海外版編集
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 04:10 UTC 版)
フランスに駐在していた東映国際部部長・杉山義彦は、公開直後に岡田社長に突然呼ばれ、海外で売るように指示を受けた。岡田社長から「海外版を編集せよ」と指示を受けた杉山は、助監督時代に佐藤監督から若干の指導を受けただけのほぼ素人ながら、佐藤に了承を取り付け「佐藤監督を差し置いて僭越ながら」海外版の編集を行った。佐藤は「海外版に関しては、僕はノータッチ」と述べているが、杉山は「倉持指令室長が運転手に指令を出すシーンで、列車制御について、織烈な応酬が繰り返される場面は絶対に残して欲しい。それ以外は好きに編集していいと言われた」と述べている。 海外版では主演の表記をサニー千葉(千葉真一)に変更しており、これは千葉のほうが高倉健より海外では知名度が高いためである。日本のスターが集結した超大作というよりも、アクションスターである千葉主演のパニック映画として封切りされていった。英語圏では『The Bullet Train 』にて115分、フランスで『Super Express 109 』もしくは『Crisis Express 109 』にて100分でそれぞれ公開されている。海外版では犯人側のドラマをカットしたおかげでテンポがとてもよくなり、次々襲いかかる危機と息をつかせぬ展開となった。フランス語版でも上映時間を2/3の102分に短縮して犯人側のドラマをカットしており、高倉や山本圭は単なるテロリストとして扱われた。鈴木常承東映取締役兼東映洋画部長は、1976年8月のインタビューで「洋画の最近の大ヒットしている写真を見たって、2時間が限度。『ジョーズ』だって2時間でその中に濃縮しているわけです。それで金の掛け方は日本映画の何十倍ですから。『新幹線大爆破』なんて、予算も大してかけてないものが2時間何十分になってる。もっと縮めて中身を濃くしないといけないです」と話していた。 特にフランスではそれまで日本映画をマイナー扱いし、アートシアター形式の小劇場でしか上映されなかったという前例を破り、1976年6月30日からパリおよび近郊のゴーモン系劇場17館で一斉公開され、8週間のロングランヒットを記録。この時期、フランスはバカンスシーズンに当たるが、この年夏にパリで公開された84本の映画のうち、第4位の興行成績で、外国映画ではこの年カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した『タクシードライバー』に次ぐ2位だった。ヒットの理由は「フランスにも日本の新幹線に触発されて開発中だった高速鉄道のTGVがあったから」との声もあり、約44万人の動員を記録し、100万ドルの外貨を稼ぎ、会社に3億円の収入をもたらしている。フランスでの大ヒットを皮切りに世界各国で公開され、続々大ヒットを記録し、多くの国で日本映画の興行記録を更新、南アフリカ共和国では日本映画初の大ヒットとなり、同国ではアメリカ映画のヒット作2~3週興行に対して3週以上続映された。オーストラリア・ニュージーランドは、20世紀FOXの配給でヒット。東南アジアは1976年後半からの逐次公開で、千葉真一と志穂美悦子が国民的人気を誇るインドネシア(女必殺拳シリーズ#興行2)では予想通りの大ヒット。ブルガリアでは当時、ソフィア-ブルガス間に160km/hで走る自慢の超特急を運行していたが、それを遥かに凌ぐスピードの超特急に感心し、それもコンピューター制御にビックリし、観客はドヨメキと拍手、溜息の連続で、映画が終わると観客はグッタリしていたといわれる。当時のヨーロッパの一般の人たちの日本に対する知識はごく僅かであった。ドイツでは『Panik im Tokio-Express 』、他にスペインで『Panico en el Tokio-Express 』、イランで『BOMBA U SUPEREKSPRESU 』 など、1976年12月の時点で120か国で公開されたとされ、ソ連および、東欧圏の全ての国で公開され、ソ連では2500万人以上が観たのではといわれ、100か国のポスターが存在するといわれる。犯人側と国鉄側ともに労働者に焦点があたっている内容ゆえか、東ドイツなど共産圏でも公開され好評を得た。[要出典] 1975年から1976年にかけて輸出された東映作品の中で抜群の売れ行きを見せ、1976年12月18日からは日本でフランス語吹き替え版が凱旋公開された。日本において不入り映画が再上映されるのは珍しい事例といわれる。 佐藤純彌は海外版の大ヒットに複雑な思いがあり、フランス語版のテレビ放送を見た知人から「面白かったよ」という電話に対し、「本当はもっと面白かったんだ」と言い返していた。1975年のロンドン映画祭のみ、日本版が英語字幕で上映され、「ベスト・アウトスタンディング・フィルム・オブ・ザ・イヤー(特別賞)」を受賞している。
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