クレームとトラブル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 09:20 UTC 版)
クレームはしばしば、製品やサービスに不良品のような不具合ないし不足、または企業の活動に伴う「騒音」等の公害といった社会(およびこれを構成する個人)の側と企業側との間のトラブルによって発生しうる。企業が顧客に対して行なった強引な営業手法に起因する混乱や不信感もクレームの原因となり得る。強引な営業手法としては、悪徳商法で問題視される脅迫や詐欺等の明確に違法なものがある。このようなケースでは、クレームをつけられた側に非があると判断されることが多い。 明確な非が、クレームをつけた側、つけられた側双方に見つけにくいタイプのクレームも存在する。この種のクレームは、 誇大広告 複雑な契約内容・料金体系 不安になるような事柄に関する説明不足 契約上の重要事項に関する説明不足 都合の悪いことの報告のタイミング 契約時には予想できなかったことが起こる(暗黙の期待) 紛らわしい用語 安請け合い等の特異な企業、取引体質 顧客に対する姿勢 等のように、契約の曖昧さ、心象の問題の双方が絡む問題である。 また、事例も多岐にわたるが、「非の所在」、「非の有無」を含め、議論が平行線になる傾向がある。さらに、個別事案における結論についての予見可能性が低く、必ずしも安定した法の適用ができないという問題もある。そのため、契約一切に関して、「何がどのように問題になり、誰が責任を負うべきか」に関するリストの集約が求められる。 このような「クレームの原因」ではあるものの、必ずしも違法とは言い難いものに関しては、企業側にもクレームを避ける上で「有利誤認、優良誤認あるいはそれに準じる事態を避ける努力」が要求されると同時に、消費者側にも「宣伝で悪い部分を強調することはない」ことを考慮して、必要となる仕様、要求を購入前に明確にした上で、購入をすることが求められる。もっとも有利誤認、優良誤認は、度が過ぎれば公正取引委員会より排除命令を受ける。 マーケットクレームの一例として、最近では、意図的に有利誤認、優良誤認をさせた上で、顧客側が誤認によって損をした後になって個別に「それが顧客側の誤認であることを強調する」手口がよく報告される。 誇大広告、有利誤認の例としては、携帯電話、不動産の契約、宣伝形態が最近よく話題になる。例えば、携帯電話では移動体通信の端末の販売と通話回線の契約形態などといった複雑な構造から損得・利害関係が判り難い側面もあり、これが混乱を招いて企業と顧客間の争いに発展する場合もある。 具体的には携帯電話契約における「全機種¥0 分割払いで『¥0』」のような誇大広告や、不動産賃貸物件で契約撤回が不可能、あるいは極めて難しい状態になった後に「月々の家賃のほかに毎年入館料(更新料)が必要」であるとか、割賦販売における「携帯電話は実質0円で違約金もありませんが、2年以内に解約すると7万円の月賦が残ります」などのように、契約を取り交わした後で顧客に不利な情報を説明し始めるなどの不誠実な対応が問題視される。不安になるような事柄に関する説明不足としては、料金の引き落とし(クレジットカード等)の仕組みや、そのタイミング等が明確になっていない、あるいは残高不足等で引き落としが出来なかった場合等のイレギュラーだが起こりえないとは限らない事柄へのペナルティや対応方法、支払方法等が明確に説明されていないケース等について、ネット上で相談が書かれることが多数ある。 暗黙の期待、あるいは顧客側が暗黙の了解事項と思っていたことに関するクレームもある。つまり顧客側が「まさかこの機能/サービスが勝手に追加/削除されることはないだろう」と思っていたことや、「本来あるべきだと顧客側が思っていた機能や表示、サービスがない場合/なくなった場合」、その他「まさかそんなことにはならないだろう」ということが起こり、顧客が想定できなかった問題によって顧客が準備ができないままいやな思いをする場合にもクレームに発展することがある。顧客側にとって「まさかそんなことにはならないだろう」ということが起こったケースとしては、例えば、ある通信販売業者において、「ほしいものリスト」という「個人の私的な備忘録」を思わせる名前のリストが、実は、契約上は、通常設定では全世界に対して自分の「ほしいもの」を公開してしまう機能であったことから、気付かないうちに個人の趣味・嗜好といったものが公にされてしまう事態に至り、クレームの嵐が起こり、また、有名人のプライバシーがネット上にさらされる結果となった事例がそれにあたる。 その根底にはそのような誤解をうけさせるようなキャッチコピー、名称などに反した予想外のことが起こり混乱することに加え、顧客側の過度な期待もある。過度の期待の例として、契約上は厳密な意味が存在するが、日常語の範囲では、意味が多様に存在する場合である。例えば、航空機の予約における「シャトル往復の未使用」がそれにあたる。未使用は日常語では「往路のみの使用の場合は復路分は未使用」という言い方をするが、往路分を使った場合には扱い上は「使用済み」となる。このことを知らなかった利用者が「復路の予約(オープン予約を含まない)時に電話が繋がらず、復路のキャンセルが出来なかった上、往路を使っていた為、未使用でもない。結果、券がただの紙切れになってしまった」というケースが発生する。この場合騙されたに近い印象を受けることになり、利用者の行動は二度と航空機を利用しなくなるか、クレームへと発展する。 また、「安請け合いは当然」「納期は絶対に守らない」といった信頼以前の企業もあり、商社マンや資材部は、クリティカルパーツの調達の関係上、このような会社からの資材の調達を代行することもある。その際に業者の特性を一つ一つ記録に取り、商社側から見て顧客に当たる側には迷惑がかからないよう様々な工夫をしているが、個人では業者の特性を一つ一つ分析して、比較検討をした上で、物の流れに問題が生じないように工夫することは困難である。このように特性の把握が困難な会社との取引もクレームの対象となる。 上記のケースはいずれも違法とは言えず、「消費者が内容を十分理解しきれないまま契約してしまったこと」とみなされる傾向もあるが、一方で業者によっては説明する側の「従業員の質」や「説明すべき内容が複雑過ぎること」、あるいは「意図的に混乱を誘起し、有利誤認を起こさせるような広告戦略」等、以下にあげるような傾向が指摘されるケースがある。 「すぐ店員が変わるために内容を覚えられていない・誤認している」 「担当者によって言うことが違う」 「ひとつのプランの説明に30分もかかる」 「プランが何種類あるのかすら答えられない」 このような状況が慢性的に続いている劣悪な業者相手では、説明を顧客側が理解ないし憶えきれなかったりすることや、場合によっては従業員側が質問や解答を理解できないまま話をするなどの問題行為から、「言った言わない」を繰り返し、顧客が完全な納得をするまで問答を繰り返せば、顧客側に精神的な苦痛を与えてしまう可能性すらある。さらに、時間をあけて再度ということになると、今度は業者がサイズすら整っていない散逸した契約書や資料を用いることになり、余計に混乱の原因になる。
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