軍・警察用の散弾銃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 09:51 UTC 版)
詳細は「自動連発散弾銃(英語版)」、「SCMITR(英語版)」、および「ライアット・ショットガン(英語版)」を参照 訓練において、ドアの蝶番をショットガンで破壊しようとするアメリカ海兵隊員 タイの首都バンコクでデモの規制に当たる治安部隊。手にはライアットガン(ショットガン)を持っている。 M4カービンの銃身下に装着されたM26 MASS 散弾銃は、古くから軍や警察が近接戦闘用武器として採用している。散弾銃は機構が簡単であることから安価で機械的な信頼性が高いため、塹壕戦やジャングル戦、あるいは室内戦と行った極至近距離の戦闘に用いられる。特に出合い頭の戦闘に強く、隊の先頭を務めるポイントマンが使用することが多い。室内戦闘においては扉の蝶番を破壊する(英語版)(戸板そのものに穴を開けるのは能力的に不可能)際にも使用されるためマスターキーとも呼ばれており、各国の軍隊でドア破り用途専用の散弾実包(英語版)の開発を行っていたが、1980年代にはナイツアーマメント社がレミントンM870をベースにM16シリーズ向けのアンダーバレル・ウェポンとしてナイツアーマメント マスターキー(英語版)を開発している。 アメリカでは軍において第一次世界大戦時の塹壕戦用に使われたことからウィンチェスターM1897の短銃身モデルが「トレンチガン」(trench-gun)、警察では暴徒鎮圧用に使われることが多いためにライアットガン(riot-gun)とも呼ばれる。“散弾を浴びたら命はない”という威力がよく知られ、装備していれば独りで道路封鎖が可能なため、パトロールカーには必ず搭載されている。これらの銃は戦場や群衆の中での取り回しを考慮し狩猟用散弾銃より銃身が短く、装填できる弾数も多くなっている。また、銃床が折り畳み式になっているものもある。(英語版では「ライアットガン」と「ライアットショットガン」は別の銃である。下記の各種非致死性武器全般が「ライアットガン」、散弾銃だけが「ライアット・ショットガン」。) 市販実包の種類も多いために号数やスラッグを状況に応じて選択でき汎用性があるのも、散弾銃の利点である。実包サイズが大きいために用途に応じた軍・警察用の特殊弾も開発され、主なものに防弾ベストなどに対する貫通力を高めた多針弾頭弾(フレシェット弾)、暴徒鎮圧用弾丸として催涙弾(CN弾)やゴム弾(スタン弾)、ビーンバッグ弾、RIP弾(英語版)などがある。さらに近年では、実包状の電撃弾なども実用化されている。また、ランチャー(発射筒)を銃口に付けて、手投げでは届かないような高層階の部屋へ催涙ガス弾・煙幕弾を撃ち込む擲弾発射器の代用としても使われる。 銃種としてはU.S. AS12のように機関銃のような全自動にも設定できる(セレクティブ・ファイア)のもの、SPAS-15のように箱型弾倉(ボックスマガジン)で多弾数と短時間での弾薬交換を可能にしたもの、ベネリM3のように状況や故障時に半自動式(セミオート)とポンプ式の切替可能なもの、さらにはAA-12のようなフルオート式のものもある。また、M26 MASSの様に、M4A1やM16シリーズを中心としたアサルトライフルのハンドガード下に装着し使用する物もある。いわばアドオン型擲弾発射器のショットガン版であり、これが「どんな扉も開ける鍵」“マスターキー”と呼ばれる。 軍用・警察用は狩猟用に較べて殺傷力が高いわけではないが、装弾数が多いなどの理由により治安上の観点からほとんどの国では一般人の所持が制限されている。日本でも12番を超える口径は、トド猟などの許可がある場合以外は制限されている。銃所持に寛容なアメリカでも銃身や銃床を切って全長18インチ(45センチ)以下としたもの―いわゆるソードオフ・ショットガン(イタリアではルパラ(英語版)とも呼ばれる)を一般人が許可証なしで持つことはアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(BATFE)が厳しく制限している(全長の短縮により隠匿しての携行が容易で、狭い空間でも扱いやすく、銃口付近のチョーク(絞り)が除去されることで、発射された散弾がすぐに拡散、至近距離の殺傷能力が増大するために、銀行強盗など屋内での犯罪に利用されやすいことから。持っているだけで強盗予備罪に問われる)また、軍用銃と指定され所持が制限されている散弾銃も少なくない。 日本国内では警察官は散弾銃を所持していない。しかし、特殊急襲部隊(SAT)がモスバーグ(英語版)社(アメリカ)、もしくはレミントン社やベネリ社(イタリア)の散弾銃を装備しているとの説がある。また、海上保安庁では、レミントンM870、モスバーグM500が配備され、逃走船追跡の際に使用されている。自衛隊では陸上自衛隊が機種不明の散弾銃を採用しており、海上自衛隊も護衛艦の搭載火器としてベネリM3Tを採用している。テレビドラマ「西部警察」では大門団長が常に所持しているショットガン(レミントンM31、独立型グリップモデル)で犯人を射殺したり撃ったりするシーンがある。
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