基幹ロケット高度化とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 基幹ロケット高度化の意味・解説 

基幹ロケット高度化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 15:55 UTC 版)

H-IIAロケット」の記事における「基幹ロケット高度化」の解説

H-IIA打ち上げ経験反映して逐次改良続けられているが、より高機能低価格打ち上げロケット実現させて世界との衛星打ち上げ受注競争勝ち抜くため、2011年度から「基幹ロケット高度化」計画始動した計画大きく分けて静止衛星打ち上げ応能力の向上(長秒時慣性航行機能獲得)」、「衛星搭載環境の緩和ペイロード搭載環境の向上)」、「地上設備簡素化飛行安全システム追尾系の高度化)」の3つの要素から成っている。打ち上げ施設老朽化対策枯渇部品対策合わせて事業費161億円である。この基幹ロケット高度化の成果は、H3ロケットイプシロンロケットにも反映される静止衛星打ち上げ応能力の向上(長秒時慣性航行機能獲得種子島宇宙センターから打ち上げられ静止衛星は、赤道面から28.5度傾いている近地点約300km、遠地点36,000kmの静止トランスファー軌道投入されるため、軌道面変更対す衛星側の負担静止増速量1,830m/s必要であり、他国射場静止増速量1,500m/sと比べて不利であった。「静止衛星打ち上げ応能力の向上(長秒時慣性航行機能獲得)」では、第2段機体中心とした改良開発を行うことで、通信衛星などの静止衛星打ち上げにおいて、従来静止トランスファー軌道より近地点が高い近地点約3,000km、遠地点36,000km、軌道傾斜角20度の静止軌道に近いロングコースト静止トランスファー軌道への衛星投入可能になり、必要な静止増速量も他国射場並の1,500m/sとなっている。これにより、衛星軌道変更燃料使用少なくでき、この燃料衛星寿命換算すれば従来より静止衛星3年から5年延命させることになる。一方で、ロングコースト静止トランスファー軌道打ち上げられる衛星質量は、従来静止トランスファー軌道より1トン以上低くなっている。 具体的な改良内容は、1つ目は第2段液体水素タンク表面白色塗装し液体水素蒸発減少させるというもので、この改良により蒸発する燃料を約3割減らせる。H-IIA21号機で長時間慣性飛行中(ロングコースト)の技術データ取得行い、H-IIA26号機から本適用されている。 2つ目はこの蒸発した液体水素機体後方から噴射させることにより微小な加速度与え宇宙空間での慣性飛行中に残っている推進剤液体水素液体酸素タンク内で拡散しないようタンク底部保持させる、リテンション呼ばれる推進薬液面保持機能活用する今まで姿勢制御用の推進剤ヒドラジン機体後方への噴射用いていたが、この改良によりヒドラジン消費量節約できる3つ目はロングコーストの間にトリクル予冷という、従来冷却系統とは別に新たに設けたトリクル予冷系統少量液体酸素用いたターボポンプ間断なく冷却する方法で、エンジン作動使用できる液体酸素増加させるというもの。宇宙空間エンジン点火するには、事前にターボポンプ冷却させないといけないが、冷却用い液体酸素温度が高いと気化してしまい、エンジンへの液体酸素供給量が減ってしまう。この改良により液体酸素消費量節約できる。このトリクル予冷機能は、H-IIA24号機の衛星分離後技術データ取得行い、H-IIA26号機から本適用されている。 4つ目は飛行中衛星太陽に対して垂直にし、太陽光が常に機体側面に当たるように姿勢保持した上で機体低速回転させる制御法であるバーベキューロールと呼ばれる運用取り入れられた。これにより、電子機器温度環境従来と同じで、太陽光高温になるのを防ぎ、かつ深宇宙側の電子機器極低温になるのを防ぐ。 5つ目はロングコースト後には衛星増速第2段エンジン第3回燃焼再々着火)が必要だが、遠地点静止軌道近辺)では機体低速のため、推力100%では推進力大きすぎるので軌道投入精度落ちる。このため再々着火時の軌道投入精度確保するため、推力60パーセント調節できるスロットリング機能実用化させる改良なされている。 他にも5時間に及ぶ宇宙空間での長時間飛行対応するため、新たに開発され宇宙環境にも耐えられる大容量リチウムイオン電池搭載して電子機器電源確保し静止軌道からの機体データ取得対応した長距離通信可能な高利アンテナ開発されている。 ロングコースト静止トランスファー軌道への衛星投入29号機の打ち上げ初適用された。一方29号機以降においても長秒時慣性航行必要な静止軌道への打ち上げでは高度化改良されていない機体での打ち上げとなる。 また、静止衛星打ち上げ応能力の向上(長秒時慣性航行機能獲得)」を応用することで、1回打ち上げ太陽同期軌道異なる高度への複数衛星投入も可能となり、衛星1基あたりの打ち上げ費用を3割から4割低減させることができるようになる。これを可能とするために上記改良内容加えて第2段機体ソフトウェア改修施した衛星相乗り機会拡大開発」が実施された。この高度化37号機で初適用された。 衛星搭載環境の緩和ペイロード搭載環境の向上) 「衛星搭載環境の緩和ペイロード搭載環境の向上)」では、従来爆薬火工品)の爆発締結ボルト切断して衛星分離していた方法を、電気的にラッチ機構作動させて締め付けられたクランプバンドを解放して衛星分離する方法変えて衛星に伝わる衝撃緩和する。これにより衝撃レベルを4,100Gから1,000Gまで低下させる30号機で先行実験が行われ、イプシロンロケット3号機初め実用化された。 地上設備簡素化飛行安全システム追尾系の高度化) 「地上設備簡素化飛行安全システム追尾系の高度化)」では、新たに開発され複合航法による飛行安全用航法センサーRINA)を機体搭載することで、従来から搭載されていたレーダトランスポンダ(電波中継器)と地上レーダ局に頼らずロケット自力飛行できるようにする。これにより維持費設備更新高額な費用がかかる地上レーダ局を廃止することができ、打ち上げ費用削減が可能となる。この航法センサ29号機で初搭載されて、その後安全確認のために地上レーダ局による管制併用して飛行試験が行われたが、37号機で初め航法センサのみで飛行する。ただしその後飛行では地上レーダ局と併用して飛行続け安全確認続け予定である。

※この「基幹ロケット高度化」の解説は、「H-IIAロケット」の解説の一部です。
「基幹ロケット高度化」を含む「H-IIAロケット」の記事については、「H-IIAロケット」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「基幹ロケット高度化」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「基幹ロケット高度化」の関連用語

基幹ロケット高度化のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



基幹ロケット高度化のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、WikipediaのH-IIAロケット (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS