作品への影響とは? わかりやすく解説

作品への影響

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/22 08:38 UTC 版)

平岡美津子」の記事における「作品への影響」の解説

三島小説戯曲には、美津子モデルしたもの投影させたものなどが少なからず散見され、以下のようなものがある。 三島美津子幽霊登場させた短編朝顔』を1951年昭和26年)に書いているが。『朝顔』には次のような記述がある。 妹の死後、私はたびたび妹の夢を見た。時がたつにつれて死者記憶薄れてゆくものであるのに、夢はひとつの習慣になつて、今日まで規則正しくつづいてゐる。(中略夢の中では妹は必ず生きてゐた。医者から見離された身が、はからずも奇蹟的に助かつて、私たち家族のまどゐのなかに再び見出されたりするのである。「よかつたね、治つてよかつたね」 さういひながら、私は一脈の不安をぬぐえずにゐる。もしかこれが夢ではないかと疑ふ気持をぬぐえずにゐる……。私は永い旅を終へて家へかへつた。(中略しばらくして玄関出て来たのは妹である。 — 三島由紀夫朝顔三島戯曲朱雀家の滅亡』(1967年)のヒロイン・璃津子(りつこ)を演じた村松英子は、この女学生ヒロインの名が「美津子」と似ていることから、「この作品先生ノスタルジーですね」と三島尋ねてみると、三島優しく微笑し、「そうだよ。僕のノスタルジーだよ」と言ったという。また、三島戯曲には他にも『美濃子』(1964年)という恋愛劇がある。 短編岬にての物語』(1946年)は、兄と妹の愛を暗示しているとされている。他にも、短編家族合せ』(1948年)、『罪びと』(1948年)、長編幸福号出帆』(1955年)、『音楽』(1964年)、戯曲熱帯樹』(1960年)など、兄と妹異性関係近親相姦描いた作品がある。粉川宏(集英社三島担当編集者)は『熱帯樹』に関し、「亡き妹・美津子さんに寄せ思いが、戯曲のかたちで告白されているように感じられてならなかった」とし、瀬戸内寂聴は、「兄と妹近親相姦書いた熱帯樹』という戯曲があるけれど、妹さんを思う気持ち強かったんですね」と語っている。三島は『熱帯樹』の劇場プログラムの中で、「肉慾にまで高まつた兄妹愛といふものに、私は昔から、もつとも甘美なものを感じつづけて来た」とも記している。 『仮面の告白』の園子は、三島初恋女性三谷邦子(三谷信の妹)がモデルとなっているが、野坂昭如はそれに関し、「園子には、妹の投影があった、犯してならないというためらいがあった」とし、「しかるに園子は、敗戦後すぐに婚約、その年の暮結婚している。美津子作品の中で、娼婦仕立ててしまうのは、この園子女心変転ぶりに、自分ひたむきであっただけ、絶望し軽蔑し、これを、妹にも及ぼしたのだろう」と、三島短編家族合せ』(1948年)において、妹を娼婦にしている理由並行しながら作品分析している。 三島は、短編『罪びと』(1948年)で、リヤカー荷物運搬中に飲んだ原因チフスになり亡くなるミッション・スクールの「郁子」を登場させているが、この美津子をモデルにしている郁子主人公許婚という設定となっている。また、郁子を飲むことを勧めた同級生は、主人公夏休み避暑地あやまち犯したという設定で、三島軽井沢接吻をした三谷邦子(『仮面の告白』の園子)をモデルとしているが、このことについて村松剛は、「妹の死」と「失恋」という2つ主題が、この小説では混ぜ合わされていると述べている。また、村松剛が、『熱帯樹』に登場する妹の名も「郁子」、『純白の夜』のヒロインのも「郁子」で、この3作品に同じ名前を付けたことに何か特別な味があるのかと三島尋ねた時に、「そんなことに気がつくのは、君くらいのものだろう」と三島苦笑しそのことについてあまり言いたくないという感じだったので、村松話題転じたという。 松本徹は、「天使的な純粋無垢さへの切実な希求」(『菟と瑪耶』、『サーカス』、『岬にての物語』、『頭文字』、『盗賊』、『翼』など)と、「退廃的な色彩同性愛扱ったもの」(『中世』、『煙草』、『殉教』、『仮面の告白』、『禁色』など)、という2つ三島相反する作品系列挙げながら、さらにそこに、もう一つ平行する系列として、「近親相姦扱ったもの」(『軽王子と衣通姫』、『春子』、『家族合せ』、『火宅』、『灯台』、『聖女』、『熱帯樹』など)を挙げている。そして、『家族合せ』の作中、兄が〈僕の体は十歳の子供にすぎないんだ〉と言う場面松本注目し、「彼は〈純潔〉という不能に掴まれた〈十歳の子供〉」で、「してはならぬ行為へと誘われた時、禁忌犯す恐怖によって、不能に陥ったまま、今に至っている」として以下のように解説している。 この兄に等し人物たちが、他の二つ系列作品では、ひたすら純潔」を目指すか、性的欲望満たすため同性へと向かう。単純化すれば、こういう道筋見えてきそうに思われます。すなわち、近親相姦への恐怖によって、女への性的要求を自ら封じ込め不能に陥るが、同性愛者自分規定することによって、その領域においてのみ欲望解放した、と。基軸になるのは、実は近親相姦への恐怖なのかもしれません。そこから、『仮面の告白』とか『禁色になったと見ることができそうです。 — 松本徹多面体としての性―『禁色』『潮騒』『家族合せ』など」 そして松本は、「近親相姦とか不能」といったことに言及したが、それは、三島の「感受性鋭敏で、倫理意識常人以上に厳しからこそ、こうなった」と考察しながら、三島が「男が成人する道筋をゆっくり、さまざまな角度から照らし出し克明に補佐しながら、たどった」とし、その性は詳細に見ると「多面体」であり、「そこから三島は、幾多優れた作品生み出している」と解説している。

※この「作品への影響」の解説は、「平岡美津子」の解説の一部です。
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