美濃和紙とは? わかりやすく解説

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美濃和紙

【工芸品名】
美濃和紙
【よみがな】
みのわし
【工芸品の分類】
和紙
【主な製品】
本美濃紙美術工芸紙、箔合紙
【歴史】
奈良時代戸籍用紙が美濃和紙であったという記録が「正倉院文書」に残っていることから、美濃和紙の始まりは、奈良時代だと考えられています。
室町時代になると、地元権力者である土岐氏によって六斉市(ろくさいいち)と呼ばれた市場開かれたことで、美濃和紙は京都大阪伊勢方面に出荷され広くその名が知られるようになりました
【主要製造地域】
岐阜県
【指定年月日】
昭和60年5月22日
【特徴】
美濃和紙は、「流し漉(す)き」の方法漉くので、紙面漉きムラがなく繊維が絡むため、出来上がった和紙は薄い紙でも布のように丈夫でしかも美しく出来ます障子紙始め保存文書用紙等に最適です。

美濃和紙(みのわし)

所在地 岐阜県美濃市
主製品 手工芸紙・ちぎり絵用紙宇陀紙薄美濃紙・森下紙型紙原紙・箔入紙・稲紙・表具用紙民芸紙・染紙版画用紙改良書院紙美術紙・紙のれん・雲龍紙本美濃紙在来書院提灯紙・傘紙・写経用紙・はり絵用紙・箔合紙絹綿紙・雁皮紙
美濃和紙  天日干し風景
美濃における最初の紙は、現存するものとしては大宝2年702)の戸籍用紙で、美濃御野)、筑前豊前のものが正倉院残されています。コウゾ原料として溜め漉き法にてつくられた紙で、美濃の紙は「特に優れたでき映えである」と評されています。 江戸時代になって生産量もますます増大し近江商人らにより美濃紙中央進出するようになります書院紙として代表的な美濃紙」は、その優れた抄紙技術支えられて、全国数ある障子紙中でも折紙付きとなり、現在の美濃紙ブランド根源となっているものです。

その後技術の発展生活様式変化等により、障子紙傘紙謄写版原紙から、手漉き和紙特徴活かした工芸品的な多種類の紙を用途に応じて生産してます。 生産者数は、産地での最盛期1918年生産者戸数4,768戸、従業者17,782人を示しましたが、現在は六十余名三十数戸まで減少してしまいました。 美濃和紙業界振興地域活性化大作一環として美濃市においては平成6年地元和紙産地蕨生地区美濃和紙の里会館設立しました。これは単に「美濃手漉き和紙」のみの会館ではなく世界へ向けた幅広い和紙文化情報発信基地として活躍することが期待されています。
美濃和紙

美濃和紙

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/18 14:21 UTC 版)

美濃和紙

美濃和紙(みのわし)は、美濃地方岐阜県南部)で作られる和紙の総称[1]。美濃紙とも呼ばれる。特に美濃市で作られる和紙を指すこともある[1]

美濃和紙には機械ですいたもの(「美濃機械すき和紙」という)も含まれるが、手すきのものは「美濃手すき和紙」といい、特に一定の要件を満たした伝統の製法の手すき和紙を「本美濃紙」という[2][3]。このうち美濃手すき和紙は経済産業省指定の伝統的工芸品に指定されており、特に本美濃紙は文化庁により国の重要無形文化財に指定されている。またユネスコ無形文化遺産にも登録されている[2]

本美濃紙は重要無形文化財の指定要件を満たしたものをいい、生産量は美濃和紙全製品のうちの1割ほどである[3]

本美濃紙

1898年(明治31年)改正の戸籍法取扱手続では「身分登記簿の用紙は美濃十三行罫紙トシ」と定められていた。

定義

本美濃紙は伝統の製法で作られる薄くて丈夫な紙で[2]、以下の指定要件を満たすもののみをいう(重要無形文化財「本美濃紙」指定要件)[3][4]

  • 1.原料にのみを使用していること[4]
  • 2.伝統的な製法と製紙用具によること
    • 2-1.白皮作業を行ない、煮熟に草木灰かソーダ灰を使用すること[4]
    • 2-2.薬品漂白を行わず填料を添加しないこと[4]
    • 2-3.叩解は手打ちかこれに準じた方法で行うこと[4]
    • 2-4.抄造は「ねり」にトロロアオイ(原料の繊維質の広がりを均等にしやすくなる)を使用し、「かぎつけ」または「そぎつけ」の竹簀で流漉きしていること[4]
    • 2-5.板干しで乾燥すること[4]
  • 3.伝統的な本美濃紙の色沢、地合等の特質を保持すること[4]

歴史

1969年(昭和44年)4月15日、本美濃紙の技法は重要無形文化財に指定された[5]。重要無形文化財の保持団体として本美濃紙保存会が認定されている[3]

2014年(平成26年)11月26日、「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」として、「石州半紙」(島根県浜田市)「細川紙」(埼玉県小川町、東秩父村)とともに、本美濃紙がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産登録として認定された[6]

美濃和紙ブランド協議会の美濃和紙のブランド認定基準で、本美濃紙は、原料規定で大子那須楮(白皮)のみ、製法規定で完全に伝統的な製法によるとし、美濃市内で生産されるものとしている[4]

美濃手すき和紙

定義

美濃手すき和紙は本美濃紙の技術を基にして製造される手すき和紙をいい、用途に応じた多種多様な手すき和紙が生産されている[2]。手すき和紙の工房で構成される美濃手すき和紙協同組合があり岐阜県紙業連合会に加盟している[4]

美濃和紙ブランド協議会の美濃和紙のブランド認定基準で、美濃手すき和紙は、原料規定で国内産の楮や雁皮等の皮を用いた非木材繊維のみを使用したものとし、製法規定で流し漉きの技法とし、美濃市内で生産されるものとしている[4]

歴史

1985年(昭和60年)5月22日、通商産業省(現・経済産業省)によって伝統的工芸品に認定された。

美濃機械すき和紙

美濃機械すき和紙は美濃紙の手すき和紙の技術を基に機械化して製造された和紙で、絶縁紙や導電紙、不燃紙など特殊な用途の紙も生産されている[2]

美濃和紙ブランド協議会の美濃和紙のブランド認定基準で、美濃機械すき和紙は、原料規定で非木材繊維を少しでも含むもの、製法規定で手すきに近い品質が出せる機械で製造したものとし、美濃市、岐阜市、関市で生産されるものとしている[4]

歴史

起源

日本最古の紙は、大宝2年(702年)の大宝律令の際、美濃国筑前国豊前国で漉かれた戸籍用紙とされる[2][3]正倉院文書に美濃の紙が記録されている[7])。

奈良時代、美濃国国府の所在地(不破郡垂井町)には、垂井の泉の清水を利用した官設抄紙場(すきかみば)にあたる紙屋があり、美濃紙の発祥の地といわれている[8]。美濃国での和紙生産は国府を中心とする不破郡本巣郡厚見郡の三郡から板取川下流域に移動していった[4]

中世

室町時代には美濃で六歳市が開かれ、美濃紙は近江商人により全国へ広められた[2]

近世

江戸時代には専売制度の下で上質の和紙が大量に生産され、『和漢三才図会』では「最も佳なるもの」、『新撰紙鑑』では「凡障子紙の類、美濃を最上とす」と評され和紙の代名詞となった[4]

寺尾(現在の岐阜県関市寺尾)で生産される和紙は特に有名で、『和漢三才図会』では障子用の書院紙、包み紙、灯籠用として使用していたと記し、『新撰紙鑑』では徳川幕府御用の製紙職人として、市右衛門、五右衛門、平八、重兵衛の名を挙げている。

また、寺尾の他にも牧谷、洞戸、岩佐、谷口で生産される物も良品である。当然ながら、産地毎に製紙に使用する水が異なるため、生産された和紙の風格もそれぞれ異なるほか、得意とする種類も産地によって異なった。

近現代

美濃和紙あかりアート館

明治時代から大正時代にかけて美濃市を中心とした美濃紙の生産戸数は3,700戸に達した[4]。一方で東濃や中濃地方では水とパルプ用木材を豊富に調達できる立地であったことから大手製紙工場が進出した[4]

長良川中下流域では手すき和紙業者や紙問屋の中から機械すき和紙への転換がみられ、家庭紙・特殊紙・加工紙などの工場が立地している[4]。また、苗木藩などで伝統的手すき和紙の生産が行われていた木曽川(飛騨川)流域では、木曽・東濃の木材産地の木材パルプを原料とする大手製紙工場が立地するようになった[4]

これに対して従来の家内手工業的な和紙生産は近代化が難しく、昭和期には機械すき洋紙が急増して衰退していった[4]

2005年(平成17年)8月、美濃和紙あかりアート館が開館した。

2014年(平成26年)11月に本美濃紙の手すき和紙技術がユネスコの無形文化遺産登録として認定されたことを受け、ユネスコ和紙展や和紙サミットが開催されている[4]

美濃和紙と判型

美濃紙は27~29cm程度、横40~41cm程度の大きさで、これよりも大きいものは大美濃という[9]。これらの料紙を縦に2つ折りにして冊子にしたものは、それぞれ美濃判、大美濃判という[9]

日本産業規格における紙の寸法の規格であるJIS B列は美濃判に由来しているために国際標準化機構の定めるISO B列と異なる[要出典]

美濃和紙と岐阜の伝統工芸

上有知港から岐阜方面への和紙の運搬(再現)

江戸時代以降、長良川を利用した運輸により長良橋たもとの地域は長良川の重要な港町となり、奥美濃から美濃和紙などの陸揚げが多く、それを扱う問屋町として栄えた。良質な和紙「美濃和紙」を得た岐阜では、岐阜の工芸品である岐阜提灯岐阜和傘岐阜うちわが生まれた。美濃和紙は岐阜の伝統工芸には欠くことのできない物である。

脚注

  1. ^ a b 「美濃和紙」についての資料の探し方 岐阜県立図書館 2022年12月1日閲覧
  2. ^ a b c d e f g ふるさと名物 岐阜県美濃市 中小企業庁 2022年12月1日閲覧
  3. ^ a b c d e 本美濃紙とは 美濃市 2022年12月1日閲覧
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t パルプ・紙・紙加工品 公益財団法人岐阜県産業経済振興センター 2022年12月1日閲覧
  5. ^ 本美濃紙”. 岐阜県. 2013年5月13日閲覧。
  6. ^ [1]
  7. ^ 美濃和紙の歴史”. 2011年10月6日閲覧。
  8. ^ 紙屋塚 垂井町 2022年12月1日閲覧
  9. ^ a b 太田尚宏「日本歴史資料の形態と種類」マレガプロジェクト・ワークショップ1 国文学研究資料館 2022年12月1日閲覧

関連項目

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