現像主薬とは? わかりやすく解説

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現像液

(現像主薬 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/19 16:14 UTC 版)

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テテナールの現像液。

現像液(げんぞうえき)は、写真映画現像工程において、フィルム印画紙などの感光材料を現像するための薬液水溶液である[1][2]現像主薬(げんぞうしゅやく)、現像保恒剤(げんぞうほこうざい)、現像促進剤(げんぞうそくしんざい)、現像抑制剤(げんぞうよくせいざい)等の混合溶液である[1][2]

概要

日本語の慣行では、感光したフィルムあるいは印画紙や乾板に対して、最初に行なう作業を現像英語: developing)といい、定着させ乾燥するまでの全工程を総称して現像英語: processing)というが、ここでは前者を現像、後者を現像プロセスとする。前者の現像を行う際の薬液が「現像液」である[1][2]

撮影することによってフィルム・印画紙・乾板等の感光材料の表面の層で感光したハロゲン化銀を、金属銀に還元する作用をもち、この作用を現像と呼ぶ[1]。この役割は現像液のなかでも現像主薬が負う[1][2]。この還元作用によって、フィルム上にできた潜像を可視化する[3]。この現像作業および内容や現像液は、白黒・カラー、ネガフィルム・リバーサルフィルムのいずれにおいても、基本的には、同様である。

一定の温度、一定の時間での現像作業が終わったら、現像を止めるために停止浴を行う[3][4]。現像作用はアルカリ性の状態で活性をもつため、酸性液に浸すのである[3][4]。停止浴は、現像液を流水で洗い流す水洗でも代用され、カラーリバーサルフィルムの現像方法である「E-6現像」では2分間の水洗を処方している[5]

カラーフィルムにおいては、ネガ・リバーサルともに第一現像のあとに発色現像を行う[6]。白黒リバーサルフィルムにおいては、漂白、再露光を経て第二現像を行いポジに変換する[7]

市販の現像液は、現像主薬を中心に、現像保恒剤現像促進剤現像抑制剤等を混合した溶液を製造販売しているものである[1][2]

構成

現像主薬

現像主薬(げんぞうしゅやく)は、現像作用をもつ薬品であり、現像液のメインを構成する[1][2]。現像主薬として用いられる薬品は以下の通り[1][2]

現像保恒剤

現像保恒剤(げんぞうほこうざい)は、現像作用が進み、現像主薬が無効になった際にその酸化を防ぐ作用をもつ薬品である[1][2]。現像保恒剤として用いられる薬品は以下の通り[1]

現像促進剤

現像促進剤(げんぞうそくしんざい)は、現像液のアルカリ度を上げ、現像作用を促進する薬品である。現像促進剤として用いられる薬品は以下の通り[1]

現像抑制剤

現像抑制剤(げんぞうよくせいざい)は、カブリを防止する作用をもつ薬品である[1]。カブリとは、感光材料の表面のうち感光しなかったはずの部分が黒化・着色する現象を指す[14]。現像抑制剤として用いられる薬品は以下の通り[1]

基本工程

攪拌する。
現像液の排出。これは Agfa Rondinax 35 U というタンク。

以下は手現像における標準的な手法である[3]

  • 全暗室で現像タンクにフィルムを装填、蓋を密閉
  • 注入口から現像液注入
  • 攪拌 - 上下を逆にシェイク
    • 当初1秒1回の間隔で30秒間連続攪拌、タンクの底を打ち付け泡切り
    • 1分あたり攪拌10秒、泡切りを反復
  • 現像液を排出 - 白黒リバーサル現像では排出した現像液を第二現像で使用
停止浴(あるいは水洗)へ

おもな製品

  • コダック デベロッパー D-76 - 現像液、白黒用[16]
  • 富士フイルム スーパープロドール - 「コダックD-76」に近い[17]
  • イルフォード ID-11 - 「コダックD-76」完全互換品
  • テテナール ドクモール - 現像液、白黒用、フィルムには1:6、印画紙には1:9で希釈する[18]
  • オリエンタル写真工業 スーパーオリトーンPB - 現像液
  • エヌ・エヌ・シー ND-76 - 「コダックD-76」処方

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 百科事典マイペディア『現像液』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h デジタル大辞泉『現像液』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  3. ^ a b c d よいこのための暗室の本、2011年12月6日閲覧。
  4. ^ a b 百科事典マイペディア『停止液』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  5. ^ PROCESSING SOLUTIONS AND THEIR EFFECTS、コダック (英語)、2011年12月4日閲覧。
  6. ^ Langford, p.210; 215–216.
  7. ^ Photographic Almanac, 1956, p. 149–155
  8. ^ デジタル大辞泉『ヒドロキノン』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  9. ^ デジタル大辞泉『メトール』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  10. ^ デジタル大辞泉『ピロガロール』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  11. ^ デジタル大辞泉『パラアミノフェノール』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  12. ^ デジタル大辞泉『亜硫酸ナトリウム』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  13. ^ デジタル大辞泉『炭酸ナトリウム』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  14. ^ 百科事典マイペディア『カブリ』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  15. ^ デジタル大辞泉『臭化カリウム』 - コトバンク、2011年12月6日閲覧。
  16. ^ 白黒ケミカル一覧、コダック、2011年12月6日閲覧。
  17. ^ 白黒写真処理薬品、富士フイルム、2011年12月6日閲覧。
  18. ^ B/W Positiv Developer for Processing in Dishes, テテナール、2011年12月6日閲覧。

参考文献

  • Wall, E.J. (1890). Dictionary of Photography. London: Hassel, Watson and Viney Ltd. 
  • The British Journal (1956). Photographic Almanac. London: Henry Greenwood and Co Ltd. 
  • Sowerby (Ed.), A.L.M. (1961). Dictionary of Photography: A Reference Book for Amateur and Professional Photographers. London: Illife Books Ltd.. 
  • Langford, Michael (2000). Basic Photography. Oxford: Focal Press. ISBN 0240515927. 
  • 名古屋大学, 写真部 (2007年3月17日). よいこのための暗室の本. 名古屋: 名古屋大学. 

関連項目

外部リンク



現像主薬

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現像液」の記事における「現像主薬」の解説

現像主薬(げんぞうしゅやく)は、現像作用をもつ薬品であり、現像液メイン構成する。現像主薬として用いられる薬品以下の通りハイドロキノンヒドロキノン) - 強い還元剤 メトール英語版) (硫酸パラメチルアミノフェノール塩酸塩) - ハイドロキノン混合し「MQ現像液」とする フェニドン ピロガロール - 強い還元剤 アミノフェノール英語版) パラアミノフェノール(英語版) - 迅速軟調効果あり

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