一般行政職と比較して2021年現在では2%程度高い程度で、それに4%が加わる現状との見解が示されている。現在の教員残業代を実体化すると、国庫負担ベース3,000億円を超え、自治体負担分を合算すると総計では9000億円と文部科学省により試算されている。実質、教員1人あたり毎月10万円程度の残業未払との指摘がある。
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