経済成長の要因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 00:25 UTC 版)
経済成長の要因として、1)労働力(人口増加)、2)機械・工場などの資本ストック(蓄積)、3)技術進歩、の3つが挙げられる。労働・資本以外の要因で成長力が高まることを「全要素生産性(TFP)が上昇する」という。GDPの成長率は、技術進歩率(全要素生産性上昇率)と資本の成長率と労働の成長率に分解できる。 経済成長の条件として、1)私的所有権の保護、2)イノベーション、3)科学的合理主義を可能とすることへの容認、4)債権債務の制度化、5)参加の自由、6)開放性、がある。 2006年の世界銀行の成長開発委員会の報告書では、経済成長をする一般原則は存在しないという結論となっている。この委員会にはノーベル経済学賞受賞者のマイケル・スペンスやロバート・ソローを含む21人の専門家や300人の研究者が参加し、11の作業部会と12のワークショップなどにより2年間の検討が行われた。 需給 総需要が不足して売れ残りが発生しても、物価の下落で全部売り切れる、つまり経済活動は総供給で決まるという考え方を「セイの法則」という。三菱総合研究所は「長期の経済成長は、国全体でどれだけモノ・サービスをつくりだす能力があるかという経済全体の供給面から決まる」と指摘している。 現代(2011年)の経済は、供給に需要が適応するのではなく、需要に供給が適応する経済構造となっている。供給重視のアプローチは、経済の歪みを拡大させ社会的負担を増加させる。結果、経済の持続的発展を妨げる。 経済は、需要と供給のうち小さい方に合わせて決まるとされる(マクロ経済学のショートサイド原則)。つまりデフレギャップがある場合、供給サイドを変えなくても経済を成長させることができる。 発展途上国では、生産性を高めることに多大な労力が割かれており、生産性を高めることができた国が経済成長を実現させた。しかし、経済の成熟とともに、次第に需要側が重視されるようになった。それは需要と供給を一致させる価格メカニズムが働くと考えられてきたのに対し、現実には価格が硬直的で、供給に対して需要が不足するというケースが頻繁に見られるようになったからである。つまり、生産に必要な資本設備・労働力が余り、非稼動設備・失業が発生するケースが頻発した。 教育 経済発展には、発展に即応できる教育を受けている人が必要である。日本の場合、江戸時代から庶民レベルで識字率が高く、教育水準の高かったため経済発展したと考えられている。また明治時代の学校制度の普及で義務教育によって読み書き計算ができる国民教育が充実した事と、戦後の高等教育の進学者増加で経済発展に対応できる人材が日本では輩出されたとされている。1960年代の日本の高度経済成長期、日本経済は年率約10%成長したが、その内の約6割が技術進歩によるものであった。 貿易 自然条件が悪い場合でも、比較優位を利用し、経済発展の基盤をつくることができる。実証研究で、産業間の移動が激しいほど経済が成長するという統計もある。貿易は経済発展の大きな要素となる。 これまでに経済成長をした国の貿易は、資源国をのぞけば急速な産業化をへており、労働者は主に製造業に雇用されていた。貿易と経済成長の段階として、 (1) 伝統的な産品の輸出、(2) 第1次輸入代替(軽工業品)、(3) 第1次輸出代替(伝統的産品から軽工業品に主流が移る)、(4) 第2次輸入代替(重工業品)、(5) 第2次輸出代替(軽工業品から重工業品に主流が移る)、などがある。1960年代以降の途上国の標準所得と生産高の割合は低下しており、サービス産業に比べて製造業の相対価格は低下している。製造業の雇用は減っており、過去と同様の経済成長は困難になる可能性があるため、経済成長にはサービス産業の生産性が必要ともいわれる。
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