ニューズウィーク 疑義を持たれた報道・捏造報道

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ニューズウィーク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/15 08:06 UTC 版)

疑義を持たれた報道・捏造報道

北朝鮮日本人拉致問題報道

2003年10月22日号「拉致された北朝鮮報道」の記事において、「家族会および救う会が「拉致報道」をコントロールしていて、『被害者にインタビューできるのは、彼らの眼鏡にかなった記者だけ』」と批判した。実際は、5人の拉致被害者家族はメディアの個別取材にはいっさい応じておらず、特定の記者を選別しているわけではなかった。救う会はこの記事に抗議し、編集部は当該部分の誤りを認め、後日「お詫び」を掲載して関係者に謝罪した[6]

『華氏911』批判記事

2004年6月28日号(日本版2004年7月21日号)において、マイケル・ムーア監督によるブッシュ政権批判のドキュメンタリー映画『華氏911』を非難する記事(日本版タイトル「ここが変だよ華氏911」)を掲載した。記事を書いたのは、ビル・クリントン大統領のモニカ・ルインスキー・スキャンダルのスクープで有名なマイケル・イシコフ英語版記者で、記事の中でイシコフは、「『華氏911』には事実の歪曲や論理の飛躍が目立つ」としてムーア監督を非難した。もっとも、イシコフが『華氏911』の問題点として具体的に取り上げた箇所は以下の2つのみであった。

  • 『華氏911』では、911テロ事件直後にアメリカ全土の民間航空機が飛行禁止となっている中で、ビン・ラディン一族を含むサウジアラビアの王族を乗せたチャーター便だけがブッシュ大統領の意向で飛行を許可され、アメリカ国外に脱出できたとしているが、彼らが国外に脱出したのは、飛行禁止が解けた9月14日以降のことである。
  • ブッシュ元大統領とビン・ラディン一族が関係していた投資会社「カーライル・グループ」は、国防会社の「ユナイテッドディフェンス(以下UD社)」を所有しており、「911で大きな利益を上げた」と『華氏911』では指摘しているが、実際はUD社がアメリカ陸軍のために11億ドルをかけて開発していたクルセイダー戦車の導入が中止され損をしている。

これに対してムーア監督は、次のように反論している。

  • たしかにサウジアラビア王族が出国したのは飛行禁止解除後だが、チャーター機は飛行禁止だった9月14日以前に飛行し、アメリカ国内に点在しているビン・ラディン一族を次々とピックアップしていた。事実、9月13日のタンパ国際空港の飛行記録には、1機の自家用ジェット機が同空港に着陸、3人のサウジアラビア人を乗せて飛び去ったと記載されている。
  • UD社がクルセイダー戦車の導入をアメリカ陸軍に破棄されたのは、カーライル・グループがUD社を売却した後であり、カーライル・グループは911後にUD社を売却して莫大な利益を上げていた。

「これらは少し調べれば判ることなのに、わざと時間軸をずらして読者に『華氏911』に疑念を抱かせようとしている悪質な中傷記事である」とムーア監督は抗議した。さらに返す刀で、記事を書いたイシコフ記者が過去に勤めていた『ワシントンポスト』誌で、イランコントラ事件やホワイトウォーター疑惑を巡って憶測に満ちた記事を書いたことで、同誌に訂正文を掲載させるなど、キャリアに問題のある記者であることを暴露した[7]

結局、抗議を受けてイシコフとニューズウィークは記事の訂正を余儀なくされた。なお、イシコフ記者はその後もニューズウィークに残り、グアンタナモ収容所コーラン冒涜報道事件(後述)を引き起こしている。

グアンタナモ収容所コーラン冒涜報道事件

2005年5月9日号のマイケル・イシコフ記者による署名記事『ペリスコープ』において、「グアンタナモグアンタナモ湾収容キャンプで、イスラム教の聖典コーラン便所に流して囚人を動揺させ、自白を強要する尋問法が使われている」という、匿名のアメリカ軍関係者の証言を掲載した。この記事が掲載される以前から、「アメリカ軍人が囚人を尋問する際に、目の前でコーランを破ったり蹴ったりしている」という報道があったが、アメリカ軍の関係者が公式に認めたという記事は、これが初めてだった。

この記事が掲載されたのを機に、イスラム国家で猛烈な反米抗議運動が巻き起こり、パキスタンとアフガニスタンでは、抗議デモと警官隊の衝突で16人の死者が出た[8]

事件を受けて、アメリカ軍は内部調査を開始し、その結果「報道されたような事実はない」と発表した。ライス国務長官やマクラレン報道官ほか、軍高官等は「事実無根の記事でイスラム世界でのアメリカのイメージを傷付けた」としてニューズウィークを激しく非難した。

ニューズウィークは当初、「記事を撤回する気はない」としていたが、非難の声が高まったため記事の再検証を開始した。再検証の結果、取材源のアメリカ軍関係者にコーラン冒涜の事実を確認したところ何の反応もなかったので、事実を認めたとみなし掲載したという経緯を明らかにし、「高官の沈黙を確認と間違えて判断して掲載してしまった」と非を認め記事を撤回した。ただし、捏造および誤報とは認めなかった。

ニューズウィークは「読者への書簡」と題する謝罪文を掲載し、以後匿名のリーク記事の乱用を戒める旨を読者に誓った上、アメリカ軍関係者、暴動での犠牲者と遺族へ謝罪した。

撤回の後、ニューズウィークは単一の匿名情報源に依拠する報道姿勢に問題があったとの批判を受けた[9]。ニューズウィークはこの点について改善を約束した[10]

トランプ大統領の感謝祭にゴルフ三昧と報じた事件

2019年11月29日号のウォング記者は、トランプ大統領はゴルフに明け暮れているとtwitterに書いたが、その頃には、トランプ大統領は極秘裏にアフガニスタンのバグラム米空軍基地に飛び、約1500人の米軍の将兵達を慰問して感謝祭の夕食をとり、その後アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領と会談して帰国していた。


  1. ^ 黒沢潤 (2012年7月27日). “ニューズウィーク誌「紙からネットへ本格移行」 雑誌発行取りやめる可能性”. MSN産経ニュース. 2012年7月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月28日閲覧。
  2. ^ Newsweek Returns to Print and Sets Off a Bitcoin Storm”. The New York Times (2014年3月7日). 2014年10月7日閲覧。
  3. ^ 本誌1986年1月30日号参照。
  4. ^ ニューズウィーク日本版の媒体掲載料金”. 雑誌広告ドットコム (2023年6月1日). 2023年12月15日閲覧。
  5. ^ 『ニューズウィーク日本語版別冊 激動の昭和』TBSブリタニカ、1989年7月26日。 
  6. ^ 拉致ヒステリーの落とし穴電脳補完録[出典無効]
  7. ^ イン・ジーズ タイムズ 2004年6月24日
  8. ^ Newsweek Retracts Guantanamo Story”. Washington Post (2005年5月17日). 2023年1月18日閲覧。
  9. ^ Ben H. Bagdikian, "When the Post banned anonymous sources", American Journalism Review英語版.
  10. ^ Newsweek Vows to Curb Anonymity”. The New York Times (2005年5月23日). 2023年1月18日閲覧。


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