政治哲学におけるミルとは? わかりやすく解説

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政治哲学におけるミル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/10 05:51 UTC 版)

ジョン・スチュアート・ミル」の記事における「政治哲学におけるミル」の解説

ミル業績中でもとりわけ彼の名が刻まれているのは政治哲学での貢献であろうミルの著わした『自由論』(1859年)は自由とは何かと問いかけるものに力強い議論与える。ミルは、自由とは個人発展必要不可欠ものとい前提から議論進める。ミルによれば私たち精神的道徳的な機能能力筋肉のようなもので、使わなければ衰えてしまう。しかし、もしも政府世論によっていつも「これはできる。あれはできない。」と言われていたら、人々は自らの心や心の中持っている判断する力を行使できない。よって、本当に人間らしくあるためには、個人は彼、彼女自身自由に考え話せる状態(=自由)が必要なのである。ここで、ミル功利主義はその提唱者であるベンサムはたもと分かつ簡単に述べると、ミル功利主義は、快楽について、ベンサム唱えた量的なものよりも質的な差異をみとめ精神的な快楽重きを置いた。それは次のミル有名な言葉表されている。 ...it is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied. And if the fool, or the pig, are of a different opinion, it is because they only know their own side of the question.「満足した豚であるより不満足な人間である方がよい。満足した愚者であるより不満足なソクラテスである方がよい。そして愚者豚の意見がこれと違っていても、それは彼らがこの問題自分立場からしか見ていないからである 」 — 『功利主義第二章 ミルの『自由論』は個人にとって自由とは何か、また社会国家)が個人に対して行使する権力道徳的に正当な限界について述べている。『自由論』の中でも取り分け有名なものに、彼の提案した危害原理」がある。「危害原理」とは、人々は彼らの望む行為他者危害加えない限りにおいて、好きなだけ従事できるように自由であるべきだという原理である。この思想支持者はしばしリバタリアン呼ばれるリバタリアンという言葉定義するものは広いが、通常危害加えない行為合法化されるべきだという考え(=「危害原理」)を含む。現代において、この「危害原理」を基盤幾人かのリバタリアン合法化されることを支持するものとしては売春や現在非合法薬物含めた薬物使用がある。 ヴィルヘルム・フォン・フンボルト国家活動限界決定するための試論」(1851年刊行)はミルの「自由論」にも大きな影響与えたミルは『自由論』において、政府がどの程度まで国民の自由を制限できるか、国民はどの程度客観的証拠による注意によって、自らの自由な注意によってどの程度まで政府干渉されずに、自由な意思決定をなすべきなのか考察行なった。例として毒薬薬品注意書き政府によって命令されるべきか、自らの自由な意思によって注意すべきかを挙げて考察している。もし自らの意思によって注意すべきであるならば、政府注意書きをつけるように強制すべきではないが、それが不可能ならば政府注意書き強制すべきである論じ国民能力問題をも取り上げることとなった。 酒や、タバコ注意書きや、それと類似経済学的に意味がある酒税や、タバコ税の意味についても同じことがいえる。もし注意すべきではないということになれば夜警国家となるであろうし、一方リバタリアンのように経済的なことのみに注意すべきであるということも可能であろうし、またスウェーデンのような福祉国家主張することも可能であるということになる。 ミル自由論の中でオーギュスト・コント実証主義哲学次のように解釈している。 M. Comte, in particular, whose social system, as unfolded in his Système de Politique Positive, aims at establishing (though by moral more than by legal appliances) a despotism of society over the individual, surpassing anything contemplated in the political ideal of the most rigid disciplinarian among the ancient philosophers. 特にコントは『実証主義政治システム(Système de Politique Positive)』の中で述べているように、個人対す社会専制を(法的手段によるよりも、むしろ道徳によって)確立することを目指した。それは古代思想家中でも最も規律重んじる者の政治的理想述べた内容をさらに越えるものであった。 — 『自由論』 このヴィルヘルム・フォン・フンボルトコント考え方ミル自由論根底にあったのであるアイザイア・バーリンは、これをさらに押し進めたバーリン用いた積極的自由、消極的自由という概念従えばミルの『自由論』の議論多く消極的自由についてとなる。バーリン提唱する消極的自由とは、障害妨害強制抑圧)の欠如意味する。また一方積極的自由とは、行為できる(可能性的なものも含めた能力、自由であるための必要条件 - 物質的資源、(ある人における)啓蒙度合い参政機会など - の存在を指す。 この思想明治時代においては自由之理」として中村正直翻訳され大隈重信立憲改進党思想大きく影響与えたミルは、他者危害加えない行為をするために、個人の自由な行ないを邪魔する法などの障害取り除くのは政府役目であると説いている。ミル実際の自由の行使 - 例え貧し市民生産的な仕事を得ること - を許す必要条件については議論を展開せず、それにはその後チャーティスト運動に待たなくてはならなかった。 その後、『自由放任終焉』を書いた経済政策ケインズなどに代表される20世紀思想家登場を待たなければならなかった。しかしニューディール政策含め自由主義運動には常にミル自由論大きく影響与えたことは否めないといいうる。 また、ミルは『女性隷属』(1861年)、『代議政治論』なども著わしている。実際政治家下院議員としてのミルについては上段参照せよ

※この「政治哲学におけるミル」の解説は、「ジョン・スチュアート・ミル」の解説の一部です。
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