留萌駅 - 増毛駅間の廃止
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「留萌本線」の記事における「留萌駅 - 増毛駅間の廃止」の解説
2015年(平成27年)6月26日、JR北海道が発生させた一連の事故・不祥事を受け設置されたJR北海道再生推進会議が「経営安定基金運用益が会社発足時の半分以下になり、収支を合わせるため無理な経費節減を行ったことが安全を低下させる一因となった」「全方位に対してよい顔をする経営と決別しなくてはならない」「鉄道だけで交通手段の確保を論じるのではなくバスなどの交通機関と連携して総合交通体系の一翼を担う必要がある」との認識を示す『JR北海道再生のための提言書』を島田修社長に提出した。なお北海道知事の高橋はるみはJR北海道再生推進会議のメンバーの一人である。翌6月27日、JR北海道幹部が留萌本線沿線自治体と非公式に接触し、留萌本線の全線廃止を打診していたことが『北海道新聞』などにより報道された。JR北海道は特に利用客の少ない留萌駅 - 増毛駅間を、2018年度までに廃止したい意向を示しており、秩父別町の神薮武町長や増毛町の堀雅志町長は廃止を容認、沼田町の金平嘉則町長は存続を求めていた。 2015年8月10日、JR北海道は留萌市および増毛町に、特に利用者が少ない留萌駅 - 増毛駅間16.7kmを2016年(平成28年)度中に廃止することを留萌市長と増毛町長に伝達した。また、JR北海道はホームページで同区間の鉄道事業廃止についてのプレスリリース内で留萌駅 - 増毛駅間の輸送密度と収支を公表。1987年(昭和62年)の480人/日から、2014年には39人/日に大幅に利用客が減少していることや、収入が700万円に対し、年間1億6,000万円の赤字が出ていることなどを挙げている。 2015年8月11日、留萌市議会が留萌線検討対策会議を設置した。 2015年9月7日、留萌市議の鵜城雪子が留萌市議会本会議で留萌増毛間路線廃止を市が受け入れた経緯について高橋定敏市長に質疑。高橋は「ある意味ではやむを得ないと判断した」と答弁した。 2015年11月7日、JR北海道再生推進会議による「JR北海道再生のための提言書」発表を受け、北海道知事が学者3名(公共政策、公共交通学、会計学)、交通事業者4名(鉄道1、非鉄道3)、首長4名(中核都市1、路線廃止町2、廃止想定路線町1)を構成員とする地域公共交通検討会議を設置した。 2015年12月9日、留萌市議会留萌線検討対策会議が市長に「留萌本線の存続に向けてスピード感を持って力強く取り組む」ことを内容とする要望書を提出。同日、同会議が「安心して住み続けられる地域の公共交通としての鉄道交通網の確立を求める」ことを内容とする要望者を、JR北海道常務山口力に提出した。 2016年(平成28年)2月17日、会計検査院は「経営安定基金運用収益への依存度が高いJR北海道及びJR四国では、景気の後退等の外部的な要因の影響を受けている状況が見受けられた」と指摘した上で、「輸送密度が低迷している線区等の経営状況を提示できるように整理しておくこと」「多額な経営安定基金資産の時価評価差額については、修繕や設備投資を計画的に行うための財源とする」など、廃止路線議論環境の整備と基金取り崩しを財源とする設備投資を求める「北海道、四国、九州各旅客鉄道株式会社の経営状況等についての報告書(会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への随時報告)を公表した。 2016年4月8日、JR北海道は留萌駅 - 増毛駅間の最終運行日を「2016年12月4日」とする意向を増毛町に提案し、増毛町は「生徒はすべてバス通学となり、まちの過疎化で利用者は激減し、鉄道は地域の足としての機能を失った」「観光には大きな痛手だが受けざるを得ない」としてそれを受け入れた。同月18日には留萌市も「極度に利用の少ない路線で安全性を保つのは厳しい」として廃止に同意した。同月28日、JR北海道は留萌駅 - 増毛駅間の鉄道事業廃止届を国土交通省に提出した。この届け出では、廃止予定日は届出書提出日の1年後に当たる「2017年4月29日」とされたが、同年6月9日に行った北海道運輸局による聴取の結果、廃止予定日の繰り上げが認められたため、同年6月28日に改めて廃止予定日繰上げの届け出が行われ、予定通り2016年12月4日が最終運行日となり、翌5日が廃止日となることが決定した。 留萌駅 - 増毛駅間の廃止に向けて、2016年(平成28年)6月10日からは留萌駅 - 増毛駅間の記念入場券(硬券)と記念乗車券(常備券)が深川駅・留萌駅で発売されたほか、同年11月3日 - 11月20日の土曜・日曜・祝日(2両編成)と11月23日 - 12月4日の毎日(3両編成)、旭川駅 - 増毛駅間と留萌駅 - 増毛駅間にそれぞれ1往復ずつ臨時列車が設定された(停車駅は旭川駅、深川駅、留萌駅、増毛駅)。 留萌駅 - 増毛駅間の廃止方針が打ち出される直前の2015年(平成27年)10月から、同区間の無人駅で「駅名標広告」や「きっぷ運賃表」複数が盗まれるなどの被害が発生。さらに2016年(平成28年)5月17日には留萌駅構内に停車中の回送列車から運賃表示を行う系統設定器、車内放送を記録している音声合成装置、それを流すための自動放送装置操作盤が盗まれた。これを受けて、留萌警察署は同年11月11日から同署の管轄区域である峠下駅 - 留萌駅 - 増毛駅間の各駅に啓発ポスターを設置した。 廃線後、増毛駅舎などが増毛町に無償譲渡され、旧増毛駅は観光施設として活用されている。それ以外の区間では駅舎やホームの撤去などが進められた。また、留萌駅から信砂川橋りょう(増毛町)までの区間は2021年度(令和3年度)中に留萌市へ無償譲渡される。JR北海道及びJR貨物が施設の撤去費用相当額を負担し、瀬越駅舎や礼受駅舎などの設備が撤去される予定である。なお、廃止区間にあるトンネル内において、2019年(令和元年)にJR北海道がドローンを飛ばす実験を行ったことがある。
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