【F-15E】(えふじゅうごいー)
McDonnell Douglas F-15E Strike Eagle(ストライクイーグル)
マクダネル・ダグラス社の大型制空戦闘機・F-15をベースに開発された戦闘爆撃機(マルチロールファイター)。
原型となったF-15は、当初「コストを度外視し、『あらゆる状況下で』『どんな敵機にも』勝利できる」能力を持たせることをコンセプトとして開発され、優れた空中戦機動能力と目視外射程戦闘能力を備えるべく、テニスコートとも俗称される大きな機体と、世界初の推力重量比が1を超える強力なP&W F100-PW-220 ターボファンエンジンを装備してデビューした。
この大きな機体に見合う発展性が非常に高いことに着目され、原型機の高度な空中戦能力を大きく削ぐことなく対地攻撃能力を付加したマルチロールファイターとしてデビューしたのが本機である。
本機は、外見上はF-15の複座型であるF-15Dにコンフォーマル燃料タンクをつけただけのように見えるが、チタニウムを多用した機体の軽量化と構造強化、グラスコックピット化などの改修が行われており、従来のF-15との共通部分は、エンジンやアビオニクスを除いてほとんどない。
通常、マルチロールファイターは戦闘攻撃機に分類されるが、本機は戦闘爆撃機に分類され、F-111の後継機として採用された。
しかし、本機は前任機に比べ翼面荷重が小さい事から、低空侵攻時の安定性はやや劣る。
本機は、全世界の戦闘機の中で最も多くの兵装を搭載でき、最も航続距離が長く、アメリカ空軍の使用する兵装の全てを搭載することができると言っても過言ではない。
その攻撃力は湾岸戦争を始め、ユーゴスラビア戦争、アフガン戦争、イラク戦争で実証されており、特に湾岸戦争では、F-111と並び精密爆撃を実施できる数少ない戦闘機の1つであった。
夜間に行われた近接航空支援任務において、8発のレーザー誘導爆弾を搭載した2機のエレメントが、搭載した16発の爆弾で16両の車輌に直撃弾を与え、また別の機体はホバリング中のヒューズ500ヘリコプターに直撃弾を与えたという。
なお、「ストライクイーグル」はマクダネル・ダグラス社が付けたもので、正式な愛称ではなく、「マッド・ヘン」(アメリカオオバンの別名)や「ビーグル」(ボマー・イーグルの略)などのあだ名で呼ばれることもある。
スペックデータ
乗員 | 2名(パイロット・WSO) |
全長 | 19.43m |
全高 | 5.63m |
全幅 | 13.05m |
主翼面積 | 56.5㎡ |
空虚重量 | 14,515kg |
最大離陸重量 | 36,741kg |
最大兵装搭載量 | 11,113kg |
エンジン | P&W F100-PW-229ターボファン(推力129.4kN(A/B使用時))×2基 |
最大速度 | マッハ2.5 |
海面上昇率 | 15,240m/min+ |
実用上昇限度 | 18,290m |
最大航続距離 | 2,400nm |
戦闘行動半径 | 685nm |
武装 | M61A1 20mmバルカン砲(装弾数450~512発)×1門 |
兵装 | AIM-9「サイドワインダー」 AIM-120「AMRAAM」 AGM-65「マーベリック」 AGM-84「ハープーン」 AGM-84K「SLAM-ER」 AGM-88「HARM」 Mk.82/83/84 GBU-10/-12/-15/-24「ペイブウェイII」レーザー誘導爆弾 GBU-28「バンカーバスター」レーザー誘導地中貫通爆弾 Mk.20「ロックアイ」クラスター爆弾 CBU-87/-89/-97クラスター爆弾 JDAM B61核爆弾 LAU-3Aロケット弾ポッド 増槽など |
バリエーション
- F-15E(236機):
初期量産機。
- RF-15:
プロトタイプF-15E(複座型原型2号機:71-0291)の機体を改修した偵察機型デモンストレーター。
偵察用のFAST PACKを装備する。
- F-15F:
単座の制空戦闘機型。
イスラエルやサウジアラビア、西ヨーロッパ諸国への売り込みが図られていたが、構想のみに終わった。
- F-15FOWW:
F-4G「ワイルド・ウィーゼル」の後継機計画「FOWW」で提案された機体。
ワイルド・ウィーゼル用の機材を搭載し、その一部は胴体下面にコンフォーマル・パックに収めて装着される。
武装はAGM-88「HARM」、AGM-65「マーベリック」が予定された。
F-16が採用されたため実現せず。
- F-15H:
ギリシャ空軍向け。Hはヘラス(Hellas)を意味する。
F-16とミラージュ2000が採用された為実現せず。
- F-15I(25機):
イスラエル向け。愛称は「ラーム(稲妻)」。
エンジンはF100-PW-229を、レーダーはAN/APG-70を搭載している。
- F-15L:
F-15Iの空対空特化仕様。実現せず。
- F-15FX:
原型より大幅に改良された、日本向け提案モデル。
APG-63(V)3もしくはAPG-63(V)4を搭載予定とされたが、F-35の導入が決まったため実現せず。
- F-15K「スラムイーグル」:
韓国空軍向け。
アメリカ空軍向けの最終アップグレード型「E-227」をベースに、更にアップグレードを加えたもので、初めて戦術電子戦システムが輸出されている。
エンジンはF110-GE-129のライセンス生産型であるF110-STW-129およびF100-PW-229EEPを搭載している。
新たに、AGM-84「ハープーン」空対艦ミサイルとAGM-84H「SLAM-ER」空対地ミサイルの搭載能力が付加されている。
- F-15S:
サウジアラビア向けダウングレード型。やや空対地能力に劣る。
- F-15SG:
シンガポール空軍向け。旧呼称F-15T。
基本的にF-15Kと同じだが、エンジンは運用寿命延長(SLEP)ハードウェア型のF110-GE-129Cを、レーダーはAPG-63(V)3AESAレーダーを装備している。
- F-15U:
アラブ首長国連邦(UAE)向け。
水平尾翼を廃してデルタ翼化している。
同国はF-16を採用したため実現せず、韓国向けとして提案されたが、こちらも実現しなかった。
- F-15SE Silent Eagle(サイレントイーグル):
輸出市場向け改修型。
設計を一部見直し、コンフォーマル燃料タンクのウェポンベイ化やレーダー波吸収素材を使用するなどステルス性を高めている。
元のF-15Eより軽量に設計されている。
1機あたり1億USドル(約100億円)で販売する予定で、イスラエル・サウジアラビア・日本・韓国・シンガポールに提案している。
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