計画の再開からルート選定まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 15:57 UTC 版)
「南方貨物線」の記事における「計画の再開からルート選定まで」の解説
終戦後はただちに測量が再開され、1946年(昭和21年)4月には当時の計画線28 kmの測量を終えた。同年9月には天白川 - 枇杷島間の用地設計案を運輸省に上申し、翌年には鉄施第645号として承認された。その後、南方貨物線計画は名古屋市の都市復興計画と連動して構想された名古屋付近鉄道復興計画(鉄施第1492号)に組み込まれた。当時の計画ルートは最終決定案とやや異なり、関西本線を跨ぎ越して市街地を北上し、庄内川を渡り五条川信号場付近で稲沢線に合流するという、後に「中村ルート」と呼ばれるルート案に近いものであった。 南方貨物線は東海道本線の線増を目的としていたが、同様の目的を別の形で推し進める新幹線建設計画が立ち上げられるとそちらが優先され、貨物線の分離のみを目的とする南方貨物線計画は再び停滞する。不要不急論に対し、当時名古屋港東岸(東臨港)の貨物線整備が不十分であったため、臨港地域の貨物集約機能を南方貨物線に付加する案も出された(「海岸線ルート」)。種々検討の結果、ルートを大府 - 笠寺 - 八田 - 笹島に変更し、さらに貨物専用ではなく旅客輸送も行う計画に修正されたが、これも1961年(昭和36年)の東港線の建設決定(のちに臨海鉄道方式に移行)により廃案となる。 このように構想と中断を繰り返した南方貨物線だが、完全に中止されることは無く、1962年(昭和37年)2月には国鉄常務会(第234回)の承認を経て新幹線並行区間(笠寺・堀川間)の用地が新幹線用地と共に買収され、1964年(昭和39年)に企画された第3次長期計画(1965年を初年度とする7か年計画)にも東海道本線大府 - 名古屋間複々線化工事として予算計上されていた。その後、計画ルートの選定も新幹線工事の進捗と共に最終段階となり、区間別に以下のような比較検討が行われた。起点が大府駅(東海道本線と武豊線の合流点)とされたのは、知多半島の東岸にある衣浦臨海工業地帯からの貨物列車や、名古屋駅に直通する旅客列車が増加することを想定し、武豊線の複線化が企画されていたためであった。 大府 - 笠寺間 臨港貨物集約機能を兼ねる「海岸線ルート」が比較検討されたが、大きく迂回し地盤も悪いことから建設費が膨大となるため、当初案通り本線併設ルートが選定され、既設線沿いの盛り土に敷設された。新設線については貨客併用案・貨物専用案・(既設線とともに)方向別複々線として運用する案が検討されたが、貨物専用線として運用されることが決まった。これにより、新設線の「南方貨物線」は完成後、貨物専用線として24時間走行が予定され、並行する既設線は旅客線として運用されることとなった。 笠寺 - 名古屋間 笠寺以北の併設は市街地のため建設費が高くつくこと、同区間も併設にすると八田操車場と連絡できないことから、この区間は笠寺・八田間の「運河ルート」が選定された。なお、堀川・八田間約2 km区間については1963年(昭和38年)にルートの再検討が名古屋市との間で行われ、南郊・小碓運河利用案と東海通直上高架案の二案が提示されていた。これも比較検討の結果、埋め立て計画により用地取得が容易になる南郊・小碓運河利用案が採用された。 八田 - 枇杷島間 この区間を「中村ルート」にすれば瀬戸線ともども名古屋駅を経由する必要がなくなり、貨客分離の観点からもメリットがあった。しかし中村区の家屋密集地域を縦貫するため、市との設計協議さえ困難な状況であった。建設費の高騰も予想されたため、結局、国鉄用地のみでほぼ建設可能な名古屋経由ルートが選定された。 選定ルート案は1966年(昭和41年)4月の常務会で承認され、同年5月の設備投資計画に盛り込まれた(用地費52億円、主体工事費114億円、付帯電気工事費25億円で総額191億円)。同年、運輸大臣が建設計画を認可。新幹線開業後も東海道本線名古屋付近の列車回数はほとんど減少せず、その後も大幅な輸送量の増加が見込まれていた。名古屋商工会議所 (1971) は、南方貨物線の建設効果について「名古屋付近の線路容量の限界が解消され、同時に計画された八田操車場(現:名古屋貨物ターミナル駅)の新設が稲沢操車ヤードの行詰りを解決することとなり、更に今後名古屋港南部及びに西部、四日市地区、衣浦地区と臨海地帯の発展に対応し、また関西線、名古屋臨港線の発着貨車の操配運用効率を高める効果など名古屋付近の鉄道輸送は画期的な改善をみせるものと期待される。」と述べている。
※この「計画の再開からルート選定まで」の解説は、「南方貨物線」の解説の一部です。
「計画の再開からルート選定まで」を含む「南方貨物線」の記事については、「南方貨物線」の概要を参照ください。
- 計画の再開からルート選定までのページへのリンク