監護
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監護(かんご)(英:custody、独:Betreuung) とは、ある程度の期間にわたって継続的に、保護が必要な者(本人)がその福祉(最善の利益 best interest ともいう。)に適う日常生活を送れるよう配慮する責任をいう。意味の似た言葉に「看護 nursing」や「介護 care」があるが、「看護」や「介護」は病気やけがを患った者の身体動作を物理的に補助することを意味する(そのうち未治癒の患者を一時的に補助することを「看護」と、症状が固定した患者を継続的に補助することを「介護」と呼び分けることが多い。)のに対して、「監護」は法的責任を意味する[1]ので、本人を物理的に補助しなくても「監護」をしたことになる場合はある。
監護をする者(監護者)は、「保護者 protector」(未成年者 minor を監護する者)、「後見人 custodian」(無能力者 incompetent person を世話する者)などと呼び分けられる。未成年者の監護と無能力者の監護とでは、目的が異なる。成人である無能力者の最善の利益とは、本人が自らの意思決定に沿った日常生活を送れることであるから、無能力者に対する監護は、本人が自らの意思決定に沿った日常生活を送れるように、意思決定を支援するとともに、意思決定に沿った日常生活を阻害する要因に対する合理的配慮をすること(ノーマライゼーション normalization)が目的となる[2]。これに対して、未成年者の最善の利益とは、健全な社会人として成長することであるから[3]、本人の意思決定を支援することだけでなく、本人を教育、指導、監督することも未成年者の監護の目的に含まれる。
未成年者の監護
未成年の子に対しては、原則として親が監護権を有する(民法820条)。監護権は親権を構成する権利(義務)のひとつであり、「財産管理権」と対比させて「身上監護権」ともいう。両親が離婚した場合は、両親のいずれかにこれを帰属させなければならない。この場合、「財産管理権」を有する法定代理人と「身上監護権」を有する監護者が異なる場合がありうる(民法第797条など参照)。
児童福祉法では、児童相談所や児童福祉施設の長は、一定の場合に、児童に対して監護に関し必要な措置(監護措置)をとることができる(児童福祉法32条の2第2項、47条3項)。
2017年(平成29年)刑法改正により、18歳未満の者に対して、その者を現に監護する者(養親に加え、養護施設等の職員が含まれ得る)であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為に及んだ者は、強制わいせつの罪に問われる(監護者わいせつ罪 刑法第179条第1項)、それが、性交等に至った場合には、強制性交等罪が成立する(監護者性交等罪 刑法第179条第2項)こととなった。なお、監護者わいせつ罪および監護者性交等罪については、脅迫・暴行がなく、または同意があったとしても罪の成立を妨げない。
成年被後見人等の身上監護
成年後見人の職務には、財産管理と身上監護があるとされている[4]。
脚注
- ^ ドイツ民法典1901条1項。なお、Betreuung の日本語訳は「世話 /sewa/」をあてることが多い。
- ^ 障害者権利条約5条4項がそのことを裏から規定する。障害があることを理由とするいかなる差別も許されてはならないが(同条約4条1項)、ノーマライゼーションを目的とする合理的配慮は差別に当たらない。障害者に対する監護は、ノーマライゼーションを目的とする場合にのみ正当化されるのである。
- ^ 子どもの権利条約29条1項
- ^ 裁判所「成年後見制度についてよくある質問」参照
関連項目
監護者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 00:17 UTC 版)
本条項の主体は、(18歳未満の者を)「現に監護する者」であり、真正身分犯である。 「現に監護する者」の範囲は、民法第820条による親権の効果としての「監督保護」を行う者を言う。この「監督保護」は、必ずしも法律上適正な親権や監護権に基づく権利行使である必要はなく、親権や監護権による監督保護と事実上同程度のものであれば足りる。具体的に整理すると以下の者が該当しうる。また、親権と監護権は、法定または事実上を問わず、一方があれば足りる。 法定の親権や監護権の行使父母(実父、実母)民法833条の規定により法定代理する祖父母等の親権者を含む 養子縁組による養親(事実上の養親とみなし得る継親を含む) 親権または監護権を行う未成年後見人(法人である場合にはその職務に服する者) 事情により継続的に監督保護を行う事実上の代理者継続的に監督保護を行う祖父母、伯叔父母、継親、成年の兄弟姉妹など 親権・監護者不在などの場合に法定の代理または法制度に基づき親権・監護権を実施する者里親制度による里親 児童福祉施設の長およびそれに服する施設職員(養護施設等) 家庭裁判所審判など法定事由により親権および監護権の両方を喪失した者や、未成年後見または児童福祉施設等の職を離れた者に対する主体構成要件該当性については議論がある。また、身分犯として、法定上もしくは事実上親権や監護権を行使し得る立場であれば足り、性的行為時点において親権や監護権の実現となる行為を現に行っている必要があると言う事はできない。例として同居または別居の別は直ちに構成要件該当性に影響しない。入寮や下宿のために別居している場合はもちろんのこと、国外赴任や留学などの理由で長期不在により別居している場合も、構成要件該当性があり得る。扶養の義務者(民法第878条)および実際の扶養行使者が、直ちに法定または事実上の親権・監護権行使者となる訳では無い。経済的関係に乗じた行為については児童買春・児童ポルノ処罰法で処罰される。 児童福祉法第6条や児童買春・児童ポルノ処罰法第2条の規定には「現に看護する者」との文言がある。 一方で、スポーツのコーチや教師等は、この立場から除かれると解されている。「現に監護する者」の範囲に関しては、次の衆議院法務委員会での政府参考人の答弁(抄)によれば、以下の場合が想定されている。 2017年(平成29年)6月7日衆議院法務委員会での林眞琴政府参考人の答弁 …監護するというのは、民法八百二十条に親権の効力と定められているところと同様に監督し、保護することをいいまして、十八歳未満の者を現に監護する者とは、十八歳未満の者を現に監督し、保護している者をいいます。 本罪の現に監護する者に当たるか否かは個別の事案における具体的な事実関係によって判断されることとなりますが、民法における監護の概念に照らしまして、現にその者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点でありますとか生活上の指導監督などの精神的な観点、このようなものから依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められるということが必要であると考えております。 (中略)例えばスポーツのコーチでありますとかあるいは教師など、こういった者についてはやはり通常は、生徒等との間に生活全般にわたる依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められないことから、現に監護する者に当たらない場合が多いと考えております。
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