格納容器の据付
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「福島第一原子力発電所1号機の建設」の記事における「格納容器の据付」の解説
原子炉格納容器はGETESCOから日立製作所に発注された。工場製作は1967年6月より開始され1968年6月に最終耐圧、漏洩試験に合格した。重量は1,200t、耐圧部の突合せ溶接部のみでも全長4,200m、放射線検査フィルムは1万3000枚を使用したという。また、工程面では1号機全体のクリティカルパスの一つとなっているため、工期の短縮に注意が図られている(工程管理の詳細は後述)。『日刊工業新聞』(1968年4月1日)によると従来の規格計算では間に合わないため、日立では計算機を使用した応力解析を導入し、品質保証のため、焼鈍炉も新造したという。 この予定を遅延させないために意識されたのは制作進行中に耐震および配管設計上の設計変更を弾力的に吸収することであった。格納容器は工場製作の段階では約1000個の部品に分割されていたが、出来る限り現地作業を少なくすることが求められた一方で、鋼板最大寸法、製造設備能力、輸送方法などが制約条件であった。この内、製造設備能力に係わる課題を更に具体的に述べると、現地での組立順序に合わせて部品を製造しつつ、工場の敷地内に限りがあるので、作業計画の検討に慎重を期し、ケガキ、開先切断、溶接、機械加工等に特殊な治具を使用した。なお、完成した部品は現地搬出前に工場内で仮組立を実施して精度を確認している。 多田正文によれば、格納容器用鋼板として1号機までの原子力発電プラントではASME SA 201 GrBないしSA 212 GrBというC-Si系炭素鋼板が使用された。この規格は1964年に変更され、前述の2種鋼板はそれぞれSA 515 Gr60およびSA 515 Gr70に継承、新規に低温衝撃特性の優れたC-Si系炭素鋼板としてSA516 Gr55 Gr60 Gr65 Gr70が制定された。しかし、1号機ではこの新規格鋼板を採用せず、2号機でSA 515 Gr70を採用することとなる。耐圧部に使用されたASTM 212 Gt.Bは低温における衝撃値を規制した材料で、配管同様、溶接条件、非破壊検査には注意が払われ、たとえば溶接士の認定試験は通産省技術基準とASME Code Section IXの両者に合格することが条件であった。また当時より工場内製作部分については自動溶接を積極的に導入している。現場溶接についても、溶接工は全て工場から派遣した者を当てたが、「現地の混雑した環境での作業というのは、不慣れであり、不得手」という問題がある事は認識されていた。下記のように地上作業が増やされたのは、このような背景もある。 MarkI格納容器の外形はひょうたんのような本体(ドライウェル)の下に円筒の架台を敷き、底部を囲む形でドーナツ状のサプレッションチェンバ(『火力発電』ではトーラスと呼称)が取り巻く形となっている。現地での組立は下の円筒部から上部に向けて組み上げていく形をとっており、この据付工事上の特徴として、当時日本最大の容量を誇ったガイデリッククレーンを投入し、「リング状ブロック建造方式」が採用された。この建造方式は、工場より搬入された部材を地上に仮設したコンクリート平面の作業盤でリング状に組立し、溶接・検査を実施後リングごと吊り込んで上段に重ねるものである。 また、現場建設での特徴として、据付が完了したドライウェル下部より局部漏洩検査を順次実施し2日間に渡った通産省試験で無漏洩を確認した。このことで、ドライウェルの据付が全て完了する前に、ドライウェル底部のコンクリートの打設を実施することが可能となり、土木工事の工程短縮に大きく寄与した。 トーラスの据付はアーチビーム部を起点にブロック状に分割されたトーラスを据付するミルストン式(en)を採用した。 格納容器完成後に設計圧力の1.15倍の圧力を加圧する漏洩試験を約1週間かけて実施し、完成検査を終了した。現地における溶接不良率は0.4%以下で「全般的にすぐれたもの」と評価された。 1968年に入っても通産省の試験を受ける検査要領書、試験計画書等が全く無い状態からのスタートで、GEのプロシーディアと呼ばれる文書はあったが役に立たない構成であったため日本語に和訳の上検査要領書として仕立て直した。コピー機も青焼き機しか市販されていない時代であったため、キングファイル3冊分の検査記録は全て手書きであった。
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格納容器の据付
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「福島第一原子力発電所2号機の建設」の記事における「格納容器の据付」の解説
建設所の機械課課長として1号機の格納容器据付に関わった井上和雄によれば、38㎜以下の鋼板による現地組立ては、まず地上で鋼板2~3枚を溶接接合し、クレーンで吊りあげて構造物として組立て溶接していく方法が取られ、完成までに約10ヶ月を要した。完成時には溶接・構造の健全性を確認するため官庁検査を実施し、耐圧、漏洩試験もその実施項目に含まれていた。溶接線が多いため検査官は10名近く依頼し、約3kg/cm2の圧縮空気を7500m3の格納容器に封入して実施するが、空気の保有エネルギーが計算上TNT火薬11~12tに相当するため試験実施にも十分な安全確保が求められた。漏洩試験には溶接線に石鹸水を塗って泡の発生が無いかを確認して実施したので、格納容器下部の検査官は上部の石鹸水を被ることになり、合羽が必要であった。その後、1号機、2号機での据付経験を元に作業性改善、効率化について検討が加えられ、鋼板は可能な限り地上で大組とし、クレーンを増強して吊り上げることとし、空中での溶接作業を削減した。
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