おうごん‐かぶ〔ワウゴン‐〕【黄金株】
黄金株(おうごんかぶ)(golden share)
普通株式を買い占められたときでも、黄金株を保有する株主によって重要事項の議決を拒否できる権限がある。拒否権つき株式ともいう。原則として1株だけ発行できる。
その株式会社に友好的な株主に黄金株を与え、特に敵対的買収による合併提案を否決してもらうのが主な狙い。
黄金株は、株主平等の原則から、普通株と同様に自由に譲渡できなければならない。買収者は黄金株を手に入れることによって敵対的であっても買収を成功させる可能性が高まる。そのため、会社の経営を防衛するという観点からは、友好的な株主が保有する黄金株の譲渡に一定の制限を加え、普通株のように自由な移動を認めないといった対策が必要となる。
なお、政府が今国会に提出した会社法案では、黄金株を導入しやすくするため、黄金株の譲渡を制限し、友好的な株主だけに与えることのできる規定が盛り込まれている。政府・自民党は25日、郵政事業の民営化による郵便貯金銀行と郵便保険会社に黄金株を発行させる方向で検討している。
(2005.03.28掲載)
黄金株
【読み方】:オウゴンカブ
株主総会において、重要議案を否決できる権利を与えられた特別な種類株式。拒否権付株式とも言う。
元々英国国営企業民営化に際し外国企業からの敵対的買収に備えるため政府の株式持分に拒否権を付与して防衛策としたのが始まりで、転じて (少数ではあっても) 特定の株主の持分に取締役会決議に対する拒否権といった特別な権限を付した株式のことを言う。発行会社に友好的な株主に黄金株を持たせることにより、敵対的買収に対する協力な防衛策となる。
但し、黄金株には、企業価値の向上が期待でき、過半数の株主の賛成する買収提案でも経営者の恣意的判断で否決することが可能となるなど、株主平等の原則、一株一議決権の原則を害する面もある。
また、黄金株は、友好的な株主が保有していれば敵対的買収の防衛策となるが、逆に買収側が黄金株を取得するというリスクも存在する。これまでは、種類株式のみに譲渡制限を設けることは認められていなかったが、会社法の施行により、種類株式のみに譲渡制限を設けることも認められることとなった。取締役の過半数の選解任その他重要な事項についての黄金株は上場廃止基準の対象となっている。
黄金株
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/16 00:16 UTC 版)
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黄金株(おうごんかぶ)とは、株主総会などでの重要議案を否決できる権利を持つ株式をいう。「拒否権付き株式」ともいわれる[1]。譲渡制限が付けられることがある[2]。
概要
政府関連機関・公営企業などを民営化する際に、株主構成の極端な変動防止や会社の経営安定を図るために開発されたものであり、その効果から一般の株式会社においても敵対的買収に対する防衛策として用いられている。
実務の世界では、1980年代の半ばにイギリスのサッチャー首相による民営化路線で注目を浴びた。イギリスは将来の解消を決めた上で過渡的に黄金株をつけて交通通信分野を民営化した。
イギリスの海外通信分野の歴史を継承するC&Wを例にすると、黄金株により
- 会社の任意解散、清算。
- 会社及び子会社の資産の全部、又は重要な部分の処分。
- 普通株以外の特別な株式の発行。
- 如何なる人(原文ではperson。その詳細は細かく規定され外国企業も含まれる)が、会社の株式15%以上を取得すること。
- 外国人が会社の最高経営責任者になること。
以上の阻止が可能となった。例えば日本の『第2KDD戦争』(「ITJ」と「IDC」の免許争奪)は、C&WがIDCの経営に参加し、IDCが海賊同然に日本市場に土足で踏み込んだと見なした日本の通信各社は、イギリス政府の付与した黄金株でC&Wを保護する態度に反発を招いた一方、中曽根内閣はアメリカ・イギリスの「市場開放」の大義名分の前に沈黙した。
特定の株式に買収に対する拒否権を付与し、その株式を現在の経営陣にとって信頼できる株主に対して付与することによって、他の株式がどのように先行して敵対的買収者に買収されたとしても、当該株式さえ確保していれば、買収に関する決議事項が株主総会で承認されずに、買収が成立しない、という方法論である。
黄金株は1株だけ発行しておけば良く、当該株式の譲渡に対して取締役会の承認を得るなどの譲渡制限を付しておけば、信頼できる第三者ないしは経営陣としてコントロール可能な者を黄金株の株主とすることで、敵対的買収者が普通株式を買い集めることに対する買収防止策になるとされる。
反面、特定の株主のみに、特権的に経営の根幹に関わる買収に関する事項についての拒否権を付与するものであるから、広く一般に対して会社の株式を公開する株式の公開という制度とはなじまない、と考えられることがある。
アメリカにおける黄金株
アメリカの証券取引所では上場後の黄金株の発行は認めていないが、黄金株を上場前に発行した企業の上場は認められている。著名な例として創業者らにB株を発行しているFacebook, Inc.や[3]、日本製鉄による完全子会社化にあたって米連邦政府に対して黄金株を発行したUSスチールがある[4]。
日本における黄金株
2006年の会社法の施行により譲渡制限付きの黄金株の導入が可能になった。仕組み的には拒否権付種類株式(会社法108条1項8号)を利用する。会社法上、黄金株は拒否権付種類株式の使い方の一つという位置づけになる。
経済産業省・法務省のガイドライン(指針)は、敵対的買収に対する予防策として黄金株の導入を認めたが、東京証券取引所(東証)は黄金株を導入した会社について上場を拒否する旨を発表した。このことは株主が協同で企業への資本出資を行いリスクを背負うという株主平等の原則を無視し、経営者の都合のよい経営を助ける者に独占的に強権を与え、それ以外の株主から経営を遠ざけるものという視点からは妥当な対応と考えられたが、東証はその後2005年12月16日に株主総会の決議で無効にできることなど、一定の条件つきで黄金株を認める方針を固めた。
2025年5月現在、黄金株を発行している上場会社はINPEX(旧:国際石油開発帝石)のみであり、経済産業大臣が所有している。なお、拒否権行使には経済産業省告示(令和4年<2022年>経済産業省告示第54号)に定める基準があり、一定の重要事項に関してエネルギーの安定供給に資する形でのみ行うこととされている[5][6]。同年7月にラピダスの経営再建の条件として経産省が黄金株の発行を求めていると報じられている[7]。
出典
- ^ “証券用語解説集 黄金株”. 野村證券. 2025年5月28日閲覧。
- ^ “初めてでもわかりやすい用語集 黄金株 (おうごんかぶ)”. SMBC日興証券. 2025年5月28日閲覧。
- ^ “米フェイスブック、無議決権株発行へ 創業者の支配力維持”. 日本経済新聞. (2016年4月28日) 2020年10月14日閲覧。
- ^ 成澤隼人 (2025年6月18日). “USスチール買収完了の日鉄 米政府に「黄金株」を1株発行と発表”. 毎日新聞. 2025年7月5日閲覧。
- ^ INPEX社で「黄金株」の発行が認められたことについて書かれた資料が有れば紹介してほしい。 - レファレンス共同データベース(2024年3月9日)、2024年4月9日閲覧
- ^ 有価証券報告書(第16期) - INPEX(2022年3月28日)、2024年4月10日閲覧
- ^ “政府、ラピダスの黄金株保有へ 重要事項に拒否権で安保リスク備え”. 日本経済新聞 (2025年7月4日). 2025年7月5日閲覧。
関連項目
黄金株
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 14:50 UTC 版)
詳細は「黄金株」を参照 重要な株主総会の決議事項について拒否権を有する株式を信頼できる第三者に対して発行することで、買収のために必要な決議を妨害するもの。会社法施行により導入が可能となり、東京証券取引所の上場企業などの公開企業でも株主総会の決議で無効にできることなどの一定の条件付きであれば導入が可能となっている。
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