利己的遺伝子の進化とは? わかりやすく解説

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利己的遺伝子の進化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 06:27 UTC 版)

ミーム」の記事における「利己的遺伝子の進化」の解説

利己的遺伝子」も参照 ミーム学理解するために、利己的遺伝子理論理解する必要があるミーム学進化論基づいているが、進化論といっても、学者によって、また学者以外の論者によって、様々な理論がある。ミーム学必要なのは、利己的遺伝子理論である。ミーム学には以下の二つのことを理解する必要があるからである。 進化とはどのようなものか。 脳はどのように進化してきたか。 突然変異 遺伝子DNA中にあり、DNA細胞中にある。ひも状のDNAに、一般に生命設計図と言われる遺伝情報記録されているが、その中の、自分複製自己複製)を作ろうとする一部一部遺伝子と呼ぶ。DNAにはたくさんの遺伝子含まれる。後に述べるように遺伝子は「利己的に自己複製する。 DNA遺伝情報はほとんどの場合次世代正確に複製される。しかし、まれに複製時に遺伝情報誤り生じる。その誤り突然変異である。 突然変異といって様々な突然変異があり、突然変異定義することは単純ではないが、平易な表現では遺伝情報の中の小さな部分変化することである。さらに突然変異による進化が、急激に生物大きく変化させるのか、それとも少しずつ変化させていくのかといった議論は、意見分かれている。 自然淘汰 遺伝情報突然変異により、DNA多様化する。そして生存競争結果、どのDNA自己の複製次世代伝えられるということで、遺伝情報選択されていく。この選択自然淘汰である(自然淘汰原語natural selection日本訳語では自然選択もある)。ただし、このプロセス実際には複雑であり、研究議論続いている。 進化 生物遺伝子突然変異によって多様化し多様化した生物の中から、環境適応できる生物そうでない生物自然淘汰ふるいにかけられる。そうして残った子孫DNAは、滅びたDNAよりも適応力の強い要素持っているこのようにして生物DNA環境適応できる方向変化することが、進化である。 こうした進化が、DNA情報だけでなく、心の世界情報でも起きると考えるのがミーム学である。 利己的遺伝子 チャールズ・ダーウィンは、生物進化それぞれの個体子孫残せかどうか論じたが、ダーウィンDNAのことは知らなかった実際には、複製されるのは、個体そのものではなくDNAである。DNAの中の遺伝子が、自分複製を残すために進化しているというように、進化プロセス遺伝子視点考えるのが利己的遺伝子理論である。ただし、実際に遺伝子視点意志持っているという意味ではない。私達遺伝子視点立って考えることで、進化分かりやすくなるということである。 利己的遺伝子と呼ぶのは、進化人間の幸福のためではなく遺伝子がいかに自己複製増やすか、をめぐって進行しているように見えるからである。例えば、私達が強い性的衝動を持つように進化してきたのは、私たち性的衝動持たせることが、ある遺伝子自己複製必要だからであり私達生存や幸福のためではない、という視点である。一方私たち視点からは「私たち性的衝動持たせるために、その役割遺伝子がある」と言えるが、この視点間違い訳ではない両者の違い視点違いであり、「性的衝動生存幸福に役立たない」という意味ではない。しかし後に述べるように、遺伝子は必ずしも私たち生存役立たない遺伝子視点立てば遺伝子存在する理由は、自分複製DNAに残すためだけで、私たち生存貢献するためではない。遺伝子自分複製させるために、宿主である生物利用している。DNA細胞核の中で自分複製されるのを待ち宿主食べ物を探させ、結婚相手を見つけさせ、敵と闘わせる利他的行動 利己的遺伝子理論は、逆説的に動物利他的行動について説明できる働きバチは、母親女王のために働くだけで、自分では子供産まない。なぜなら、自分生む子供DNAよりも女王生む子供DNAの方が、自分DNAに近いからである。 進化の方向 このように利己的な遺伝子視点から見れば生物遺伝子自己複製するための乗り物である。利己的遺伝子にとって大事なのは自己複製であって私達肉体よりよいものになることや、よりよい知性身につけることではない。つまり遺伝子は、より多く自己複製ができる方へ進化していくのである。 そのため進化とは、生存適した肉体知性作るということは目的にしていない。したがって馬やなどの動物いつしか人間と同じ知性を持つようになるといった進化の方向性はない。例えば、昆虫人間あるよう知性持たないが、昆虫DNA人間より多く複製されている。 生物生存しなければDNAの複製できないため、DNA進化結果的に生存助けることが多いが、寿命が短い生物長い生物よりも繁殖力が強いケースもある。生存への利益利己的遺伝子複製への利益天秤に掛けられた場合複製への利益が常に優先される適応度 生物がどれだけ自分複製作れるかを「適応度」という。適応度の高い生物ほど自分たちを増やし適応度の高い生物自然淘汰生き残る、というのがダーウィンによる進化考え方であった。しかし利己的遺伝子考え方では、生物ではなく適応度の高いDNA複製されることで進化進行していくのである。すでに述べたように、複製されるのは生物個体ではなくDNAだからである。 適応度の高さは、ただ自己複製をいくつ残せるか、を意味するであって身体の頑強さ知性寿命といったものは一切関係ない適応度どのように決まるのか。資源奪い合いにより、あるDNAが他のDNA勝利することもありうるが、自然淘汰働き方資源奪い合いとは限らず地球環境変化異性奪い合いなど、この世あらゆるものが適応度影響与えうる。 「設計」されない進化 進化において、肉体的な機能は、その機能目的に合うように合理的に設計される訳ではない進化は「設計」されるものではなく様々な突然変異の偶然が重なって進化するからである。そのため、機能から考えれば不合理な肉体進化することもある。例え私達の目は不合理な構造部分がある。進化は偶然生まれたものや不合理な部分重なって進行していくためである。生存適す遺伝子と、生存適さない遺伝子では、もし後者の方がより適応度が高い場合自然淘汰生き残るのは後者遺伝子である。 「進化」とはこのような現象であるため、ミームの進化においても、私達利益になるかどうかではなく適応度の高いミーム生き残る。 脳 私達の脳は、芸術生み出した学問積んだりすることができ、これらはDNAの複製に結びつかず、不合理であるが、進化とは目的に合うようになった段階ストップする訳ではないのであるDNAにとって脳の本来の目的は、DNAの複製のための生存生殖であるが、脳は生存生殖注意を払うようになってからも進化が止まらなかった。そうして私達の「意識」が、生存生殖の機能の上に偶然生まれ、その意識の上に、様々な思考作られているのであるそうした思考は、DNAの複製という目的からすれば不必要な脳の使い方である。しかし脳の進化設計されたものではないがゆえに、こうした脳の使い方可能になったのであるこのように進化してきた脳は、優先的に生存生殖注意を払うため、その脳が行思考生存生殖自然に偏る。この傾向ミーム考え上で大切なポイントになる。 また、人間の脳石器時代からほとんど進化していない。脳は石器時代生き延びて子孫を残すように進化したが、現代社会石器時代とは大きく異な世界である。これは脳と現代社会大きなギャップがあるということである。この点もミーム理解する上で大事なポイントになる。 ミーム 生物DNAの複製のために一生捧げるが、人間例外的な存在とも考えられる。なぜならミームの進化DNA進化よりも生活に影響力を持つからである。 DNA情報記録し複製することができるように、ミーム情報記録複製を行う。ただしミームの進化DNAよりも非常に速く進行するDNA数千年かけて進化進め、人は一生の間にDNA進化することはないのに対してミーム数日数時間進化できるであろう。そのため、現代私達には遺伝子進化よりミーム進化の方がずっと大きな影響力があるのである

※この「利己的遺伝子の進化」の解説は、「ミーム」の解説の一部です。
「利己的遺伝子の進化」を含む「ミーム」の記事については、「ミーム」の概要を参照ください。

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