全波一斉放送
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 09:11 UTC 版)
原則として、日本国内で最大震度6弱以上の地震が発生した場合、または津波警報が発表された場合は、NHKが送信する国内放送および国際放送(NHKワールド)全ての通常放送を強制中断し、全波一斉に放送する。これを九波全中(きゅうはぜんちゅう)ともいう。 東京渋谷のNHK放送センターにある「ニュースセンター」制御卓で送出「開始」ボタンを押す事で一斉放送が始まる。NHKの番組伝送制御システム上、ローカル放送が行われている時間でも東京から「QF信号」という番組切り替えのための制御信号を出すことで、全国の放送局の放送を東京発のニュースに切り替えることができる。これをQF運用と呼び、運用の実施中はローカル放送ができない。 各地方放送局・支局・報道室は緊急地震速報の「高度利用者向け」を用いる予測ソフトをパソコンにインストールしている。 全波一斉放送を開始する際にはチャイム音が流れる。大津波警報・津波警報の発表が臨時ニュース開始より先にあった場合は、緊急警報放送の信号音のみでチャイムは省略する。 地震、津波以外に全波一斉放送した事例として、次の4件がある。 1980年5月19日の衆議院解散(1980年5月16日の第2次大平内閣不信任決議案可決による69条解散・通称ハプニング解散) 昭和天皇の危篤、崩御、及び新元号「平成」決定 - 1989年1月7日 湾岸戦争開戦 - 1991年1月17日 北朝鮮によるミサイル発射 - 2017年8月29日・9月15日(チャイムなし) なお、東京のニュースセンターでは、交替制でアナウンサーが24時間待機しており、いつでも放送に対応できるようになっている。全波一斉となった場合、総合テレビの放送をそのまま流す「T-Rスルー」を行うことがあり、その場合、当然ながら映像のないラジオ放送に配慮し、アナウンサーが「テレビの画面は○○の映像です」という注釈をつけて、同時放送であることを意識して放送することが多い。この注釈を忘れる・または放送内容によって注釈を省略することもあるため、状況によってはラジオセンター側で音声をかぶせて注釈をつける(ボイスオーバー)こともある。 一旦全波一斉放送となった場合、ニュースの緊急度が下がるにつれて、全波一斉から段階的にチャンネルが離脱する。離脱が早い順にEテレ、BSプレミアム、ラジオ第2、FMの順で離脱する。総合テレビ、BS1、ラジオ第1が最後まで残る。ただし状況によってはラジオ第1も離脱し、ラジオセンターから独自の地震関連のニュースを放送する(テレビ同時音声だと被災状況等が分かりにくくなるため)。また、BS1も離脱する場合もある。阪神・淡路大震災の際には、逆に大阪放送局が独自に災害報道に切り替えた。 2008年7月24日0時26分ごろ発生した岩手県沿岸北部で発生した地震の際に、同日0時28分から臨時ニュースが放送されたが、教育テレビの放送は同日1時17分で予定通り終了したほか、2009年8月11日5時07分に発生した駿河湾での地震でも同日6時00分から通常編成を行った。このように、臨時ニュースでも、チャンネルによっては放送時間は守られる傾向にある。 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)においても、14時46分の地震発生直後から数時間、全波一斉放送による速報を行った後、総合テレビ・BS1では3月19日5:00まで、BShiは3月14日4:30まで連続して放送。ラジオ第2は3月13日の津波警報解除まで、総合テレビの副音声で放送していた在日外国人向けの津波警報のアナウンスを同時放送し、通常放送に復帰。教育テレビは3月14日7:00まで地震関連のニュースを放送した後は、視聴者保護のための7:00 - 9:00と16:00 - 18:00の児童向け番組の放送と0:00 - 5:00の休止時間以外は震災生活関連情報(BS2同時)を3月19日0:00(19日24:00)まで行い、3月19日5:00から通常番組に復帰した。その後も総合・BS1は3月31日まで、深夜フィラーを含めた定時ニュースを同時放送し、BS1独自内容の『NHK BSニュース』も休止した。ラジオ第1では前述のT-Rスルーを40分行った後の11日15時30分から独自放送に切り替え。16時からは仙台発の東北ブロックローカル放送を開始、さらに各県単位でのローカル放送も開始し、仙台では全国放送を適宜地域放送に切り替え、盛岡では重大事案以外のほとんどを地域向け生活情報に切り替え、福島では随時、避難所からの電話中継や、放射線専門家等への電話インタビューを実施した。 NHKワールドTVは2010年より英語放送による完全独自編成となっているため、緊急報道は『NHK NEWSLINE』の放送スタジオから英語による臨時ニュースを放送、英語字幕のティッカー表示で情報提供する。 NHKワールド・プレミアムは国内向け放送の強制的な切り替えから数秒の遅れが生じる。また、スクランブル放送の状態になっている場合は直ちにノンスクランブル放送に切り替える操作も行う。また、ワールド・プレミアムでは緊急警報放送の信号音は流れないが、NHKワールド・ラジオ日本では回線の都合で信号音が流れる。離脱の際、NHKワールド・プレミアムは断り書きのテロップが画面上に表示したのち、通常編成に戻る。NHKワールド・ラジオ日本ではラジオ第1放送との同時放送をほぼすべての時間で行っているため独自編成の放送がない限り離脱することはない。 通常番組が臨時ニュースによって一時中断や途中打ち切りあるいは全編放送できなかった場合、後日改めて放送される。再放送番組に関しては場合によっては放送されないこともある。ラジオ第2放送の株式市況と気象通報については緊急地震速報で中断になった場合でも再放送は行われない。
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