他の鉄道事業者への譲渡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 01:34 UTC 版)
「廃車 (鉄道)」の記事における「他の鉄道事業者への譲渡」の解説
廃車になった後、他の鉄道事業者へ譲渡される車両もある。 大都市では性能的に古くなった車両ではあるが車体や機器は極端に劣化しているわけではなく、高速走行が少なく保守に手間がかけられる地方の私鉄から見れば高い品質性能を保っていることが多く、線路がつながっていたり系列会社であったりすればなおさら交渉もスムーズに行われやすい。 例えば能勢電鉄の車両はすべて阪急電鉄から譲渡されたものである。また、旧性能電車を使用していた頃の新京成電鉄は京成電鉄から譲渡を受けていた。さらに直通運転を行なっている事業者同士であれば車両規格や保安装置が共通であることから譲渡としては好都合となる。この形で譲渡された車両には営団5000系電車→東葉高速鉄道1000系電車や京急1000形電車 (初代)→北総開発鉄道7150形電車などがある。特異な例では、子会社から本社に譲渡された大阪府都市開発3000系電車→南海3000系電車の例がある。 車両丸ごとだけではなく、台車や車体・あるいは部品1個単位といったいわゆる「バラ売り」で譲渡されることがある(元営団の3000系電車が銀座線の2000形電車や京王電鉄の5000系電車の譲渡用に台車を提供した例や、営団5000系の冷房用電源装置を長野電鉄が通勤車冷房化用に譲り受けた例など)。 譲渡に際しては無償での譲渡となる場合も多いが、比較的新しい車両やグレードが高い車両の場合には有償で譲渡(売却)されることもある。また、譲渡先の設備に合わせた車両改造を譲渡元の鉄道会社に委託する場合、その費用を合算することもある。 災害で全線運休となった鉄道会社から、他の鉄道会社へ譲渡される場合もある。2005年9月6日の台風14号による暴風雨で鉄道設備に甚大な被害を受け、全線運転休止(のちに会社解散)となった第三セクター鉄道の高千穂鉄道より、JR九州へTR-400形2両と、第三セクター鉄道の阿佐海岸鉄道にTR-200形1両がある。 特殊な例では東急3700系電車→名鉄3880系電車という大手私鉄同士での車両譲渡がある。これは、1973年(昭和48年)の第一次オイルショックの影響から急増した利用客対策として導入が決まったもので、自社の3800系と同じく運輸省規格型A'形で、なおかつ搭載するTDK-528系主電動機が当時名鉄に在籍した自動加速制御の吊り掛け車(AL車)各形式と共通機種であったことから譲渡に至った。 太平洋戦争中は鉄道車両も統制物資の一つとなり、中古車両の譲渡も政府機関の鉄道軌道統制会を通じて行われた。戦後の復興期には輸送状況の逼迫を打開するため、大型の新製車両を大手私鉄に割当てる代わりにその会社の保有する小型車や中型車の地方私鉄への譲渡義務付けが政策的に行われたことがある。こちらも参照。戦前・前後は仲介業者を通じての売買や、私鉄経営者協会(日本民営鉄道協会の前身)発行の会報『経協旬報』といった業界誌への譲渡・譲受希望広告といった方法などが使われた。近年では一般向けの鉄道雑誌である『鉄道ピクトリアル』に広告が掲載されたことがある。 2000年代に入ると大手私鉄→地方私鉄のみならず、第三セクターや地方私鉄相互間での譲受も見られるようになった。大手私鉄の多くが20m級の大型車両を製造し、地方私鉄で需要の多い16 - 18m級の小、中型車両の製造が少なくなっていること、また現状で残っている大手私鉄16 - 18m級車の多くが第三軌条方式や標準軌用のもので譲渡先の地方私鉄と仕様が大きく異なり、改造費用が多くかかることなども一因とみられる。 その一方首都圏を中心とした各社では引き続き、車両交代時期に入った車両の廃車が続出しているが、そのまま解体されることも少なくない。改造に高い加工技術が要求されるステンレス車やアルミ車ばかりになったこと、機器の耐久性に劣るインバータ車が多くなり改造時に制御器の載せ買えが必要になるなど改造費の高騰化が顕著になったことに加えて、一般形電車と呼ばれる安価かつ他社車両と同規格で造れる電車が出現したのも一因となっている。 これについては鉄道会社によっても考え方があり、積極的に譲渡先を探す鉄道会社もある。例えば、東急電鉄では昔から地方私鉄への譲渡実績が多い。西武鉄道や京王電鉄なども同様で、東急テクノシステムや京王重機整備といった傘下の車両整備会社の活動が活発なこともある。逆に東武鉄道や近畿日本鉄道は廃車車両の機器を自社で再利用することが多かったことから、かつては譲渡実績がほとんどなかった。特に関西私鉄の車両は更新して自社で長期間使用する事業者が多いことから、他社への譲渡は少数に留まっている。
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