公的支援の見直しと新たな協議体制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 06:18 UTC 版)
「神戸電鉄粟生線」の記事における「公的支援の見直しと新たな協議体制」の解説
2012年度・2013年度の状況を踏まえ、2014年度には兵庫県・沿線三市と神鉄の協定に基づき、新たな数値目標の設定や助成期間・方法の見直しを行うことになった。沿線三市のうち小野市は、粟生線の利用状況が一向に改善しない現状を踏まえ、上下分離方式導入の検討についても前向きな姿勢を示すようになっていたが、2015年1月、蓬萊務・小野市長は「分社化や上下分離も含めて議論を進めるべきだ」と表明。「(活性化協議会の)利用促進策は大事なことだが、それだけでは経営の根幹は変わらない」「経営の責任は神戸電鉄にあり、透明化すべきだ。関係市も加わって経営戦略を考える会議が活性化協議会とは別に必要」「その会議で分社化や上下分離、運賃の値上げなどの議論を望む」「これまで自治体が経営に直接関与するのは避けてきたが、そうは言っていられない時期に来ている」等と路線の経営と存続について強い危機感を示した。小野市は同年3月発行の市の広報「広報おの」平成27年3月号から1年にわたって粟生線に関する連載記事や特集記事を掲載し、市民の関心を喚起する取り組みを行った。また活性化協議会も2014年度中、沿線飲食店と提携したスタンプラリーの開催や学生向けの粟生線活性化案コンテストなど、こまめな支援策を展開したものの、路線の収支は改善しなかった。神戸電鉄は同年3月30日の協議会の会合の最後に資料を配布し、「路線存続のためには上下分離方式導入が不可欠」と初めて協議会において公有民営方式移行に言及、兵庫県・沿線三市による2012年度からの支援が残り2年となったため、「遅くとも2015年度中に地域公共交通のあるべき姿を定める必要がある」と述べた。神戸電鉄側は上下分離方式によって存続となった他路線の具体例を説明するとともに、他路線の廃線事例も挙げるなど危機感をにじませた。沿線三市は賛否を保留したが、座長の正司健一・神戸大学副学長は「粟生線が機能しているうちに議論する必要がある」ともはや時間が無くなってきていることを指摘した。また同協議会に立会人としてオブザーバー参加していた兵庫県も2015年度より委員とし、神戸電鉄と沿線三市の話し合いに加わることになった。県はIC乗車券の記録情報を分析し、データを活用する考えを示した。 神鉄側が上下分離方式導入をめぐり踏み込んだ姿勢を示したことに対し、沿線三市の足並みの乱れが表面化した。小野市は「議論が必要」との姿勢を示す一方で、三木市は上下分離方式については協議会発足当初より「受け入れられない」と拒否している。3月30日の協議会において配布された神鉄作成の資料に「路線存続のためには上下分離方式導入が不可欠」との神鉄側の提案が記載されていたことについて、協議会会長の北井信一郎・三木市副市長は「神鉄側が配布・説明した上下分離方式が記載された資料は、会長としての私が確認・承認したものではなく、また協議会開催前に配布しないよう神鉄側に指示したにも関わらず配布されたもの」「議事進行において会長の指示が守られない」と反発、「本来1期2年で交代するべき会長職を2期4年務めた」との理由から翌31日協議会会長と委員の職を突如辞任した。同年4月28日、三木市から市のまちづくり部長が代わりの委員に就任したものの、三木市側の強い姿勢に対し他の委員からは戸惑いや不安の声が上がり、協議会会長は空席となる異例の事態となった。同年7月13日、三木市まちづくり部長に代わり薮本吉秀・三木市長が委員となり、後任の会長に就任した。会長就任に際し薮本市長は上下分離には言及せず、新開地駅経由・粟生駅経由で他社線と相互乗り入れを行うことを提案、蓬莱・小野市長が示した「関係市も加わって経営戦略を考える会議が活性化協議会とは別に必要」との意見を受け、粟生線存続に向けて議論する沿線三市長らの新組織を早急に設置したいと述べた。 さらに2016年1月、薮本会長はこれまで神鉄と沿線自治体・住民の話し合いの場としての任意協議会であった粟生線活性化協議会をについて、2016年4月より「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく法定協議会に移行させ、粟生線の「地域公共交通総合連携計画」について、同法により国から特定事業の認定を受けることを目指す方針を提案。また粟生線存続に向けて議論する沿線三市長らの新組織については2月にも発足させる予定を示した。 2015年度も粟生線の利用状況は低迷し、同年度の年間輸送人員は646万人に終わった。神鉄は2016年5月21日にダイヤ改正を行い、粟生線のみさらに減便した。平日早朝5時台の鈴蘭台駅 - 小野駅間の上下各1本を減らしたほか、粟生駅での列車発着時刻を見直し、小野駅 - 粟生駅間については粟生駅で加古川線・北条鉄道と接続していない列車の運行をすべて取りやめた。 2016年12月、兵庫県と沿線三市は、2012年度から行っていた無利子融資などの公的支援を2016年度をもって終了する方針を固めた。粟生線の収支は5年間にわたって全く改善しなかったものの、神鉄側の経費節減もあり、神鉄の鉄道事業全体は堅調に推移。既に鉄道事業の経常黒字化を達成しているため、粟生線に対する無利子融資や三木市・小野市による収入補填については延長しないことを決めた。2017年度以降も活性化協議会による利用促進策の推進や、老朽化した車両や設備の更新に関する補助などの支援は継続される。2012年度から行った無利子融資40億円については2017年度内に神鉄が県と沿線三市に一括返済することになっている。 2017年1月13日、神鉄は同年3月に実施するダイヤ変更の概要を発表し、この中で粟生線についてさらなる減便を明らかにした。発表時点で10時 - 15時台に毎時4本運転していた粟生線西鈴蘭台駅 - 志染駅間について毎時2本を減便(西鈴蘭台折り返し化)し15分間隔から30分間隔に変更した(鈴蘭台駅 - 西鈴蘭台駅間、志染駅 - 粟生駅間については変更なし)。これに伴い日中の急行は上りが準急、下りが普通に種別変更され設定がなくなった。 2020年3月14日のダイヤ改正に伴い、三木市独自の施策として、2年間の社会実験として昼間時間帯(10時台 - 14時台)の志染駅 - 三木駅区間が上下各4便増便されている。また神戸電鉄も志染駅 - 小野駅区間で上下各1便増便している。これによりこの時間帯は当路線の三木市内にある駅で、恵比須駅以遠では大村駅を除き上下5便ずつ増便される(大村駅のみ1便ずつの増便)。ただし、利用の少ない昼間時間帯・深夜時間帯を中心に列車の運行が見直されたほか、快速の設定が無くなった。
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