金品提供・便宜受領問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 13:49 UTC 版)
「森山栄治 (地方公務員)」の記事における「金品提供・便宜受領問題」の解説
2018年の財務省国税庁金沢国税局の税務調査で、自宅から帳簿や資金の提供元や供出先が記されたメモが押収され、関西電力幹部の自宅の捜索がなされ、2011年から2018年にかけて、関西電力の八木誠会長や、岩根茂樹社長、豊松秀己副社長、森中郁雄副社長らに、「原発マネー」とおぼしき3億2千万円を渡していたことが、明らかとなった。共同通信が9月26日に報じたあと、テレビや新聞各紙が追った。 関西電力幹部の金品受領の内訳氏名受け渡し当時肩書現金(円)商品券(円)その他の主な金品金額換算合計(円)八木 誠 副社長 原子力事業本部長 300,000 金貨63枚、金杯7セット 8,590,000 岩根 茂樹 社長 金貨10枚 1,500,000 森本 浩志 副社長 原子力事業本部長 500,000 美術工芸品、花 1,000,000 豊松 秀己 副社長 原子力事業本部長 41,000,000 23,000,000 7万米ドル、金貨189枚、小判 110,570,000 森中 郁雄 原子力事業本部長代理 20,600,000 7,000,000 4万米ドル、スーツ券16着分 40,600,000 鈴木 聡 原子力事業本部副本部長(技術) 78,310,000 19,500,000 3万5000米ドル、金貨83枚、小判 123,670,000 大塚 茂樹 原子力事業本部副本部長(発電) 2,000,000 1,500,000 1万米ドル、スーツ券4着分 7,200,000 白井 良平 原子力事業本部長代理 2,000,000 2,100,000 金貨16枚、スーツ券4着分 7,900,000 勝山 佳明 原子力事業本部副本部長(発電) 20,000 20,000 右城 望 原子力事業本部副本部長(企画) 1,000,000 3,400,000 スーツ券5着分 6,900,000 善家 保雄 原子力事業本部副本部長(企画) 300,000 300,000 長谷 泰行 高浜原発所長 800,000 スーツ券3着分 2,300,000 宮田 賢司 高浜原発所長 400,000 400,000 (非公表) 原子力事業本部総務担当部長 1,5000,000 スーツ券5着分 4,000,000 (非公表) 原子力事業本部総務担当部長 850,000 850,000 (非公表) 原子力事業本部総務担当部長 300,000 300,000 (非公表) 高浜原発副所長 スーツ券1着分 500,000 (非公表) 高浜原発副所長 200,000 200,000 (非公表) 京都支社副支社長 100,000 1,150,000 1,250,000 (非公表) 京都支社副支社長 650,000 スーツ券1着分 1,150,000 (非公表) 京都支社副支社長 250,000 250,000 その前年、関西電力では(大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件で懲戒処分を受けて退官した)小林敬元大阪地方検察庁検事正を委員長とする調査委員会を設置し、調査したすえ、八木会長や岩根社長ら関係者を社内で処分したが、これらの事実を取締役会に対しては隠蔽した。また税務調査が開始された翌月の2018年2月に、1億6千万円相当の金品が関西電力側から返却された。 2019年9月26日、共同通信による特報(スクープ)記事の配信により明るみに出され、27日に関西電力が緊急記者会見を開催した。その後、事態を受けた菅原一秀経済産業大臣は、記者会見で「言語道断。ゆゆしき事態だ」と断じた。また、経済産業省で記者会見を開いた小早川智明東京電力ホールディングス社長は、東京電力にはこのような問題はないとした。 2019年10月2日に関西電力が改めて記者会見を行い、金品の受領を断ると激高した森山から「どうして受け取らないんだ」「なぜ、わしの志であるギフト券を返却しようとするのか、無礼者、わしを軽く見るなよ」「お前の家族がどうなるのか分かっているのか」と土下座を強要されるなど、断れない力関係にあったと説明した。2020年3月の報告書によると、関西電力は森山を激高する「噴火リスク」だとして対処されていた事を明らかにした。 新たな記者会見を受け、菅原経済産業大臣は改めて「言語道断の事態」と断じ、「会見をしても本当に真実なのか分からない」と語った。更田豊志原子力規制委員会委員長は、「まだそんなことがあるのか」「憤りを感じた」とし、関西電力の対応を批判した。また、大島堅一龍谷大学教授は、「会社全体で組織的に行っていたのは明らかだ」「矮小化しているように感じた」と疑問を呈した。日本監査役協会の岡田譲治会長は、監査役が取締役会に報告しなかったことに関し、「おかしいと思う」と述べた。 関西財界では、関西電力による2025年日本国際博覧会への15億円の寄付の予定に支障が生じないか懸念され、池田博之関西経済同友会代表幹事は、記者会見で説明の必要性を主張する一方、進退に関してはノーコメントを貫いた。八木会長が副会長を務める関西経済連合会の松本正義会長は、「関係者に疑義をもたれるようなことをしてはいけない」と述べた上で、記者会見で副会長職の続投を宣言していた八木の処遇について、第三者委員会の報告を待って決める考えを明らかにした。 しかし、世論の集中砲火を浴び、結局第三者委員会による調査を待たずに、八木会長と森中副社長、右城常務、鈴木常務、大塚常務が10月9日の臨時取締役会で退任し、岩根社長も第三者委員会の取りまとめにあたった後に辞任する方向で調整される運びとなった。第三者委員会は、委員長を但木敬一元検事総長が務め、奈良道博元第一東京弁護士会会長らが委員に、久保井一匡元日本弁護士連合会会長が特別顧問にそれぞれ就任した。 2020年3月に公表された第三者委員会の報告書では、関西電力から森山側への便宜供与が認定されたが、森山ら被疑者の一部が死亡していたことから証拠不十分となっており、刑事告発の見送りが決定された。また特に責任が重い関係者として、森詳介相談役、八木前会長、岩根社長が指摘され、いずれも前後して辞職した。 2020年4月には中村直人弁護士を委員長とするコンプライアンス委員会が設置された。同年善管注意義務違反があったとして、関西電力から八木元会長、岩根元社長、豊松元副社長、白井元常務に対し総額19億3600万円の、森元社長に対しては1億7000万円の損害賠償請求訴訟が、大阪地方裁判所に提起された。一方、監査役を務めた、土肥孝治元検事総長、大坪文雄元パナソニック社長、槇村久子京都女子大学名誉教授、十市勉元日本エネルギー経済研究所専務らに関しては、善管注意義務違反があるとされたものの訴訟の提起は見送られた。また、同年新たに取締役候補とされた佐々木茂夫元大阪高等検察庁検事長につき、事前に金品受領問題を認識していなかったと虚偽の説明が株主に対してなされ、のちに訂正された。
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