会社法 資本金、配当、計算

会社法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/27 03:57 UTC 版)

資本金、配当、計算

資本金の最低金額に制限はない。資本金を1円として各種の会社を設立することができる。また、設立後に一定の手続きを行うことによって資本金の額を0円にする事も可能[注釈 17]

剰余金配当などの資本の部における計数の変動は、定時株主総会に限らずいずれの株主総会において原則可能である。純資産額300万円未満の株式会社については、配当などの方法による株主に対する剰余金の配当が禁止される[注釈 18][注釈 19]

配当については、毎事業年度末に「連結配当規制」の適用を受けるか受けないかを選択できる。これは、事業が企業グループで行われている場合で、企業グループとして財源規制を受けるもの。なお、単体ベースで黒字であることが必要であり、その上で、子会社の赤字と連結して残った剰余金を配当することとなる。本体が赤字である場合は連結配当規制の適用は受けられない[注釈 20]

会計監査人設置会社は、連結計算書類を作成することができ、大会社である有価証券報告書提出会社は、連結計算書類の作成が会社法上も義務付けられている[注釈 21]

社債

株式会社、持分会社のいずれの会社も社債の発行が可能である。社債を規律する他の特別法としては、担保付社債信託法、社債等登録法、社債、株式等の振替に関する法律が挙げられる[注釈 22]

社債は、株式同様、原則として証券(社債券)を発行しない。社債券は、社債券を発行することを発行決議により定めた場合にのみ発行することができる。また、株式と異なり、社債の種類ごとに券面の発行・不発行を選択することができる[注釈 23]

社債は、銘柄統合をできるようになった。

組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転等

組織変更

会社法における組織変更とは、株式会社が持分会社になること又は持分会社が株式会社になることをいう(2条26項イ、ロ)。旧法では合資会社と合名会社、株式会社と有限会社のそれぞれの間のみでの組織変更が認められていた。4種類の会社形態のいずれからも他の会社形態への変更も可能であるが、持分会社間での会社形態への変更は、ここでいう組織変更にはあたらない(社員が負担する責任の限度の変更により行われるため、手続として可能である)。

なお、特例有限会社は通常の株式会社に変更することができる。

M&A

会社のM&A(合併、買収)に関しては、いわゆる黄金株や、より実践的な「ポイズン・ピル(毒薬条項)」等を用いることが、会社法上明示で認められることから、これらを買収防衛策・買収対抗策として用いることが想定されている。関連して、東京証券取引所は当初、投資家保護に問題があるとして、黄金株の導入を原則として上場廃止事由とする方針を打ち出していたが、後に、株主総会での普通決議により黄金株の拒否権を無効にできるとする「停止条項」を定款に盛り込むことを条件に容認する方針に転換している[注釈 24]

合併の対価として、存続会社の株式等に限らず金銭等を含めたその他の財産の交付を行うことができるものとされている。これによりいわゆる三角合併や交付金合併も可能となる。かかる規定は会社法施行の日である2006年5月1日から1年間は適用されないものとされている[注釈 25]

また、合併の対価として何も交付しないこと(無対価合併)も明文で認められた(744条1項5号で「金銭等・・・を交付するときは」と規定し、無対価もあり得る旨の規定ぶりとなっている。)[注釈 26]


注釈

  1. ^ 旧法では株券発行が原則であったため、定款で株券不発行を定めた場合のみ株券不発行とできた。
  2. ^ 旧法では株式消却により授権資本枠も減少するというのが有力説であり、実務上も同様に取り扱っていた。
  3. ^ 旧法では、一部の種類株式のみを譲渡制限株式とすることに疑義があった。
  4. ^ 旧法では、明文の規定なく、一定の事由の規定の方法に一部疑義があった。
  5. ^ 旧法では、規定がなく、対象株主の同意が必要であった。
  6. ^ 旧法で認められていた端株制度は廃止され、会社法施行前から端株が存在していた場合のみ端株制度を維持可能となった。
  7. ^ 「公開会社」とは、その発行する全部または一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう(2条5号)。いわゆる「上場企業」のことではなく、株式公開の有無を問わない。公開会社は、取締役会を置かなければならない(327条1項1号)。
  8. ^ 公開会社は必ず「取締役会設置会社」となるため、監査役を置かなければならない(327条2項)。
  9. ^ a b 公開会社である大会社は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない(328条1項)。
  10. ^ 取締役会を設置しない会社においては、取締役は1人以上置けばよい(326条1項、331条4項)。取締役会を設置しない会社は、代表取締役を設ける必要もない。この場合、取締役が株式会社を代表し(349条1項本文)、取締役が2人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する(同条2項)。また、定款や取締役の互選、株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることもできる(349条3項)。代表取締役を定めた場合は、代表取締役が株式会社を代表する(349条1項ただし書)。
  11. ^ a b 監査役会設置会社は、取締役会を置かなければならない(327条1項2号)。
  12. ^ a b c d 会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない(327条3項)。
  13. ^ 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない(328条2項)。
  14. ^ 公開会社でなく大会社でない会社が取締役会を設置した場合、監査役または会計参与のいずれかを置かなければならない(327条2項)。
  15. ^ 公開会社でない株式会社では、監査役会、会計監査人を置かない場合、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる(389条1項)。
  16. ^ a b c d 指名委員会等設置会社」とは、指名委員会、監査委員会及び報酬委員会を置く株式会社をいう(2条12号)。公開会社・公開会社でない会社、大会社・大会社でない会社のいずれも指名委員会等設置会社とすることができる。指名委員会等設置会社は、取締役会、会計監査人、執行役代表執行役を置かなければならない(327条1項3号、同条5項、402条1項、420条1項)。また、監査役を置いてはならない(同条4項)。
  17. ^ 旧法では、新事業創出促進法(廃止済み)上の特例を除き、株式会社の場合1000万円、有限会社の場合には300万円が最低資本金とされていた。
  18. ^ 旧法では、資本の部における計数の変動は、利益処分案ないしは損失処理案を定時株主総会で決議することにより行われていた。剰余金の配当には、最低資本金制度のもとでの財源規制がなされていた。
  19. ^ 旧法では、資本の部の計数の変更に関する書類としては、利益処分案ないしは損失処理案を作成するものとされていた。
  20. ^ 旧法では、企業単体の業績のみが取り沙汰されていたが、企業グループでの事業運営の実態を反映したもの。
  21. ^ 旧法では、連結計算書類を作成できるのは大会社に限られており、会社法上連結計算書類の作成が義務付けられる会社はなかった。
  22. ^ 旧法では、株式会社のみ社債の発行が認められていた。
  23. ^ 旧法では、社債等登録法・社債等の振替に関する法律の規定に合致する場合のみ、社債券不発行とできた。
  24. ^ 旧法では、種類株式の制度は、直接、買収対抗策等を意識したものではなく、買収対策の目的上どこまで実効性ある種類株式が認められるのかには疑問が残った。
  25. ^ 旧法では、合併の対価として、原則、存続会社の株式および合併等の比率調整のための交付金やそれに代わる自己株式の交付のみ認められていた。
  26. ^ 旧法では、100%子会社同士の合併などにおいては新株の発行は無意味であることから、法務省民事局通達によってそのような登記も認められるとして、登記実務的に運用上認められていたに過ぎず、明文規定はなかった。

出典

  1. ^ 会社法 日本法令外国語訳データベースシステム 2021年10月6日閲覧。
  2. ^ "会社法". 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンクより2021年8月3日閲覧
  3. ^ 伊藤靖史 et al. 2009, pp. 9–10
  4. ^ 伊藤靖史 et al. 2009, pp. 15–17
  5. ^ 伊藤靖史 et al. 2009, pp. 25–26
  6. ^ 川井信之 2021(iBooks、206-207/375)






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