盗作・代作
『ギリシア哲学者列伝』(ラエルティオス)第2巻第7章「アイスキネス」 アイスキネスはソーセージ製造人の息子で、ソクラテスの弟子の1人だった。アイスキネスが自分の作品としている対話篇の大部分は、本当はソクラテスの作だ、と言われる。アイスキネスはそれらを、クサンティッペ(=ソクラテスの妻)から得たという。彼が対話篇の1つを読んで聞かせていた時、ある人が「それをどこから手に入れたのだ。この盗っ人め」と言ってあざけった。
『古今著聞集』巻4「文学」第5・通巻111話 チョウネン上人が入唐した時、橘直幹の詩「蒼波路遠雲千里 白霧山深鳥一声」の「雲千里」を「霞千里」に、「鳥一声」を「虫一声」に改変し、「私の作だ」と言って披露した。すると唐の人は「良い詩句だが、『雲千里』、『鳥一声』となっていたら、もっと良かったであろう」と評した。
『劇作家』(チェーホフ) 劇作家が医者を訪れ、心身の不調を訴える。劇作家は毎日12時頃に起き、まずタバコを吸いウォトカを飲み、それからレストランで遅い朝食をとり、ビヤホールへ行き、玉突きをし、夕食をとり、劇場へ行き、サロンへ行き、仮面舞踏会へ行く、という生活だった。医者が執筆について聞くと、劇作家は、「フランスなりドイツなりの作家の作品が手に入ったら、学生を雇って翻訳させ、それを『わたし』が、人名をロシア人ふうにするなどして焼き直すんです。だが、難しい作業でね・・・」と答えた。
『再春』(松本清張) 地方の新人作家・可寿子は、小説のアイデアが浮かばず焦っていた。土地の名流夫人が、「知人の閉経期の女性が久しぶりに出血を見て、再び生理が始まったと喜んだが、実は子宮癌による出血だった」との話を教えてくれたので、可寿子はその話を小説にして雑誌に発表する。しかし、可寿子は知らなかったが、これは大作家トーマス・マンの有名な作品(*→〔若返り〕5の『だまされた女』)の内容だった。評論家が「新人作家の大胆な盗作だ」と非難し、可寿子は作家としての将来を失った。
『草紙洗小町』(能) 小野小町が、翌日の内裏歌合で披露する歌を案じ、「まかなくに何を種とて浮草の浪のうねうね生ひ茂るらん」と口ずさむ。大伴黒主が盗み聞きして、その歌を『万葉集』の写本に書き入れる。歌合当日、小町が「まかなくに」の歌を詠ずると、黒主が「それは『万葉集』の歌だ。小町は盗作した」と訴える→〔濡れ衣〕1a。
『AとBの話』(谷崎潤一郎) AとBは従兄弟どうしで、ともに文学を志し、Aは善の作家、Bは悪の作家となった。数年たつうちにBは才能を枯渇させ、盗みをして監獄に入れられた。Aは「何とかしてBを悪の道から救い、物心両面の援助をしたい」と願う。Bは「本当にそう思うなら、今後君(A)は作品をすべて僕(B)の名前で発表し、その名誉と報酬を僕(B)にくれ」と要求する。Aは「それがBを救い、自分(A)を向上させることになるなら」と考え、Bが肺病で死ぬまで、代作を続ける→〔遺言〕4。
『日本庭園の秘密』(クイーン) カレンは『八雲立つ』をはじめとする数々のすぐれた作品を発表し(*→〔切腹〕8)、アメリカの有名な文学賞を受賞した。しかし実際は、カレンの作品はすべて、彼女の姉エスターが代作していたのだった。カレンが40歳の誕生日を迎える直前に、2人は相次いで自殺した。エスターは青酸カリを服用して。カレンははさみで喉を突いて。
★6.病気の少女の描いた漫画を、その恋人の青年の名前で発表する。
『ブラック・ジャック』(手塚治虫)「ペンをすてろ!」 尿毒症に苦しむ少女・水上ケンが描いた長編漫画『エローラの剣』を、彼女の頼みで、恋人の猪谷青年が出版社へ持ち込み、「猪谷」の名で発表し続ける。3年後、『エローラの剣』は漫画賞を受賞し、取材と執筆依頼が殺到するが、ケンの病状は重く、ブラック・ジャックが、彼女にペンを持つことを禁ずる。猪谷青年は、自分の腎臓をケンに移植するようブラック・ジャックに頼んで、姿を消す〔*ブラックジャックはケンの病気を完治させ、猪谷青年の居場所を教える〕。
品詞の分類
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