2020年大会の誤審騒動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 20:31 UTC 版)
「講道館杯全日本柔道体重別選手権大会」の記事における「2020年大会の誤審騒動」の解説
新型コロナウイルス感染症流行下でおこなわれた、2020年大会の60 kg級決勝では誤審騒動が起きた。この試合は解説が木村昌彦でNHK-BSでテレビ生放送されていた。国士舘大学の小西誠志郎とセンコーの米村克麻が対戦すると、米村が隅返で先に技ありを先取。その後、袈裟固で小西が抑え込むも、電光表示板の担当者が抑え込んでいる選手を米村と勘違いしたために10秒経過した時点でブザーが鳴ってしまい、主審が小西による一本を宣告した。しかし、小西による抑え込みは8秒で脚が上から絡まって解けていたとビデオ判定で判断されて技ありは認められなかった。主審は一本は取り消し、抑え込みの「解けた」も宣告した。これに対して国士館大学監督の吉永慎也が猛抗議して試合が5分ほど中断されると、小西が上で抑え込みが解けた状態から「よし」で再開され、すぐに脚を抜いてまた抑え込むがここでも8秒で解けたため、結果として小西は技ありを取れず、先に取った技ありを守り切った米村が優勝することとなった。講道館ルールでは上から脚を掛けても抑込技は解けたとならないが、この大会の国際柔道連盟ルールでは解けたとなる。また、書籍『柔道のルールと審判法』や資料『国際柔道連盟試合審判規定変更点について2020年1月13日より有効』ではこのルールについて説明している箇所では下から挟んでる場合と上から挟んでいる場合の図を載せているが、この大会当時、全日本柔道連盟(全柔連)のサイトからダウンロードできた資料『2018年~2020年 国際柔道連盟試合審判規定』(日本語版)では下から挟んでいる図を2枚載せていた。両選手にビデオ判定の裁定について説明はなく、再開から一時、掲示板に小西に技あり1とも表記されたため混乱は続いた。この混乱に対して審判委員長の大迫明伸は、柔道は相撲などと違って、審判団の裁定に対して選手に説明するルールになっていない。そのため、当事者にとって不明瞭な進行になるなど、「色んな残念なことが一度に重なってこのようなことになってしまった」と釈明した。なお、小西はこの件について次のようにコメントした。「(審判から)何も説明がなくて、試合中ずっと不安だった」「(先に)ポイントを取られたことは事実。悔しいけど、審判に(ポイントが)ないと言われたら、ない。(負けを)受け止めて、また一からやり直したい」。 その後に審判委員会、強化委員会、大会事業委員会、アスリート委員会の4委員会が試合を改めて検証した結果、中断後に小西が抑え込みを再開した際にカウントするのが3秒遅く始められていたため実際は11秒抑え込んでおり、この時点で小西に技ありが付与されるべきで、ポイントで並んだ両者はその後延長戦に入るべきだったが、すでに時間が経過しており、再試合は難しいとした。そのため全柔連は、「大会運営上の誤謬を認め、決勝戦の勝敗がついていなかったものとし、特例的かつ限定的に遡って両者優勝とすることで4委員会の意見が一致した」との報告を受け入れて、両者を優勝とすることに決めた。専務理事の中里壮也は「日本最高峰の柔道大会の運営に不備があり、選手や関係者にご迷惑をおかけし、多くの柔道ファンの方々に混乱を招く事態となり、心よりお詫び申し上げます」と陳謝した。また、4委員会はカラー柔道衣の導入、審議後の場内アナウンス制度の導入も提言した。また、11月20日、全柔連はYouTubeの全柔連TVチャンネルで、小西の最初の抑込は時計係からは選手の腰の色紐が見えづらかった、カウントの開始が4秒遅れた、副審と審判委員はタイマー表示9秒の段階で「解けた」に気付いたがインカムで指示する前にブザーが鳴ってしまった、抑込開始からブザーまで14秒経っていたため主審と選手には20秒で一本の印象を与えた可能性がある、8秒ではなく7秒で解けていたと判断したことを明らかにした。さらには主審・副審と審判委員の合議では解けた後「待て」相当の時間が経過したと判断し「はじめ」とした、審判委員長を加えた合議で選手が立ち上がったあと寝技から再開できる規定はないが「はじめ」からでは小西に不利益が生じるとし第21条「規定に定められていない事態」を適用し解けた体勢から再開するとした、主審にビデオを見せて正しく再開できるようにしたが小西の首の抱え方が不十分であった、との見解を明らかにした。4委員会は、開始線の設置、国際柔道連盟ルール理解の徹底、タイマー操作の精度向上とリカバリープランの策定も提言したことを明らかにした。11月29日現在、全柔連のサイトからダウンロードできる国際柔道連盟試合審判規定は下から脚を挟む図が2枚掲載されたままである。 全日本柔道連盟は12月3日、オンライン理事会を開き、12月13日の東京オリンピック66 kg級代表者決定戦である阿部一二三対丸山城志郎、2021年の全日本選抜柔道体重別選手権大会、講道館杯でカラー柔道衣を導入することを承認した。全日本選手権と皇后盃全日本女子選手権は従来通り、白道着のみで行われる。。
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