直音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/03/07 08:47 UTC 版)
直音(ちょくおん)とは、日本語の音節の一種。1モーラを形成する。拗音(ようおん)の対語である。狭義では音声学上、直音は標準的な日本語に存在する音節のうち、硬口蓋化も円唇化もされない頭子音によるものであり、対立する拗音のある音節のみを指す。これは日本語音韻体系の説明などで言及される。広義では拗音・促音以外の標準的な日本語のモーラ全般のことを指し、モーラ及び仮名の分類に使われることがある。
拗音は仮名2文字を使って表記されるのに対して、直音は通常仮名1文字で表記される。
直音の表
対応する拗音をもつもの(括弧内が拗音)。外来語特有のものは除く。 |
行\段 | 清音 | 行\段 | 濁音 | ||||||||
あ段 | い段 | う段 | え段 | お段 | あ段 | い段 | う段 | え段 | お段 | ||
あ行 | あ | い | う | え | お | ||||||
か行 | か(きゃ・くゎ) | き | く(きゅ) | け | こ(きょ) | が行 | が(ぎゃ・ぐゎ) | ぎ | ぐ(ぎゅ) | げ | ご(ぎょ) |
さ行 | さ(しゃ) | し | す(しゅ) | せ | そ(しょ) | ざ行 | ざ(じゃ) | じ | ず(じゅ) | ぜ | ぞ(じょ) |
た行 | た(ちゃ) | ち | つ(ちゅ) | て | と(ちょ) | だ行 | だ(ぢゃ) | ぢ | ず(ぢゅ) | で | ど(ぢょ) |
な行 | な(にゃ) | に | ぬ(にゅ) | ね | の(にょ) | ||||||
は行 | は(ひゃ) | ひ | ふ(ひゅ) | へ | ほ(ひょ) | ば行 | ば(びゃ) | び | ぶ(びゅ) | べ | ぼ(びょ) |
ぱ行 | ぱ(ぴゃ) | ぴ | ぷ(ぴゅ) | ぺ | ぽ(ぴょ) | ||||||
ま行 | ま(みゃ) | み | む(みゅ) | め | も(みょ) | ||||||
や行 | や | (い) | ゆ | (え) | よ | ||||||
ら行 | ら(りゃ) | り | る(りゅ) | れ | ろ(りょ) | ||||||
わ行 | わ | ゐ | (う) | ゑ | を | ||||||
ん | ん |
直音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/19 13:50 UTC 版)
直音とは拗音や促音、撥音以外の音節を指す。 /k/ と /ɡ/ は、語頭での発音はそれぞれ [k] と [ɡ] である。共通語では /i/ と結合した場合にやや口蓋化して[kʲi] 、[ɡʲi] と発音されるが、秋田方言では口蓋化の程度が共通語よりかなり強く、摩擦音が介在した [kɕï] 、[ɡʑï] に発音される。場合によってはそれぞれ /ci/ (チ・ツ) や /zi/ (ジ・ズ)とやや紛らわしく聞こえることがあるが、個別的な例を除いて混同することはない。語中では後述するように /k/ は有声化して [ɡ] と、/ɡ/ は鼻音化して [ŋ] と発音される。 /s/ と /z/ は、語頭ではそれぞれ摩擦音の [s] 、破擦音の [ʣ] と発音される。ただし /z/ の破裂の程度は弱く、[dz] または [z] のように不完全な破擦音や完全な摩擦音で発音されることもある。共通語では/s/ や /z/ は /i/ と結合した場合に口蓋化してそれぞれ [ɕi] (シ)、[ʥi] (ジ)と発音されるが、秋田方言では口蓋化せず [sï] (スィとスの中間)、[ʣï] (ズィとズの中間)と発音される。このため、他地域の人にはス、ズのように聞き取られることが多い。前述したように、秋田方言では共通語のシとスにあたる音節が区別されずどちらもこの発音になる。ただし中年層ではこのような発音は北西部に限られつつあり、若年層では全域が子音も含めて共通語と同じ発音になっている。一方、 共通語のセ、ゼにあたる /se/ 、/ze/ は、高年層を中心に [ɕe] (シェ)、[ʥe] (ジェ)と発音される。これは歴史的には中世末期の中央語(京都方言)に見られた発音の残存である。/se/ については、さらに舌の位置が後ろ寄りになり、[çe] (ヒェ)、[he] (ヘ) と発音されることもある。例えば「背中」は[senaɡa] (セナガ)、 [ɕenaɡa] (シェナガ)、[çenaɡa] (ヒェナガ)、[henaɡa] (ヘナガ)の発音が並存している。 /t/ と /d/ は、語頭ではそれぞれ [t] 、[d] と発音される。/i/ と結合した場合には共通語と同じように /ci/ 、/zi/ に変化しており、さらに /u/ と結合した場合も /ci/ と /zi/ になっているため、共通語と同様に /ti/ 、/tu/ 、/di/ 、/du/ の音節は欠けている。語中では後述するように /t/ は有声化して [d] と、/d/ は鼻音化して [ ̃d] と発音される。 /c/ は共通語ではチ・ツに認められる子音音素である。共通語ではチが /ci/ ([ʨi])、ツが /cu/ ([ʦɯ])とみなされる。秋田方言では共通語のチ・ツにあたる音節がどちらも [ʦï] (ツィとツの中間)と発音されるため、/ci/ が存在し /cu/ は欠けているとみなせる。/ca/ (ツァ)、/co/ (ツォ)という組み合わせも少数認められる。語中では有声化して [z] と発音される。 /h/ は共通語では/a/ 、/e/ 、/o/ と結合した場合は [h] であるが、/i/ や /j/ と結合した場合に口蓋化して [ç] と発音され、/u/ と結合した場合には両唇を近付ける [ɸ] となる。秋田方言では /u/ と結合した場合には共通語とあまり変わらない [ɸɯ̈] であるが、高年層では /i/ 、/e/ と結合した場合にも両唇を近付ける [ɸï] (フィ)、[ɸe] (フェ)が聞かれる場合があるのが異なる。/hi/ の場合は [çï] (ヒ)と発音されることもある。また /ɛ/ と結合した場合にも [ɸɛ] (フェァ)という発音が聞かれる。しかし、/ha/ と /ho/ に関しては唇の丸めが認められず、共通語と同じように [ha] 、[ho̞] と発音されるのが一般的である。県南方言では [ɸ] が他の地域より顕著に認められ、[ɸa] (ファ)、[ɸo] (フォ)といった発音が確認された地点もある。この発音も中世日本語の古音の残存である。現在ではこの発音はかなり衰退しており、高年層に僅かに残っているに過ぎない。 /p/ と /b/は、/i/ と結合したときに /k/ と /ɡ/ の場合と同じく強く口蓋化して [pɕï] 、[bʑï] と発音される場合があるが、/ki/ や /ɡi/ の場合ほどは規則的ではない。/b/ は語中では鼻音化するが、/p/ は語中でも濁音化しない。 /n/ 、/m/、/r/ の発音は共通語と同じである。/i/ と結合したときの口蓋化の程度は共通語より弱い。また /j/ と /w/ の発音も共通語と同じである。/w/ は共通語と同じく唇の丸めが弱い [ɰ] である。
※この「直音」の解説は、「秋田弁の音韻」の解説の一部です。
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