禁止ルール適用中の事例(2003 - 2010)
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「チームオーダー」の記事における「禁止ルール適用中の事例(2003 - 2010)」の解説
2005年アメリカGP 所謂「インディゲート」が起き、ミシュランタイヤを履いた全チームが事実上のボイコットを起こしたレース。残ったブリヂストンタイヤ勢であるフェラーリ、ジョーダン、ミナルディの6台でレースを行い、フェラーリのミハエル・シューマッハのピットインにより一時はチームメイトのルーベンス・バリチェロが首位を走行していたが、51周目にミハエルが再度ピットインしてコースに出た直後、バリチェロと並ぶ事に成功する。その直後の第1コーナーでバリチェロはコースから外れたグラベルゾーンに危険回避の為に押し出される形となった。その時のチームラジオは「クラッシュしてリタイアをすることが無いように」と命令を出され、この交信以降はミハエルもバリチェロも共にプッシュをせず、ペースを落とした安全な走行でワンツーフィニッシュを果たした。シーズン通して戦闘力不足に苦戦を強いられたフェラーリとミハエル・シューマッハにとって2005年唯一の勝利。 2007年モナコGP マクラーレンのフェルナンド・アロンソとルイス・ハミルトンがマッチレースを展開し、アロンソが優勝した。ハミルトンは燃料搭載量を多めにしてスタートし、2度目のピットストップを遅らせて順位を逆転しようとしたが、チームは予定よりも早めにハミルトンをピットインさせた。ハミルトンはレース後の記者会見で「僕のカーナンバーは2番だ。僕はナンバー2ドライバーだからね」と発言。地元イギリスのメディアを中心に「アロンソを勝たせるためハミルトンに作戦変更を命じた」というチームオーダー疑惑が取りざたされた。FIAはレギュレーション違反に該当するか調査し、マクラーレンの行為は合法であると発表した。 2008年シンガポールGP(クラッシュゲート) F1史上初のナイトレースとなった2008年シンガポールGPでの事例。ルノーのネルソン・ピケJr.が14周目のターン17においてチーム側の指示により意図的なクラッシュを喫し、これによりチームメイトのフェルナンド・アロンソへの作戦が有利に働き、優勝を果たした。当初は予選15位からの、そして当時のルノーの脆弱性からみて優勝はおろか入賞すら絶望的な局面からの優勝はアロンソを大いに祝福し、ピケJr.に対しても偶発的なクラッシュが計らずもアロンソの上位進出に大いに貢献したと賞賛した。ところが、その後の多くのレースでピケJr.のレースがチーム側が満足出来る形でなかったという理由で、翌年の2009年のシーズン途中ハンガリーGPを最後に解雇された。その約1ヶ月後、ブラジルのテレビ局ヘジ・グローボの中で、昨年のシンガポールGPでのクラッシュは意図的なものであったと発言。当初は、この事件が解雇に対する腹癒せであるかのように風評したが、後にピケJr.本人が7月30日にFIAに対し供述書を提出していた事が分かった。供述によるとチーム首脳陣のフラビオ・ブリアトーレ、パット・シモンズ、そしてピケJr.との三者間で事前に、クラッシュを行う場所や周回数を打ち合わせたとされる。事実、アロンソは11周目にピットに入り、その3周後のターン17においてピケJr.はクラッシュをした。この「予定通り」のクラッシュによってコース上にマシンのパーツ破片が散乱し、又、ストリートコースでもあった為、セーフティカーが導入されるのが必至だった。各マシンがピットに入る前にセーフティカーが導入されれば、先にピットに入ったアロンソが有利になるという公算となり、そのチーム側の思惑通りの結果をもたらしアロンソが優勝を果たした。事態を重く見たFIAは世界モータースポーツ評議会の臨時会議にルノー首脳陣を招聘することをプレスリリースで表明。供述書の内容、ターン17におけるピケJr.のテレメトリデータ(明らかにアクセルを過剰に踏み込み、意図的なスピンをしているのが分かる)、あるいは無線内容や命令に従わない場合は解雇などの措置を取るという脅迫じみた内容など状況証拠が揃っていた。しばらく、ルノー陣営とピケ父子との争いがあったが、9月16日にルノーは事実上罪を認め、ブリアトーレとシモンズがチームから離脱したことを発表。ブリアトーレはF1界から永久追放処分、シモンズは5年間の追放処分を受けたが、後に2012年までの謹慎処分に緩和された。 2010年ドイツGP スタートでトップに立ったフェラーリのフェリペ・マッサとそのすぐ背後を追うチームメイトのフェルナンド・アロンソという展開になった。フェラーリのマッサ側のエンジニアであるロブ・スメドレーはチーム無線でマッサに対し「OK, so, Fernando, is, faster, than, you. Can you confirm you understood that message?(フェルナンドは君より速い。この意味が解るか?)」と、一語一語区切って強調した口調で伝える。その直後のヘアピンでマッサは若干スローダウンし、アロンソに先頭を譲った。後にスメドレーは「Good lad. Just stick with it now. Sorry.(よくやった。そのままにしておいてくれ。すまない。)」とマッサに対して任務を遂行したことに対する労いの言葉を無線で伝えた。レースはそのままアロンソとマッサの1-2フィニッシュとなったものの、レース後の記者会見では先述の通りあまりにも露骨な指示はチームオーダーそのものではないか?と、記者から激しく責め立てられる事となった。 レース後、スチュワードはこの行為をチームオーダーであると認め、フェラーリに対して10万ドルの罰金を科した。中盤戦である上、このレース開始時点でアロンソとマッサに31点の得点差があった事もあり、アロンソの逆転チャンピオンを狙いたいフェラーリの思惑が正直に出てしまった結果となった。 前述にあるように、2003年のチームオーダー禁止以降、チームが意図的にチームオーダーを行う場合、チーム内で無線暗号を決めるなり、わざとピットの順番をずらして前にいかせるなどという手が常套手段となっていたが、今回のフェラーリは堂々と指示を無線に乗せてしまった上、マッサの譲り方があまりにもあからさまだったために問題となってしまった。又、この事件は様々なF1関係者に対してチームオーダーの是非を問う切っ掛けにもなった。この問題を深刻に受け止めたFIAは、9月8日にパリで開催される世界モータースポーツ評議会(※:World Motor Sport Council WMSC)の特別公聴会にフェラーリを召喚し最終的な審議を問う事を発表した。9月8日、フェラーリ関係者はパリのコンコルド広場で開かれた特別公聴会に出席した。尚、アロンソ、マッサはイタリアGPを控えているのもあってビデオリンクでの参加であった。審議の結果、先述のドイツGPでの行為はチームオーダーに該当し、10万ドルの罰金は認めながらもフェラーリに対してそれ以上のペナルティを与えないものとした。又、この件に関してWMSC側もスポーティングレギュレーション第39条の1項を見直す必要がある事を認め、将来的にチームオーダーがルール改訂によって消滅する、あるいは何らかの形によって合法になる可能性がある事を示唆していた。
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