観測の歴史と惑星の特徴とは? わかりやすく解説

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観測の歴史と惑星の特徴

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 14:33 UTC 版)

TRAPPIST-1」の記事における「観測の歴史と惑星の特徴」の解説

2016年5月ベルギーリエージュ大学天文学者ミカエル・ギヨン (Michaël Gillon) のチームにより、チリアタカマ砂漠ラ・シヤ天文台TRAPPIST英語版) (Transiting Planets and Planetesimals Small Telescope) 望遠鏡用いた観測で、惑星存在確認され2016年5月科学誌ネイチャー』にて公開された。トランジット法による観測では3つの地球サイズの惑星発見された。そのうち内側2つ(bとc)は自転と公転の同期起こすほど近く互いに5:8の軌道共鳴をしている。外側1つ(dと呼ばれたが、現在のdとは異なる)は、不連続な観測により72.82日離れた2回のトランジットしか観測できなかったため、公転周期は72.82日の1・2・3・4・5・6・7・8・914・16分の1のどれかとしか推定できなかった。そのため、液体の水存在可能なハビタブルゾーンのおそらく外側だが、内部位置している可能性もあるとされた。 メディア再生する TRAPPIST-1と、当時想定されていた3惑星イメージ動画 TRAPPIST-1と、当時想定されていた3惑星想像図 当時想定されていた「TRAPPIST-1d」の地表から見た光景想像図 2016年9月19日から20日連続行われたスピッツァー宇宙望遠鏡による観測によって、既に軌道確定していた惑星bとcに加えd・e・fg・h5惑星合計7惑星確認され2017年2月22日Nature発表された。そのうち5惑星b・c・ef・g)は地球似たような大きさで、残る2惑星d・h)は火星地球中間の大きさであるとされた。TRAPPIST発見されていた「d」は、どの新惑星とも一致していないが、それは、2惑星トランジットを、同じ惑星の2回のトランジット誤認したためであったTRAPPISTは他にも、トランジット断定できなかった減光いくつか検出していたが、それらを含めd・e・f・gの4惑星と対応づけられた。一番外側のhはスピッツァー始めて観測された新惑星だが、当時はまだ1回しか観測できておらず、軌道大まかにかわからなかった。これらのうち3惑星d・e・f)は、TRAPPIST-1ハビタブルゾーン内を公転している。 TRAPPIST-1系の惑星軌道は非常に平坦コンパクトな構造になっており、TRAPPIST-17つ惑星全て太陽系における水星軌道よりも遥かに主星に近い距離を公転している。木星系と比較すると、bを除く6個はガリレオ衛星存在している距離よりも遠く位置しているが、それでもその他のほとんどの木星の衛星比べる主星より近い位置にある。bとcの軌道間隔は、地球から月までの距離のわずか1.6倍しかなく、惑星表面から空を見上げる互いに別の惑星観望することができるとされ、場合によってはそれが地球から見た月の大きさよりも数倍大きく見えることもある。最も外側にあるhでさえ、公転周期はわずか18.8日しかなく、最も内側のbはたった1.5日で軌道一周する当時描かれた、TRAPPIST-1系の想像図 当時描かれた、TRAPPIST-1系の惑星想像図 当時描かれた、TRAPPIST-1と、その周りを巡る7個の惑星想像図 TRAPPIST-1惑星軌道惑星同士は非常に間隔狭く互いに及ぼす重力作用大きいため、TRAPPIST-1系のほぼ全ての惑星軌道共鳴に近い関係にある。最も内側のbが軌道を8回公転している間に、cは5回、dは3回、eは2回軌道公転している(詳細後節参照)。また、互い他の惑星への重力作用はトランジットタイミング変動TTV)を発生させ、他の惑星の公転周期を1分未満から30分以上の範囲変動させている。TTV観測により、研究者らは最も外側のhを除く6個の惑星質量計算から求めることに成功した。この6個の惑星の総質量TRAPPIST-1の約0.02%で、これは木星ガリレオ衛星質量比に近く、その形成過程似通っていることを示唆していると考えられている。これらの6つ惑星密度地球の約0.60倍から約1.17倍とされ、その組成が主に岩石から成っていることを示しているが、質量と密度の値に不確実性大きく、その密度の値(地球の0.60 ± 0.17倍)から氷の層や広がった大気存在を「支持」することができる惑星fを除いた5個の惑星相当量揮発性物質含まれているかどうかを示すことはできなかった。 2017年2月18日から3月27日にかけて、天文学者らの研究グループスピッツァー宇宙望遠鏡用いて行ったTRAPPIST-1系の観測によって、TRAPPIST-1特性に関するパラメーター新たに更新され、これを用いて7つ惑星軌道および物理的特性パラメーター精度向上された。この研究結果2018年1月9日発表された。惑星新たな質量推定値算出できなかったが、非常に不確実性小さ軌道要素半径測定値求めることに成功した2017年8月31日ハッブル宇宙望遠鏡使用して観測行った研究チームは、TRAPPIST-1外側惑星(どの惑星かまでは特定できなかった)に存在しうる証拠初め発見した発表した2018年2月5日には、ハッブル宇宙望遠鏡ケプラー宇宙望遠鏡スピッツァー宇宙望遠鏡、そしてヨーロッパ南天天文台ESO)のSPECULOOS望遠鏡英語版)による観測導き出された、これまでで最も精密なTRAPPIST-1系のパラメーター公表されこれまで誤差大きかった7つ惑星質量密度表面重力の値が詳しく求められ具体的な組成予測できるようになった7つ惑星質量地球の0.3倍から1.16倍、密度は0.62倍から1.02倍(3.4 g/cm3から5.6 g/cm3)の範囲収まっている。これらの値から、cとeはほぼ完全に岩石構成されるが、それ以外5惑星は、揮発性物質が海、氷、厚い大気いずれか形態として存在している可能性示された。dでは、惑星質量の約5%を液体の水占めている可能性があり、これは地球質量対す水の割合250倍にも及ぶ。一方で、fとgでは表面温度が低いため、は氷として存在しているとされている。また、eは7惑星の中で唯一地球よりも密度高く岩石から構成されている事が示されている。しかし、2020年10月発表された研究では、TRAPPIST-1系の7つ惑星全ての密度地球より小さいとする結果得られている。大気モデリングからは、bの大気暴走温室効果起こしている可能性高く推定101から104 barもの大気圧がある水蒸気から成る大気を持つことが示唆された。 2020年初頭に、東京工業大学研究グループなどによってすばる望遠鏡用いて行ったTRAPPIST-1スペクトル観測結果報告された。観測行った2018年8月31日は、3つの惑星トランジット通過)を起こした。この観測結果惑星公転面主星自転軸に対して太陽系同じようにほぼ垂直になっており、TRAPPIST-1惑星公転面対す赤道傾斜角19+1315度であると求められた。複数惑星公転面主星自転軸がほぼ垂直の状態で揃っているということはTRAPPIST-1系の惑星はほぼ同一平面上で形成されそれ以降大きく軌道変化してないことを意味している。このような惑星公転面傾き求められ事例過去にもあるが、地球サイズ岩石惑星に限るとこれが史上初めであったワシントン大学天体物理学者 Eric Agol が率い研究チーム地上からの観測ハッブル宇宙望遠鏡、そしてケプラー宇宙望遠鏡によるK2ミッション観測データなどを組み合わせた結果これまでで最も詳細なTRAPPIST-1系の惑星密度に関する測定結果得られ、その研究結果2020年10月arXivにて公開2021年1月には The Planetary Science Journal掲載された。この研究により、TRAPPIST-1系の7個の惑星全て地球よりやや密度小さいことが判明した密度の値から考えると、TRAPPIST-1系の惑星太陽系地球型惑星同様に酸素マグネシウムケイ素などで構成されているとみられるが、この場合、その比率地球大きく異なってくることが示された。TRAPPIST-1系の惑星地球より密度小さ原因として、地球同様の組成を持つが地球よりも含有量少な可能性と、大気大量酸素含まれていることで生成される酸化鉄影響である可能性挙げれており、仮に後者正しければTRAPPIST-1系の惑星内部には構成され存在しないことになる。これら以外に、全ての惑星表面大量存在していることで密度小さくなっているという推測もあるが、内側3個の惑星温度比較的高いことから、液体ではなく大気中の水蒸気として存在する必要があり、7個の惑星全て何らかの形で大量保持することは難しいと考えられている。

※この「観測の歴史と惑星の特徴」の解説は、「TRAPPIST-1」の解説の一部です。
「観測の歴史と惑星の特徴」を含む「TRAPPIST-1」の記事については、「TRAPPIST-1」の概要を参照ください。

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