外来語の表記・表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 00:21 UTC 版)
「外国語の日本語表記」も参照 日本語の場合、一般に外来語はカタカナで表記して区別されるが、「瓦斯」(gas)、「米」(meter)などのように漢字を当てる場合や、「頁」(page)のように訓読みになっている場合もある。ほかに、外来語との認識の薄い語がひらがなで表記される場合もある(「タバコ」を「たばこ」など)。また、2文字以上の漢字で表記されて熟字訓で読まれることのある語もある(「メリヤス」を「莫大小」、「タバコ」を「煙草」)。また、外来語を表記するために、国字(和製漢字)が作られた例もある(「ブリキ」を「錻力」または「錻」)。 また、英語において英語以外の言語に起源を求めることができる語のみにみられる"j"の文字、語頭に"v"を用いる綴り方(以上フランス語起源)、[k]と発音される"ch"(古典ギリシャ語、イタリア語)などのように、日本語についても同様に文字・綴り・発音の面において外来語に特有な次のような表記・表現がみられる。さらに外来語にのみあらわれる拗音風の仮名の組み合わせもある。「シ」「ジ」「チ」以外の「い段」音の仮名に「ェ」を組み合わせて「イェ」「キェ」等と表記したり、「い段」音以外の仮名に「ァ」「ィ」「ゥ」「ェ」「ォ」、または「ャ」「ュ」「ョ」をそれぞれ組み合わせて表記する。これらは、下の一覧表では外来語の表記に含めた。 第1字が「イ」または「ウ」である場合はそれが半母音化[y]、[w]し、それが頭子音となる。[t]または[d]に始まる音の第1字は「テ」「ト」「デ」「ド」で書かれる。 日本語の「い」段音には、同行の他の段で用いられる子音が硬口蓋化したものとは異なる子音を持つもの(「し」「じ」「ち」「ぢ」「ひ」)が存在する。このうちサ行・ザ行・タ行・ダ行の(イ段以外で用いられる)子音が口蓋化したものに「イ」の母音が続く発音[sʲi]、[tʲi]、[zʲi]、[dʲi]は、日本語の音韻体系においては空白となっていたが、外来語の原語により近い発音を表すのに「さ」行、「た」行、「ざ」行、「だ」行の頭子音に母音[i]をつけて「スィ」、「ティ」、「ズィ」、「ディ」といった表記が行われるようになった。 用例 イェ/ツァ・ツィ・ツェ・ツォ/ティ・テュ・ディ・デュ/トゥ・ドゥ/ファ・フィ・フェ・フォ/ウィ・ウェ・ウォ/ヴァ・ヴィ・ヴェ・ヴォなど これらの拗音風の外来語の表記は、できるだけ本来の外国語の発音に近づけるために1モーラで発音することを期待した表記であるが、なかには日本語母語話者には発音が困難であったり、従来からの慣用があるため、下記のように2モーラに発音したり、別の1モーラに置き換えて発音することがある。特に、「シ」「チ」「ジ」を除く「い段」直音に「ェ」を付した「イェ」「キェ」「ニェ」などや円唇化された子音を頭子音に持つ「ウィ」「クァ」「グァ」「スィ」などで表現される語の場合、日本語母語話者の多くは日常会話では、その2文字目を普通文字で表記した2モーラの「イエ」「ウイ」「クア」などで表現される語とは、意味上はもちろん、発音の上でもその違いをほとんど認識することはなく、その発音の可否にかかわらず多くの場合、いずれも2モーラに認識する(例:イェス/イエス、ウェハース/ウエハース、クェスチョン/クエスチョン、グァテマラ/グアテマラ、スェーデン/スエーデン/スウェーデン)。外来語の中には、これまでに慣用の表記と発音がすっかり定着してしまっているため、拗音風の外来語の表記・発音がほとんどあるいはまったく使われないものもある(例:エチケット/エティケット、ラジオ/ラディオ/レイディオ)。平成3年に内閣告示された『外来語の表記』では、このうち国語化の程度が高い語に使われる仮名は第1表に、国語化の程度がそれほど高くない語、またはある程度外国語に近く書き表す必要のある語に使われる仮名は第2表に収められている。 イェロー(yellow 英:黄色)→イエロー イェル(yell 英:学生などの応援の叫び)→エール ウィーク(week 英:週)→ウイーク ウェイト(weight 英:重量)→ウエイト ヴァイオリン(violin 英:弦楽器の1種)→バイオリン クォーツ(quartz 英:石英)→クオーツ グァム島(Guam 英:太平洋上の米領の島の1つ)→グアム島、ガム島 スィン(グ)(sing 英:歌う)→シング スウィン(グ)(swing 英:揺れる、揺する)→スイング デュース(deuce 英:庭球等の競技用語)→ジュース トゥ(two、to 英:2、~へ)→ツー 一般に、日本語には母音の長短の区別があるとされ、外来語の表記には「ー」を用いて長音をあらわす。ただし、日本語がその元となった言語の母音の長短の区別を本当にとり入れているのかどうかは疑問である。パーキスターンやイーラーンと言った国名はそれぞれ、パキスタン、イランと短母音で取り入れている。アフガニスタンの首都のカーブルや、パキスタンの都市のペシャーワル、料理の名前のシシカバーブ、言語名のタミル語なども、それぞれカブール、ペシャワール、シシカバブー、タミール語などと、本来伸ばすべき所を伸ばさなかったり、逆に伸ばさなくて良い所を伸ばしたりして取り入れている。これは、元来日本語自体が母音の長短の区別に疎いと言うことも考えられる。また外国の地名や人名の場合、現地の言葉からではなく、英語を介して取り入れているため、英語話者のアクセントの位置を長音にして取り入れている場合もある。 また、タミール語のようにおそらくパミール高原などの他の地名などの発音から類推されてとりいれられたのではないかと思われるものもある。
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