数値解法とは? わかりやすく解説

数値解析

(数値解法 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/12 18:45 UTC 版)

バビロニア粘土板 YBC 7289 (紀元前1800-1600年頃)。2の平方根の近似値は六十進法で4桁、十進法では約6桁に相当する。1 + 24/60 + 51/602 + 10/603 = 1.41421296... [1]。(Image by Bill Casselman)

数値解析(すうちかいせき、: numerical analysis)は、計算機代数英語版とは対照的に、数値計算によって解析学の問題を近似的に解く数学の一分野である。 (狭義には「数値解析」とは「数値計算方法」の数学的な解析・分析(mathematical analysis of numerical methods)のことであり,広義の意味=数値を使って問題の解析・分析を行う(Analysis by numerical methods)・式でなく数値で計算を行う「数値計算」(numerical computation, numerical calculation)全般とは区別される。しかし世間一般には両者はあまり区別されていない。理学工学等の分野の応用として計算を行う場合には普通は広義の意味で「数値解析」と称している。このWikipediaでも区別がなされていない。本来この頁のタイトルは「数値解析」ではなくて「数値計算」とする方が正しい。その場合の「数値計算」とは問題を解くための計算を数式を使って行うのではなくてもっぱら数値を使って行うのだという意味合いがある。)

数値解析は自然科学および工学のあらゆる分野に応用がある。計算言語学[1]社会統計学[2]のように、人文科学社会科学でも重要である。

現在知られている人類史における最初期の数学的記述の一つとして、バビロニア粘土板 YBC 7289 を挙げることができる。YBC 7289 は正方形対角線長さを近似したものと考えられ、結果として

2時間のレースで、自動車の速度を3回測定した結果が次表のようになっている。

時間 0:20 1:00 1:40
km/h 140 150 180

離散化とは、この場合、0:00 から 0:40 までの自動車の速度が一定とみなし、同様に 0:40 から 1:20 までと、1:20 から 2:00 までも一定とみなすことである。すると、最初の40分の走行距離は約 (2/3h x 140 km/h)=93.3 km となる。したがって、全走行距離は 93.3 km + 100 km + 120 km = 313.3 km と見積もられる。これがリーマン和を使った一種の数値積分である(走行距離は速度の積分であるため)。

悪条件問題: 関数 f(x) = 1/(x − 1) を考える。f(1.1) = 10 で f(1.001) = 1000 である。x が 0.1 の範囲内で変化したとき、f(x) は約1000も変化する。この f(x) の x = 1 での評価は悪条件問題である。

良条件問題: 対照的に関数

線型回帰の例

回帰: 線型回帰では、n 個の点が与えられたとき、それら n 個の点のなるべく近くを通る直線を求める。

グラス1杯のレモネードの値段は?

最適化: レモネード売りがレモネードを売っている。1杯1ドルでは、1日に197杯売れる。1杯あたり1セント値段を上げると、1日に売れるレモネードは1杯減る。1杯を1.485ドルにすると売り上げが最大となるが、1セント未満を使った値段は付けられないので、1.49ドルにすると一日の最大売り上げ 220.52 ドルが得られる。

微分方程式: ある部屋で一方からもう一方へ空気が流れるように100個の扇風機を配置し、羽根をそこに落としてみる。何が起きるだろうか? 羽根は空気の流れに従って漂うが、非常に複雑な動きになるかもしれない。その近似としては、羽根が漂っている付近の空気の速度を1秒おきに測定し、シミュレートされた羽根が1秒間は測定された方向にその速度で進むと仮定する。このような手法をオイラー法と呼び、常微分方程式を解くのに使われる。

最も単純な問題は、関数のある点での値を求めることである[注釈 2]。単純に数式に値を代入する直接的な手法は、効率的でないこともある。多項式の場合、ホーナー法を使うことで乗算と加算の回数を減らすことができる。一般に、浮動小数点演算を使うことで生じる丸め誤差を予測して制御することが重要となる。

補間、補外、回帰

補間が役立つのは、ある未知の関数のいくつかの点の値があるとき、それら以外の中間点でのその関数の値を求める場合である。単純な手法としては線型補間があり、既知の点の間で関数が線型に変化するとみなすものである。これを一般化した多項式補間はもっと正確となることが多いが、ルンゲ現象に悩まされることもある。その他の補間手法としてはスプラインウェーブレットといった局所化関数を使うものがある。

補外は補間とよく似ているが、未知の関数の値が判っている点の外側の点について値を求めることをいう[20]

回帰も類似した手法だが、既存のデータが不正確であることを考慮する。いくつかの点とその値があり、それらデータが誤差を含みつつ何らかの関数に従っているとして、その未知の関数を決定する。このための手法として、最小二乗法がよく知られている。

方程式、方程式系の解

基本的な問題のひとつとして、与えられた方程式の解を計算する問題がある。その方程式が線型か否かによって手法が分類される。例えば、


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数値解法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 01:43 UTC 版)

代数方程式」の記事における「数値解法」の解説

ここでは、数値計算アルゴリズム基本的に四則演算の無限回の組み合わせ)による解法について述べる。計算機による解法想定しているが、現在の計算機が本来できる計算としては整数環での演算論理演算有限操作であるため、厳密な意味で計算機では解く事はできない。しかし、浮動小数点数という擬似的実数表現複素数実行列表現なども可能であることより複素数体が扱えるものと見なす。また与えられた正の値の誤差範囲に収まるまでの反復回数有限回という保証があるならば、実質無限回の操作許される見なすそういう意味での、近似的な数値解法である。 数値計算アルゴリズムによる解法は、様々な手法提案され、現在もその進化続けている。ここでは、ベーシック手法いくつか記す。 ニュートン法による解法は、解の候補となる初期値与え、その解の候補接す直線を元の代数方程式近似とみなし、その一次方程式を解くことにより次の解の候補求め方法である。この操作を、解の候補が予め与えた誤差以内に収まると判定されたならば、解の候補を解の一つとみなし、減次 (deflation) を行い次の方程式求め、再びニュートン法を施す。(収束するならば)二次収束することが解っており、数値解法としては早い。ただし、重根対す収束性悪さ初期値によっては収束しない場合有り得ること、複素数場合の処理の煩わしさなどがあり、直接ニュートン法で解くという局面少ない。 複素数扱いということではベアストウ法という解法がある。これは、二次式因数分解を行うという操作コンセプトとする。

※この「数値解法」の解説は、「代数方程式」の解説の一部です。
「数値解法」を含む「代数方程式」の記事については、「代数方程式」の概要を参照ください。

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