マジコン 各国での規制への動き

マジコン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/17 15:31 UTC 版)

各国での規制への動き

上記のように、マジコンは正当な行為にも使える反面で、ゲームソフト製作会社の著作権を寄与的に侵害する不正な行為にも使えてしまう。このような不正行為を根絶し著作権者の権利を保護する目的で、ゲームソフト製作会社はマジコンの流通規制を要望している。

任天堂は、ニンテンドーDS用マジコンの販売業者を相手取り各国で訴訟を起こしており、そのほとんどで勝訴判決を得ている[20]

イタリア

2008年9月、任天堂はマジコンが技術的保護手段を迂回させ、インターネットで不法にダウンロードしたゲームを利用可能にしているとして、フィレンツェのマジコン販売業者PC Boxに対しニンテンドーDS用マジコンの販売停止を求めミラノ法廷に提訴した。同法廷は12月の一審、2009年3月の二審ともに任天堂の要求を認め、PC Boxにマジコンの配布を禁止する判決を言い渡した。マジコンの技術的保護手段を迂回する機能は、既に違法化されているMODチップと同様のものであると判断した。またPC Boxの、マジコンは機能性を広げることにも使われているという抗弁に対し、機能性の拡大には利用されておらず大部分が違法コピーを作成する目的で使われていると指摘した[21]

スペイン

任天堂は、スペインの著作権関連法において、マジコンはデジタル著作物のプロテクト迂回禁止条項に抵触しているとして、ニンテンドーDS用マジコンの製造・販売停止を求めスペインの裁判所に提訴した。しかし任天堂側の訴えは却下された。マジコンはプロテクト迂回機能を持ち合わせるものもあるが、不正入手したソフトウェアを動作させることのみに利用されるものではなく自作プログラムの起動など正当な使い方もできることを裁判所が重視し、製造・販売は問題ないという判決を出した[22]。この判決はのちに覆され、有罪となった[20]

フランス

任天堂は、フランスのマジコン販売業者に対しニンテンドーDS用マジコンの販売停止を求め、フランスの裁判所に提訴した。一審ではスペインでの判決と同様にマジコンは合法的な使い方もできることを重視し、任天堂の訴えを棄却した[23]。この判決は控訴審において覆され、マジコンの販売、頒布を行った6社に対して罰金刑と任天堂への損害賠償、一部の被告に対しては、執行猶予付きの懲役刑が言い渡された。[24]

イギリス

イギリスではマジコンを輸入・販売した者に懲役12カ月の実刑判決が出ている[25]

また任天堂がイギリスで起こしたマジコン裁判で、イギリス高等法院はマジコン販売会社に対し、マジコンをイギリス国内に輸入・宣伝・販売することを違法とする判決を下した。任天堂は既にマジコン業者と法廷外で和解していたが、英著作権法がマジコンにも適用されると明確にする判決を求めていた。被告側は、マジコンには自作ソフトを実行するなどの合法的な用途もあると主張し争点となったが、同法廷は判決において、自作ソフトを実行するには任天堂のプロテクトを破らなくてはならず、それが侵害行為に当たると判断した[26]。イギリスでは2004年にMODチップの販売、広告、使用、商用目的での所有を違法とする判決が出ている[27]

オーストラリア

任天堂は、オーストラリアのマジコン販売業者であるRSJ IT Solutionsを、オーストラリアの裁判所に提訴した。オーストラリアではマジコンの販売に関する法律が未整備だが、裁判所はマジコン販売が任天堂の知的所有権を侵害したと裁定し[28]、RSJ IT Solutionsに52万オーストラリアドル(約4160万円)の支払いと輸入元について明らかにするように命じた[29]。この判決を受け、オーストラリア税関国境警備局は税関でマジコンの押収を行った[30]

その他の国

ドイツ、ベルギー、オランダ、韓国、台湾で違法判決が下されている[20][31]


  1. ^ "マジコン". デジタル大辞泉. コトバンクより2022年2月10日閲覧
  2. ^ 【電脳遊戯X】ゲーム業界を暗躍する影「マジコン」のルーツに迫る - 2007年8月28日 10時28分 ITライフハック
  3. ^ マジコンとは - コトバンク
  4. ^ a b “私的録音録画小委員会、「私的複製」の範囲見直しを議論”. INTERNET Watch. (2007年4月17日). https://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/04/17/15443.html 
  5. ^ 注意点として、個別の不法行為(組織的販売による権利侵害の認定)による権利者からの損害賠償訴訟を明確に回避しているわけではない(訴例なし)。また不正競争防止法の観点については下記参照。
  6. ^ ただし、ゲーム機のメーカーにとっては想定外のプログラムを動作させられることになるため、メーカーの権利を侵害することになる可能性が全くないわけではない。
  7. ^ 違法複製物・違法サイトからの複製の違法化に関する諸外国の状況について」(著作権分科会 法制問題小委員会(第8回)議事録・配付資料 > 資料4) 文部科学省、2007年9月21日。
  8. ^ WinnyについてはWinny事件を参照。またカラオケ店を巡るクラブ・キャッツアイ事件では寄与侵害ではなくカラオケ店が著作権の利用主体であると認定された(間接侵害)。また著作権侵害を行う店へのカラオケ機器のリースを差し止めた判例がある(ヒットワン事件:大阪地裁 平成15年2月13日:著作権侵害幇助)。しかしいずれもカラオケ機器の製造・販売そのものの差し止めを請求した事例ではない(寄与侵害)。米国では寄与侵害に関わる複数の判例がある。参照 [1][2]
  9. ^ a b 「DSソフト 不正ダウンロード――違法認定 機器差し止め」『朝日新聞』2009年2月28日付朝刊、第13版、第37面。
  10. ^ 不正競争防止法第2条1項10号(不正競争の行為):営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為
  11. ^ “東京地方裁判所がマジコンの輸入、販売の差し止めと在庫の廃棄を命じる”. ファミ通.com. (2009年2月27日). http://www.famitsu.com/game/news/1222396_1124.html 
  12. ^ “売買に罰則なく「マジコン」流通”. 産経新聞. (2009年10月5日). https://web.archive.org/web/20091007231920/http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091005/trl0910052353007-n1.htm 
  13. ^ 「マジコン」販売に刑事罰 文化庁、来年にも著作権法改正案 全世界で推計被害4兆円”. MSN産経ニュース (2010年10月11日). 2011年1月10日閲覧。
  14. ^ a b c ンテンドーDS用装置(マジコン)に対する不正競争行為差止・損害賠償等請求訴訟に関する最高裁決定について”. 任天堂 (2016年1月19日). 2016年2月4日閲覧。
  15. ^ - コンテンツ強化専門調査会インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関する ワーキンググループ(第3回) - アクセスコントロール回避規制の在り方について 知的財産戦略本部 コンテンツ強化専門調査会、2010年3月3日
  16. ^ “任天堂:「マジコン」販売4社を損賠提訴 4億円請求”. 毎日新聞. (2009年10月6日) 
  17. ^ “任天堂などソフトメーカーが「マジコン」の禁止求め提訴”. 産経新聞. (2009年10月5日). https://web.archive.org/web/20091007235132/http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091005/trl0910052350006-n1.htm 
  18. ^ “マジコンを立ち売りするおじさん / 秋葉原関係者「すぐ逃げられるからでは」”. http://rocketnews24.com/?p=89110 
  19. ^ ニンテンドーDS用装置(マジコン)に対する差止等請求訴訟に関する東京地裁判決について”. 任天堂 (2013年7月9日). 2013年7月9日閲覧。
  20. ^ a b c ニンテンドーDS用装置の販売者に対する刑事摘発について”. 任天堂 (2012年5月30日). 2012年5月31日閲覧。
  21. ^ Italy: Milan's Court Confirms Game Copiers are Illegal” (PDF). Nintendo Anti-Piracy (2009年3月13日). 2012年5月31日閲覧。
  22. ^ マジコンは合法?スペインのマジコン訴訟で任天堂がまさかの敗北”. ITmedia (2009年12月3日). 2012年5月31日閲覧。
  23. ^ 任天堂、フランスでもマジコン訴訟で敗北”. ITmedia (2009年12月10日). 2012年5月31日閲覧。
  24. ^ マジコンの販売にフランスで違法判決”. ファミ通.com (2011年10月4日). 2012年5月31日閲覧。
  25. ^ “2万個以上のマジコンを輸入した男に懲役12ヶ月の判決・・・英国”. INSIDE. (2010年1月18日). https://www.inside-games.jp/article/2010/01/18/39914.html 
  26. ^ マジコンは違法の判決、英国で”. ITmedia (2010年7月29日). 2012年5月31日閲覧。
  27. ^ “ソニー、欧州でプレステ2のmodチップ販売業者に勝訴”. CNET Japan. (2004年7月23日). https://japan.cnet.com/article/20069991/ 
  28. ^ “Nintendo suit not a precedent: Lawyers”. ZDNet. (2010年3月3日). http://www.zdnet.com.au/nintendo-suit-not-a-precedent-lawyers-339301470.htm 
  29. ^ “任天堂、「R4」を販売したオーストラリアの業者から52万ドルを勝ち取る”. INSIDE. (2010年2月19日). https://www.inside-games.jp/article/2010/02/19/40513.html 
  30. ^ “Australian Authorities Confiscate Illegal Game Copiers and Counterfeit Nintendo Products”. Nintendo.com.au. (2010年3月11日). http://www.nintendo.com.au/index.php?action=news&nid=90&pageID=6 
  31. ^ “任天堂、フランスでもマジコン業者に対して勝訴”. Game Business.jp. (2011年10月5日). http://www.gamebusiness.jp/article.php?id=4451 
  32. ^ a b このようなプロテクトを施しても、発売後わずか6時間足らずで破られた。ニンテンドーDS「プロテクト外し」横行 ソフト違法コピー調査”. MSN産経ニュース (2009年2月27日). 2011年1月10日閲覧。
  33. ^ 産経ニュース Archived 2009年3月2日, at the Wayback Machine. - 2009年2月27日
  34. ^ 【お知らせ】いわゆる「マジコン」の出品取り扱いについて(楽天オークション、2008年8月27日)
  35. ^ 「マジコン」出品禁止のお知らせ(Yahoo!オークション、2009年02月27日)
  36. ^ “ニンテンドーDSi、新ファーム導入でマジコン動作不可に”. ITmedia. (2009年7月31日). http://gamez.itmedia.co.jp/games/articles/0907/31/news094.html 
  37. ^ 「ゴールドフィンガー」とは後期のマジコンのシステムファイルに搭載されていたチートの利用ができる機能。ゲーム毎にチートコードを登録、入力したりなどをしなくとも簡単にチートの切り替えが可能。






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