監護教育権(かんごきょういくけん)
監護教育権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 17:08 UTC 版)
親権者は、子の監護及び教育をする権利を有し義務を負う(820条)。本条は監護教育権の基本的内容を定めた包括的規定で、平成23年民法改正(平成23年6月3日法律第61号)により「子の利益のために」の文言が追加された。親権のうち子の身上に関する権利であり、「監護(監護権)」は主として肉体的成長、「教育(教育権)」は主として精神的発達を図るものであるが、ともに不可分の関係にあるとされる。 子の監護教育の内容・程度は親権者が自由に決定しうるが、社会政策などの観点から一定の制限を受ける(教育基本法第4条、学校教育法22条・39条)。 子どもの医療に対する親権者等の同意権(医療同意権)も、身上監護権の一部だとされる。 居所指定権(821条) 子は、親権者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。これを認めなければ監護権の行使が事実上不可能となるためである。親権者は自由に子の居所を指定しうるが、子の心身の発育に悪影響を及ぼす指定は居所指定権の濫用となる。子が親権者の指定した場所におらず、第三者の下にあるときは民事訴訟により子の引き渡し請求が可能である。ただし、子の自由意思により実母や祖父母の下にとどまっているときは、親権への妨害はないため、妨害を理由とする妨害排除請求はできないこととなり親権者は自ら子を説得する方法しかない(多数説は間接強制を認めない)。なお、児童虐待等の事実があり、子が児童福祉施設や里親の下で生活している場合には居所指定は認められない。なお、人身保護法も参照。 懲戒権(822条) 親権者は、必要な範囲で自ら子を懲戒できる(822条1項)。この規定に基づき、一定の範囲内において、親の子に対する体罰は合法となっている。ただし、社会通念を超える懲戒は親権濫用となり、傷害罪(刑法204条)や暴行罪(刑法208条)等の刑事責任の問題となりうる。なお、平成23年民法改正前の規定では家庭裁判所の許可により入れられる「懲戒場」の規定があったが、これに相当する施設は設けられず、平成23年民法改正(平成23年6月3日法律第61号)により懲戒場に関する文言は削られた。 職業許可権(823条) ここでいう「職業」は営業のほか他人に雇用される場合も含む。なお、未成年者の営業については6条に規定があり、営業を許された未成年者はその営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有することになる(第6条1項)。また、親権者は営業許可を取消したり制限したりもできる(第6条2項)。なお、この規定は児童労働を許可する権限を親権者に与えることができる規定であるが、どんなに低年齢な未成年者であっても親権者は許可することができる。 子の代理権 一定の身分行為につき親権者に法定代理人として代理権が認められている場合がある(認知の訴えにつき787条、十五歳未満の者を養子とする縁組の承諾につき797条)。本来は自己決定に関する事項であるが、子の利益のため必要がある場合として代理権が認められている。
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