封入体筋炎
主として50歳以降の高齢者、特に男性に多くみられる特異な筋炎です。筋病理で、筋線維間へのリンパ球浸潤とともに、筋細胞の核内に細い管状(直径約20nm)の封入体をみることから、上記の名称が与えられました。封入体は電子顕微鏡でしか確認できません。電子顕微鏡でみると、核内だけでなく、細胞質にも封入体をみます。封入体をもっている筋線維は光学顕微鏡で見ると縁取り空胞(rimmed vacuole)(図37)を持っています。ですから筋生検で縁取り空胞をもつ筋線維の存在と筋炎の所見の両方を確認すれば診断が可能です。原因は慢性のウィルス感染説などがありますが、よく分かっていません。
b.臨床症状
多くは歩行の異常で気づかれます。大腿前面の筋力低下、筋萎縮、それに上肢では前腕部内側の筋萎縮、筋力低下がきます。ものが握りにくい、握る力が入らないことで気づかれることもあります。経過は人によって異なりますが、発症後数年で車いす生活となる人もいます。検査ではあまり特異的な変化はありません。血清クレアチンキナーゼ値も正常かやや上昇する程度です。
c.治療
副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤など多くの試みがされていますが、あまり効果は期待できません。筋萎縮予防のリハビリが中心です。心臓や呼吸筋は侵されにくいので、生命的な予後はよいとされています。
封入体筋炎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/28 07:07 UTC 版)
封入体筋炎(ふうにゅうたいきんえん、IBM: Inclusion body myositis)は、炎症性ミオパチーの3つの主要なグループのひとつ。50歳以上の炎症性ミオパチーにおいてはもっとも頻度の高いものである。
- 1 封入体筋炎とは
- 2 封入体筋炎の概要
封入体筋炎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 05:00 UTC 版)
その他の自己免疫性筋炎と同様に筋原性変化が認められる。小型単核球が非壊死筋線維を取り囲み、内部に侵入する像を認める。本所見は後述する縁取り空砲と共に、封入体筋炎に診断的な所見の一つである。ゴモリ・トリクローム変法(modified Gomori trichrome、mGT)では赤色に染色される顆粒状物質で縁取られる縁取り空砲(rimmed vacuole)が認められる。縁取り空砲は変性した筋線維に存在し、封入体筋炎症例の全筋繊維の1~6%に認めると報告されている。また、高頻度に赤色ぼろ線維(ragged red fiber、RRF)が認められる。赤色ぼろ線維はまだらに赤色に染色される筋線維であり、AcidP染色では空砲において高い活性を示す。 免疫染色を行うと、多発筋炎と同様にCD8抗体陽性T細胞が筋内鞘主体に浸潤し、HLA-ABCを発現している非壊死筋線維を取り囲み、筋線維内に侵入するCD8/MHC class Ⅰ complexが認められる。このことから封入体筋炎は局所的に細胞性免疫機序が存在することが示唆される。縁取り空砲の中や周囲の細胞質にコンゴーレッド染色で赤く染色されるβアミロイド(細胞内のアミロイド沈着)が認められる。βアミロイドの他にLC3やp62などのオートファジー関連蛋白質やTDP-43などの異常蓄積蛋白質の免疫染色で筋細胞質に顆粒状に認められる。筋線維内にアルツハイマー病様蛋白質や自己貪食や小胞体ストレスなどの要素が存在することは封入体筋炎において変性機序も存在することを示唆する。 電子顕微鏡では筋細胞膜直下に空砲を認め、その内部にはグリコーゲン、膜様構造物、ミエロイド小体などが観察される。細胞質内または核内に直径15~20nmのfilamentous inclusionを認める。この封入体は封入体筋炎に特異的なものではなく、縁取り空砲をもつ細胞に高頻度に認められる。 2008年のMRC centre封入体筋炎ワークショップでは筋原性変化とHLA-ABCの筋細胞膜での発現亢進に加え非壊死筋線維への単核球の侵入像、縁取り空胞をもつ筋線維、細胞質内アミロイド沈着または電子顕微鏡でfilamentous inclusionを認めるものを病理所見から確実な封入体筋炎と診断される。 LC3やp62などのオートファジー関連蛋白質やTDP-43などの異常蓄積蛋白質の免疫染色のほうがゴモリ・トリクローム変法の縁取り空胞や赤色ぼろ線維より感度がよい。
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封入体筋炎(inclusion body myositis、IBM)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 05:00 UTC 版)
「筋炎」の記事における「封入体筋炎(inclusion body myositis、IBM)」の解説
50歳以降に発症し、男性にやや多い。手指屈筋群、特に深指屈筋が障害されやすくボタンをかけられない、ペットボトルのキャップを開けられないといった訴えが多い。大腿四頭筋も障害されることが多い。進行性の筋力低下と筋委縮を認め、しばしば症状は左右非対称である。発症5年で日常生活に支障をきたす。嚥下障害は60%以上に認められるが呼吸筋や心筋は障害されにくい。血清CK値は正常から正常上限10倍程度まで増加する。筋MRIでは大腿四頭筋および腓腹筋内側頭に脂肪置換と浮腫性変化を認める。大腿四頭筋のうち大腿直筋は相対的にやや保たれる傾向がある。細胞質5’-ヌクレオチダーゼ(cN1A)に対する自己抗体が一部で検出される。病態機序は不明であるが変性や蛋白分解経路の異常、免疫系の異常が示唆されている。
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封入体筋炎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 06:47 UTC 版)
50歳以降の男性の発症が多く、緩徐進行性の非対称性の筋力低下(近位筋、遠位筋)および球麻痺症状(嚥下障害)がみられる。筋萎縮性側索硬化症では初期に解離性小手筋萎縮がみられ下肢では遠位筋の筋力低下がみられるのに対して、封入体筋炎では上肢で手指および手首の屈筋優位の筋力低下、特に長母指屈筋の筋力低下がみられ、下肢では大腿屈筋よりも大腿四頭筋優位に筋力低下がみらるのが特徴である。MRIでは大腿四頭筋、前腕の深指屈筋の萎縮が特徴である。
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